サクソバンクの2016年大胆予測

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ユーロ/ドルの行き先は「1.23」

 今から26年前、ベルリンの壁が崩壊した1989年、駆け出し時代の私は調査レポートの中で、当時のドイツマルクは1ドル=1.23マルクまで上昇すると大胆に予測しました(当時、マルクは1ドル=1.60マルクの安値で推移していました)。当時の私を知る同僚たちは、今でもそのことを話題にします。

 現在の話に戻りますが、現状と先行きを考慮した結果、今再び「1.23」という数字を使うことにしました。今回は、ユーロ/ドル相場が対象で、1ユーロ=1.23ドルになるという予測です。FRBによる過去5回の利上げサイクルのうち4回で、ドルは利上げサイクルにおける最高値をほぼ最初の利上げ後につけていることがわかります。そのことは、ドルとFRBの利上げサイクルが逆相関の関係にあることを示唆しています。

 ユーロ高となれば、欧州中央銀行(ECB)が面目を失うのはもちろんですが、ユーロ/ドルがパリティ(1ユーロ=1ドル)に達するのは時間の問題と考える投資家たちのコンセンサスとも異なります。

 マクロレベルでは、すべての資産クラスのネットリターンを説明できる要因は、ドル相場以外には見当たりません。皮肉なことにドル安に転じなければ、世界経済が深刻なリセッションに陥る可能性は非常に高くなります。ドル高はドル建て負債に依存する新興国経済の債務返済負担の増額、アメリカ輸出産業の減収、ドル相場と密接に関連して動くコモディティ価格の低下、全体で現在の世界経済の半分以上を占める新興国経済の成長鈍化を引き起こします。言い換えれば、今後の金融・財政政策が市場の望むように展開し、世界経済がリバランス(再均衡)とさらなる成長を実現するためにはドル安が最も抵抗の少ない道です。

 ヨーロッパについては、巨額の経常収支黒字を維持し、インフレ率が低いことから、マクロ経済的には、ユーロは弱い通貨ではなく強い通貨であるべきということになります。現状において、ユーロの底値を探る動きは一巡して、これからは再びアメリカ経済の成長、そして世界経済の成長への取り組みがメインテーマとなることから、ドル安に向かう相場展開となることを予想しています。

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ロシアルーブルは16年末までに20%上昇

 原油価格の下落と、ウクライナ問題に起因した西側諸国の金融制裁によるロシアの資産とルーブルへの深刻な打撃は2015年後半も続きました。

 しかし、2016年には、アメリカと特に悲観的に評価されている中国で石油需要の伸びが予想されること、相次ぐシェールオイル開発会社の経営破たん、さらには原油生産の伸びが減速し前年割れとなる可能性があることから、原油価格が上昇に転じることが予想されます。そのことは、エネルギー収入に依存するロシア経済には朗報となります。

 2016年のアメリカ景気はゆるやかに上昇する見通しです。それは、ドル高を受けてFRBの利上げペースが極めてゆっくりしたものになるからです。そのことは、新興国、とりわけロシアの景気と通貨にとっては、コモディティ市場の弱気が解消に向かうという意味で、思いがけないプレゼントとなります。

 一方で、国際社会が過激派組織「イスラム国」に対して協調行動をとる必要に迫られていることから、ロシアは欧米諸国と交渉につく機会を得ました。このことは、ウクライナ問題に伴う欧米諸国の対ロシア金融制裁によって、世界的にアンダーウェイト、アンダーバリュエーションされてきたロシアの資産、それにロシアルーブルにとっては好材料です。最終的には、欧米諸国との対立からの出口が見え始めることが予想されます。

 国際投資家の資産とロシアが海外に保有する資産がロシア経済に還流します。2016年末までに、ルーブルは、高金利通貨であるルーブルを購入するためのキャリートレードにも支えられて、米ドルとユーロで構成される通貨バスケットに対して約20%上昇すると予想します。
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シリコンバレーのユニコーンに吹く現実の風

 2015年上半期におけるベンチャーキャピタルのディール件数は過去25年で最低を記録しました。ベンチャー企業への投資を専門とするベンチャーキャピタルが、投資先をユニコーン(企業の評価額が10億米ドル以上の新興企業)向けに絞ったことが要因でした。将来、市場で圧倒的なシェアを占めることが期待できそうな新興企業への資金の集中により、アメリカの未上場ハイテク企業セクターではバブルが起きています。

