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サクソバンクの 2017年大胆予測

【著者】

事実は小説よりも奇なり ~STRANGER THAN FICTION~

スティーン・ヤコブセン/CIO

今年の大胆予測では、ブレグジットとドナルド・トランプ氏の当選という「サプライズ」以降を予想するのが非常に困難です。「現実の世界」は最も大胆な予測をも上回ることがあります。今回の一連の予測では前回同様、来年の投資リターンに予想外の結果をもたらすテーマを取り上げます。繰り返しの強調となりますが、こうした大胆予測は、サクソバンクのリサーチ/ストラテジー部門の2017年に関する「公式」の見通しではなく、常に手ぬるいコンセンサス予想を覆す可能性が非常に高い、想定外のイベントや市場動向を示したものです。
(・・・続きを読む。~OUTRAGEOUS predictions SAXO BANK PRESENTS For 2017~)

中国のGDP成長率が8%まで上昇し、上海総合指数は5,000に達する

ピーター・ガンリュー/エクイティストラテジー責任者

中国のさらなる減速がコンセンサス予想となる中、大規模な政府施策とその行使に向けた機運が中国で高まっていることは見逃されています。
投資規模がGDPの50%で高止まりしており、一方で全体の債務はGDPの237%まで膨れ上がり、持続が難しい状態となっているため、中国の現在の減速は規定路線となっています。中国は、製造業とインフラ投資による成長段階が終わったことを理解しており、民間セクター主導の経済に移行して、革新と経済の開放を推進する必要があります。財政と金融による大規模な刺激策と、資本市場のさらなる開放により、中国は消費主導の成長への移行に成功し、2017年の成長率は現在の予想を上回る8%に達します。

さらに興味深いことに、中国の成長とコモディティ市場におけるかつての相関性は失われています。これはサービスセクターが成長の回復を牽引しているためであり、同セクターはすでに中国で最大の規模となり、GDPの48%を占めています。個人消費主導の成長がもたらす好景気により、中国の株式市場では投機的な動きが広まり、上海総合指数は2015年のあっさりと到達した5,000を超える展開となるでしょう(2016年の安値の2倍)。

日銀の轍を踏むFRB - 10年物国債を1.5%に固定

サイモン・ファスダル/債券トレーディング責任者

打つ手を失った米連邦準備制度理事会(FRB)は、日銀の政策をまねる形で10年物国債の利回りを1.5%に固定。
トランプ氏が開始する減税と財政刺激策を見込んで、2017年の米ドルとアメリカの金利は上昇を加速させます。FRBの介入は回避できず、世界の資産価格と経済の混乱を阻止するための施策を打ち出すことになります。FRBは最終的に、10年物国債の利回りを1.50%に固定し、米ドルは一度過去最高まで上昇しますが、その後反落します。

前FRB議長のベン・バーナンキ氏は、2013年5月に「テーパリング」について言及した際は、金融業界は大きな衝撃を受け、10年物米国債の利回りが3%になっただけでなく、新興国市場を中心として債券が世界的に下落し(EMBIは12%低下)、世界の株式市場(MSCIワールドインデックスは8%の低下)と新興国通貨も下落しました。2017年初めは、トランプ大統領の強気の財政政策と世界的なインフレが予想外に進むことにより(原油価格の下落もインフレに影響)、10年物利回りが3%に向けて上昇するのは確実であり、パニックにより世界的な資産バブルに壊滅的な影響が及ぶ可能性があります。多くの状況には対応できるものの、利回りの上昇が急速であれば対応が遅れる可能性があります。

さらに問題となるのは、ポートフォリオのリスクモデルと結びついた金融市場は、テクノロジーを通じて連動するようになっており、ある問題に同じ反応を同時に示すようになり、世界的な下落を発動させる危険があります。中央銀行の措置に対する金融資産間の相関性はますます高まっています。同時に、FRBにとっては、利回りと一部の物価のみが上昇することが問題となります。国内の成長は低迷しているため、金融市場の世界的な崩壊が始まれば、FRBの嫌うスタグフレーションとなる可能性もあります。
大混乱を予想するFRBは、日銀のイールドカーブコントロール戦略をまねるものの、異なるアプローチを採用して10年物国債の利回りを1.5%に固定します。これは実質的にQE4を導入するのと同じであり、さらには無制限のQEへとつながっていくでしょう。

結果はすぐに明らかとなり、世界の株式・債券市場では下落が止まります。また、新興国市場の資産は反転し、世界の債券市場は過去7年で最高の上昇となります。極端な財政緩和と、ジャネット・イエレンFRB議長の瞬間的な効果に対する無理解に対して、さらにバブルが拡大するとの批判も出ますが、中央銀行がQEにより再び上昇相場をもたらす中、こうした批判的な声はかき消されます。

ハイイールド債のデフォルト率が25%を超える

スティーン・ヤコブセン/CIO

QEとゼロ金利政策の失敗により、ハイイールド債のデフォルト率が平均4%未満から25%に上昇ハイイールド債の長期的な平均デフォルト率は現在3.77%ですが、アメリカが景気後退となった1990年、2000年、2009年はそれぞれ16%、10%、12%に急増しています。しかし、2017年のデフォルト率は25%まで上昇します。

