ドル円の100円割れはあるのか?

GW真っただ中の5月3日。ドル円は105.54円まで下落。
2014年10月以来となる2年ぶりの安値を更新しました。

ドル円

11月半ばの123円からはすでに18円程の下落。2000年以降のドル円の年間平均変動幅は約17円ですから、11月からの変動を加味すると、それを上回ってきたことになります。
ちなみに変動率は17.1%なのですが、同期間の平均変動率は15.6%とこちらも上回っております。

大統領選挙の年が大きく動くかといえば、そうではありません。

今年はアベノミクス相場以来となる大変動の年ということになります。

4月以降は、年初の下落の時にも増してネットや週刊誌に『アベノミクス終了』、『1ドル100円割れ』などという文字が躍る様になりました。

そこで、今回は1ドル100円割れは実現するのか否か。経済指標や直近のイベントや要人発言などから分析してみたい思います。

ドル円の変動材料

金融政策

基本的なことですが、通貨はその国の経済や金融政策、物価などで大きく変動します。

米ドルユーロ日本円英ポンド豪ドルを見てみると、これらのなかで利上げサイクルに入っている通貨は米ドルのみ。

欧州、日本は金融緩和の真っただ中にあり、英国はかつてないほど物価が落ち込み、6月にEU離脱を決める国民投票を控えています。
オーストラリアは5月3日に利下げに踏み込みました。

金融緩和サイクルにある国の通貨を売って、引き締めサイクルの国の通貨を買うと金利でも値幅でも利益が得られます。
今回はドル円が対象ですから、米ドルと日本円ということになりますが、この基準でみると、米ドルを売るという答えは出てきません。

貿易収支

貿易収支は、いわゆる実需と呼ばれるものです。通貨を買い切り・売り切りのため日本の貿易黒字が多ければ多いほど、米ドルを売って日本円に変える額が多い(=ドル円売り)ということになり、円高要因となります。

これを対米の貿易収支でみてみるとどうでしょうか。

対米貿易収支
(出所:財務省)

2015年は1兆円以上も黒字が増えたことになりますので、これは円高要因。
ただし、2016年1月からの大幅な円高により、2016年の黒字額は大きく縮小する可能性が高くなりそうです。

米国の利上げペース

昨年、2016年にはFRBは3回ほどの利上げを見込んでいましたが、今では2回あるかどうかということになっています。

ただ、米国のインフレ率(コア)が2%に乗せてきています、原油価格も底打ち基調にあることから、物価高を抑制するための利上げは正当化される指標となっています。

にわかに6月の利上げ説が高まってきていることから、こちらは円安要因でしょうか。

景気

世界銀行によると2016年の米国の成長率見通しは、2.7%となっており、15年の2.5%から加速する見通しとなっています。

ただ、米GDPの約3分の2を占める小売売上高が鈍化してきていることから、これはドル安要因といえそうです。

米国はドル安方針を取ったのか

今年は米国からのドル安誘導策ともとれような動きが多々ありました。

まずは、2月のG20で上海合意なるドル高抑制となる合意が交わされたのではないかという市場関係者の憶測が流れました。これはプラザ合意を彷彿とさせ、かなりのドル安要因となります。

その後、4月のG20で麻生財務相が米国のルー財務長官との会談で「為替市場にみられる一方的で偏った動きに強い懸念を有している。」と表明しました。
しかしその翌日、ルー財務長官は「円高が進んでいるが、市場は無秩序な状態ではない。」とコメントし、為替市場に対する日米間の認識の溝が浮き彫りとなりました。

そして、4月28日に日銀金融政策決定会合の結果が発表されました。
今回の日銀では、某メディアの報道の影響もあってか2013年4月以来の期待度の高さだったようです。

しかし、結果は現状維持となりドル円は3円の暴落となりました。
今までのサプライズを狙う黒田総裁のことを考えるとある程度納得もできるのですが、次回の追加緩和の示唆がなかったことで再び円高へと進み始めました。

『必要であれば躊躇なく追加緩和』が黒田総裁の口癖の様なものでしたが、今回はそれもありませんでした。市場予想とあまりの違いに、黒田総裁会見の最中も円高は進み続けました。

翌日金曜日のNY後場には、米国の為替報告書が発表されました。これには、日本のほか、中国、韓国、台湾、ドイツの5カ国・地域を監視リストに入れることが明記されていました。

(参考:米が日本を為替の監視リストに

これらの流れを見てみると、米国の見えざる手がドル安誘導を行っていると考えられるのですが如何でしょうか。

結果的に、日本円・ユーロは米ドル安が進んでいますし、今年は昨年全く反発しなかった金が突如として急騰を始めています。

米国経済はそれほど悪くないなか、昨年にはなかったペースで確実にドル安は進んでいます。米国が本気であれば、たった4ヶ月でドル安が止まるとは思えません。

日本の輸出企業の平均損益分岐レート(貿易収支の分岐点)は103.20円といわれています。ルー長官の発言を見ても、日本はここを割り込まない限り、為替介入ができるとは到底思えません。

今は105円というクリティカルなレートで一旦反発している状態。

日本の為替介入ができないと悟った海外投資家は、ファンダメンタルズなど関係なく、一度はこの下を攻めてくる可能性が高いのではないでしょうか。

105円を割り込んだ際には、日本当局の対応とその時に値動きに注目が集まることとなります。

児山将|みんなの外為スタッフ

児山将

みんなの外為で記事を書いています。 大学生の時からFXを初めて6年以上。FXの楽しさを伝える為に、みんなの外為を盛り上げていきます。初心者の方でも分かり易く学べるように、難しい専門用語やマーケットの説明、FX業界について記事にしていきます。 みんためのTwitterでもつぶやき中!