 2016年の未上場ハイテク企業セクターの状況は、2001年のインターネット・バブル崩壊の前年、つまり2000年のシリコンバレーの状況に似たものになりそうです。当時のインターネット関連企業は、ユーザーへの課金(マネタイゼーション)や企業収益向上に有効なビジネスモデルの追求より、ひたすらユーザー数を増やし、企業の成長に拍車がかかるといわれる臨界点(クリティカルマス)に到達することに血眼でした。売上高や利益を増やすことより、クリックとページビューの回数を増やすことこそがインターネット企業にとって金科玉条であることは、今も変っていません。

 アメリカの運用会社であるフィデリティは最近、フォトメッセージングサービスの新興企業スナップチャットの推定価値を25%下方修正しました。そのことは、ベンチャーキャピタルの資金に依存するハイテク企業のバリュエーションに対する疑念の高まりを示唆しています。ちなみに、今回の下方修正前のスナップチャットの株価売上高倍率(PSR)は約160倍でした。

 アメリカの利上げサイクルはすべての資産クラスにおいて織り込まれており、ベンチャーキャピタルからの資金に依存したハイテク企業向け投資に対するオルタナティブ投資も例外ではなく、その利回りは上昇することが予想されます。それに加えて、2016年のアメリカの株価は横ばいで推移する見通しであることから、未公開のハイテク企業に新規株式公開を迫るベンチャーキャピタル会社にとってはナーバスな状況は避けられそうにありません。

 これらの厳しい現実は、いずれ株式市場にも浸透し、ベンチャーキャピタルからの資金に支えられて高値で取引されているハイテク企業の株価にも影響を及ぼします。その結果、ベンチャーキャピタルによるハイテク企業投資の増加がストップし、シリコンバレー地区の北に位置するサンフランシスコ(不動産値上り率は全米トップ)の住宅価格高騰に歯止めがかかるかもしれません。
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リオ五輪がブラジル主導の新興国景気回復を加速

 仮に新興国救済の慈善ポスターを作るとすれば、そこに登場する国は、リセッション(景気後退)、消費者信頼感の崩壊、失業率の急上昇、通貨の急落など、マイナス材料がそろっているブラジルで決まりです。ドル/ブラジルレアルの相場は2015年年初から大幅なレアル安が続いています。消費者信頼感指数が10年来の低水準となる一方で、失業率は5年ぶりの高水準まで悪化しています。

 ブラジルの国内総生産(GDP)成長率が前年比で5四半期連続のマイナスとなっていることも忘れてはなりません。現状では2桁台、つまり10期連続のマイナスもあり得ます。コモディティ相場のスーパーサイクルの終了で苦境に陥り、新興国救済ポスターに登場する条件がそろっている国はブラジル以外にも存在します。スーパーサイクルの終わりは、原油価格の本格的なメルトダウン、中国を中心とする世界の製造業サイクルの落ち込み、ドル建て債務の増加という形で新興国に打撃を及ぼしています。それらに、アメリカのほぼ10年ぶりとなる利上げをめぐる不透明な状況を加えると、今後の見通しは暗いものとならざるを得ません。

 こうした憂慮すべき状況を鑑み、サクソバンク予測チームは、2016年オリンピック開催国のブラジルが、ここ数カ月底堅い動きを見せている株式市場をテコに、新興国市場全体が低迷から抜け出すための先導役を果たしてくれることを期待しています。インドの主要な経済指標は上昇しており、また中国の経済指標は現在では安定し、最近の緩和政策によりこれから改善すると見ています。

 信用格付けの「安定的」な見通し(ムーディーズ)、オリンピック関連の公共投資、穏やかな改革の結果、ブラジル国内のセンチメントが改善するとともに、新興国全体では通貨安のお陰で輸出が伸びることが考えられます。FRBによる利上げサイクルの始まりが新興国に動揺を与えていることは確かですが、そのサイクルが新興国経済にもたらすプラス効果にも注目すべきです。それは、利上げサイクルの期間中、新興国株式には、先進国株式はもちろんのこと、国債までもアウトパフォームする傾向が見られることです。MSCI エマージング・マーケット・インデックスのフォワード株価収益率(PER)は現在12.1倍で、先進国株式の18.8倍に比べると、不当としか言えない割安水準まで下がっています。そのため、2016年について言えば、新興国株式が債券と他の株式をアウトパフォームする年になると予想しています。

 結論:新興国の株価は2016年に25%値上りします。
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民主党、米大統領選、議会選、ダブル圧勝

 2016年のアメリカは選挙の年です。大統領選の前哨戦である予備選は民主、共和の両党でそれぞれ開催しますが、共和党の予備選が混乱に陥るのは必至です。現在進行中の大統領候補の指名争いは、共和党にとって自壊的な展開となっており、最終的には中道寄りで、勝ち目のない候補者を選ぶのがやっとという状況になりそうです。連邦議会選挙の候補者についても、共和党支持者には選ぶ前に意気消沈しそうな顔ぶれとなる可能性があります。

 議会選の結果、上下両院で多数派を占めてきた共和党が劇的な惨敗を喫します。共和党内部の路線対立は2020年選挙まで尾を引くことになります。一方、民主党が推進してきた投票呼びかけ(GOTV)運動が功を奏して、同党は地滑り的勝利を収めます。

 GOTV運動は、若く、多様性に富み、より自由で、高学歴ながら、不完全雇用の状態にある「ミレニアルズ」と呼ばれるアメリカ社会最大の世代グループ(定義によって異なりますが、2015年現在、10代後半から30代前半の世代)から支持されています。過去8年の政治的閉塞感と改善の兆しが見えない雇用情勢に苛立つ彼らは投票所に足を運び、民主党に投票します。

 2016年選挙では、左寄りで、共和党の妨害を受けることがない、新しい民主党政権が誕生することが決まると、リスク資産と米ドルは当初売られます。しかし、2016年の暮れの頃までに、アメリカでは珍しい安定多数の政権が誕生し、アメリカ経済の成長に必要な景気刺激法案の強行採決が可能であると認識されるようになります。その結果、市場のセンチメントは激変し、資産市場とドル相場は急騰に転じます。
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OPEC内部対立で、原油価格一時100ドル回復

 原油市場は、供給過剰に加えて、間もなく始まるイラン産原油の輸出増による新たな価格の下方圧力にさらされ続けています。北海ブレント価格については、アメリカの原油生産の回復が予想されることから、2016年第1四半期中に、2009年のリセッション当時の安値をつけ、さらに下値を探る展開になると見ています。ほかの売り材料としては、原油価格連動型ETFの解約と先物市場でのヘッジファンドによるショート(売り)建玉の記録更新が考えられます。

 そうした中でも、価格急騰の可能性があるのが原油市場の特徴です。例えば、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の代表的な原油価格を加重平均したOPECバスケット価格が2009年以来の安値まで下がれば、価格下落による経済的打撃を受け続けている加盟国の間では裕福か否かを問わず、OPECの価格主導権が失われるという不安が高まります。そこへ非OPEC諸国が減産を加速させる兆候を見せたら、大きな上げ相場が始まるでしょう。

 非OPEC諸国による減産の動きに素早く乗じて、OPECは生産の下方修正という形で市場に不意打ちを食らわせます。その結果、原油価格の下方スパイラルが収束します。それを見て、投資家が慌てて市場に舞い戻る、それもロング(買い)一色という展開になります。

 需要が一貫して底堅く推移していることが確認されれば、市場は原油供給が減少する可能性に焦点をあてます。原油価格の下落によって採算割れとなり、大規模な原油開発プロジェクトが中止を余儀なくされたため、将来の供給がその分だけ減少することは明らかです。そこへ、中東全体およびその他の供給懸念を引き起こしそうな地域の地政学的リスクプレミアムの増大が重なれば、原油価格は必然的に上昇します。

 原油価格は、上昇局面のピークでは1バレル=100ドルの上値を探る動きを見せた後、50~70ドルのレンジに落ち着くと考えています。そこまでの価格回復はOPEC単独の生産削減では明らかに困難ですが、引き続き不透明な地政学的環境を考慮すると、短期的な価格急騰の可能性は2016年には以前に増して高いと予想しています。

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低迷が続く金を尻目に銀は33%高騰

 銀価格の特徴は、金と産業用金属の動きに左右されることです。銀価格が2015年で3年連続の前年割れで推移してきた要因は、需要(産業用金属)とアメリカの金融引き締め(金)への懸念でした。2015年末にかけて、鉱業会社は、価格下落を受けて、銅や亜鉛などの主要金属の生産削減を発表しました。

 銀は、銅、亜鉛、金など他の金属元素の副産物として生産されることが多い金属です。銀のみを採掘する割合は生産量全体の3分の1程度に過ぎません。銅、亜鉛のいずれも、2015年後半には、中国国内の需要が減少したことを受けて、6年来の安値をつけました。需要が減る中で価格を下支えする唯一の方法はさらなる減産です。

 スイスの資源大手グレンコアや世界最大の総合資源会社である豪BHPビリトンなど主要な生産者は、すでに2016年の生産削減計画を発表しています。主要金属の生産削減によって銀の生産が減る一方、中国、ヨーロッパ、アメリカという主要消費地の経済活動は上向き、それに伴って需要が高まることから、銀への信頼が高まると予想しています。また、二酸化炭素排出量を削減するために再生可能エネルギーの発電量を増やす政策によって、太陽電池の電気伝導体として使われる銀への産業用需要の増加につながっています。

 これらの好材料を背景に、2016年の銀価格については、他の金属を尻目に33%の高騰を予想しています。金に対するアウトパフォーマンスは特に注目に値します。金銀レシオ(GSR)は2016年には過去10年平均の59ポイントまで回復します。そのことは銀が金を20%もアウトパフォームすることを意味します。

社債市場のメルトダウンの犯人はFRB

 世界最大のヘッジファンド、米ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏は2015年8月、米連邦準備制度理事会(FRB)が今追求する金融政策は「引き締め」ではなく「緩和」だと発言しました。それには、ディスインフレ―ション(インフレから脱したがデフレにはなっていない状態)が長期化している状況での金融引き締めは常識に反するというメッセージが込められています。さらに重要なことですが、長期債務サイクル(債務スーパーサイクル)を利上げサイクルで終わらせようとすると、必然的に混乱が起こると警告しています。利下げが繰り返される環境では、人々は際限なく借り入れやレバレッジを膨らませます。それは、以前の負債の返済を終える前でも、金利が下がれば新たな資金を借りたくなるのが自然だからです。その結果は、恐るべき債務スーパーサイクルです。言い換えれば、借金バブルは「大きくなり過ぎて、弾けさせることができない状態」になっているというわけです。

 しかし、2016年後半、雇用、住宅、株式、債券の各市場のオーバーヒートがより鮮明になると、FRBは「もはや後がない」と確信して、数次に及ぶ積極的な利上げに踏み切ります。FRBがいずれ利上げに転じることは数年前から想定されていましたが、利上げが実際に行なわれたのを受けて、すべての主要債券市場では大量の債券が売られます。それは、FRBの利上げを受けて、リスクフリーレート(元本が保証されている資産の利回り)であってもリスクがゼロではあり得なくなるため、世界の債券利回りが上昇し、特に、社債などリスク資産に対して投資家が要求するリスクプレミアムが一気に拡大するからです。

 その次に起きることはあまりにも異常かつ恐ろしいことから、リーマンショック後の債券市場の大混乱をいやでも思い出さざるを得ないでしょう。銀行や証券会社は一定規模の資本を債券トレーディングやマーケットメイキングを行うために割り当てていますが、そのほぼすべてが失われてしまいます。簡単に言えば、市場にとって最も大事な部分の一つが正常に機能しなくなるわけです。最悪の事態へ備えをしてこなかったバイサイド(年金、投信、保険等の機関投資家、それにレバレッジ比率が高いリスクパリティファンド)全体で、最先端のリスク管理モデルから一斉にレッドアラートが発せられ、狼狽売りが怒涛となって市場を飲みこみます。

 残念ながら、市場を守ってくれるエアバッグは存在しません。銀行には債券を買い支える力はなく、逆張りで買いを仕掛けてくれるところなども期待できず、さらに執行が確実なクォートを提示するトレーダーはどこにも見当たりません。一部の主要債券市場は取引停止の状態に陥り、2016年の冬を前にして、そうした市場では数週間にわたって完全な「凍結」状態が続きます。債券市場はこうして壊滅的に崩壊します。これがFRBの利上げ後の債券市場に関する大胆予測です。

エルニーニョ現象でインフレ発生

 多くの気象機関は、2015年と2016年は記録を取り始めて以来最も暑い年になり、世界の数多くの地点が干ばつに見舞われると予測しています。

 この数年間、世界は不安定な天気を経験してきましたが、同時に洪水や他の壊滅的な被害をもたらす異常気象の件数も増加しています。そうした異常な気象現象の中には、太平洋赤道域東部の海水温が上昇する「エルニーニョ現象」が含まれます。それも2016年に発生が予測されているエルニーニョ現象は観測史上最強のもので、東南アジアの多くの地域で土壌水分不足、オーストラリアでは干ばつがそれぞれ多発すると言われています。世界の農業生産が影響を受けるため、世界的な経済拡大を反映して需要が増えているにもかかわらず、農作物の減収による供給削減が現実になろうとしています。

 エルニーニョ現象がもたらす影響を考慮すると、ブルームバーグ農業スポット指数は2016年に40%も上昇する見通しです。そうなれば、一部の先進国が待ち望んでいるインフレ圧力がそれだけ増すことになります。人口減少、民間消費の落ち込み、過剰労働人口などによってもたらされるメガ・デフレ傾向との戦いに直面する主要国の中央銀行にとっては歓迎すべき現象となります。

 結局のところ、異常気象は、賃金上昇の足かせとなる一方、先進国の長年に及ぶ景気低迷の原因である新規の純投資の冷え込みを悪化させることが懸念されます。

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不平等是正で消える高級産業の最後の笑み

 高級品は不平等社会を象徴しています。これ見よがしに豪華な商品・サービスを消費することは、エリート層に属することを体現する行為です。エリート層は、エリート層であるがゆえの特権のためなら出費を惜しまず、他人との差別化を図ろうとします。私たちはこれらの行為を「スノッブ(俗物)効果」と呼んでいます。高級車や宝石、服装に消費されるお金は、社会インフラ、教育、あるいは貧困削減などにもっと有効に使えるお金です。その意味で、高級品の消費は経済にとって純損失となります。

 世界金融危機以来、ヨーロッパでは景気低迷と緊縮政策のために貧困が拡大しています。国際労働機関(ILO)の推計では、欧州連合(EU)の総人口の4分の1に相当する1億2300万人が貧困層予備軍に分類されています。金融危機が発生した2008年当時には1億1600万人でした。

 不平等の拡大と10%を超える失業率に直面するEUは、域内のすべての人々に、雇用の有無に関係なく、最低限の生活水準を保証する最低所得保障制度の導入を検討しています。スペインでは、新興左派政党ポデモスが、最低所得保障制度の導入を支持しています。フィンランドは数カ月以内に地域限定で同制度を試験的に導入する予定です。EU加盟国ではありませんが、スイスは同制度導入に関する国民投票を2016年に行います。フランスでは、人口の10%以上が貧困または社会的排除の危機にさらされています。フランスは2016年に全国民対象の最低所得保障制度の導入と高額給与への上限を決定し、所得格差問題の是正と、より包摂的成長の実現を目指します。

 富以外の価値が尊重される、より平等主義の社会では、高級品の需要は激減します。消費者の好みは大量消費型のハイテク商品にますます傾きつつあります。ヨーロッパでの消費需要が低下と、新興国経済、特に中国の景気後退の結果、高級品セクターは2016年、崩壊の危機にさらされます。高級品大手LVMHの売り上げが50%以上も落ち込むと予想しています。

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サクソバンク証券株式会社

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サクソバンクは1992年にデンマークのコペンハーゲンで設立された投資銀行です。数々の賞を獲得してきたオンライントレードツール「SAXOTRADER」の開発と、独自のビジネスモデルにより、プロの機関投資家から常に高い評価を受けています。 180カ国以上の顧客にサービスを提供し、トレーダー、投資家の真のグローバルパートナーとして設立された投資銀行です。