世界的な金融危機以降の中央銀行による無慈悲なゼロ金利政策と量的緩和は、長期的な時限爆弾を生み出しました。デフォルト率の上昇では、この爆弾が重要な役割を果たします。

2016年の最終的な低下を経て、2017年は利回りの劇的な反転が期待されます。このとき、単独の金融政策から財政刺激策への転換が行われます。ドナルド・トランプ氏とテリーザ・メイ首相は、財政刺激策、実質ベースでのインフレ、利回りの上昇を実現します。EUは、翌年の数多くの選挙を前に、域内でのポピュリストの台頭を回避するために同様の措置を取る必要があるでしょう。

利回り物色が後退すれば、世界的に金利がさらに上昇します(日本以外)。つまり、イールドカーブが大幅にスティープ化し、信用の低い無数の社債が大きな打撃を受けることになります。

最低格付の債券発行体は、既発債の満期を迎えたときに借り換えの問題に直面します。しかし最大の脅威は、投資家が債券の手仕舞いを進めることでスプレッドがさらに拡大し、格付の低い債券は借り換えが不可能になることです。

デフォルト率は急上昇し、過去最高の25%となります。しかしこれは必ずしも悪い状況ではありません。社債のデフォルト率が上昇することで、経済の健全化は進むことになり、待望の「創造的破壊」が実現することになります。ヨーゼフ・シュンペーターならば、次のように指摘するでしょう。「長期に渡りただ乗りをしてきた非効率で生産性の低い企業を排除すること。これにより、優れた企業に資本を再配分することができる。

イギリスがEU離脱を撤回

ジョン・ハーディ/FXストラテジー責任者

EUはイギリスとの友好関係を模索し、移民問題と金融サービスに関する交渉により、「EU離脱の撤回」とEUR/GBP = 0.7300の実現を目指す。

世界的なポピュリストの台頭は、EU離脱をめぐるイギリスの国民投票、ドナルド・トランプ氏の勝利、イタリアの国民投票でも明らかであり、これを受けてEUの指導部は域内とイギリスに対して態度を軟化させます。

交渉が長引く中、EUはイギリスを引き込んだ方が力を発揮できることを認識します。EUは、移民問題とイギリスの金融サービス(EU内の特別な地位の維持)に関して重要な譲歩をする用意があることを示します。リスボン条約第50条手続きの開始をめぐる投票が議会で行われるころには、新たな方針が支持されてEU離脱は却下されるでしょう。この方針は、デイビッド・キャメロン前首相の当初の条約改定要求を上回るものとなります。

したがって待望のブレグジットは、イギリスがEU離脱を撤回することにより、「ブリメイン」に取って代わられます。イギリスで多額の資本を保有する外国人の懸念が和らぐことで、英ポンドのヘッジが大幅に解消され、金融サービス企業は英ポンドの比重を大幅に高めます。

イングランド銀行は、利上げにより政策金利を0.50%に戻し、FRBに追いつく形でEUR/GBPは0.7300まで急落します。市場が1973年にイギリスがEECに加盟した際の状況を踏まえると想定し、当社は0.7300を予想します。

銅が迎える冬の時代

オーレ・ハンセン/コモディティストラテジー責任者

トランプ氏が財政支出に関する公約を果たせないことが冷静に観察される一方で、2017年の銅は厳しい調整局面を迎え、1.25ドル/ポンドにアメリカ大統領選におけるトランプ氏の予想外の勝利を経て、銅は商品銘柄において明確な勝者の1つとなりました。トランプ氏は、アメリカ再建のために数十億ドルの支出を行うと公約していますが、これにより需要が増加するとの期待が高まり、2009年の金融危機直後の中国の活発な投資以来となる銅の上昇が実現します。

2017年の市場では、新大統領が公約している投資の実現が難しいことが明らかになり、期待される銅の需要増加は実現しないでしょう。国内の不満増大に直面したトランプ大統領は、保護貿易主義を強化し、貿易障壁を生み出します。これにより新興国市場とヨーロッパは打撃を受けることになります。

工業用金属に対する中国の需要が減退するのに伴い、世界の成長は鈍化しはじめます。このため中国の成長では、意味のないインフラ建設ではなく、消費の増加が必要となります。
また、銅価格の下落は自己永続的となります。なぜなら、中国では数年にわたって銅の「金融化」が進んでおり、この大量の在庫が市場に放出されるからです。

HG Copperがトレンドラインを割り込み、2002年の2ドル/ポンドまで下落すれば、銅の売りが一気に加速し、一連の投機的な売り(特に中国外)により2009年の金融危機で記録した1.25ドル/ポンドまで下がるでしょう。

仮想通貨の人気に伴ってビットコインが大幅に上昇

ケイ・ヴァン・ピーターセン/グローバルマクロストラテジスト

トランプ氏の大型支出によりドルが急騰し、新興国市場が代替通貨を求め、ビットコインが2,000ドルを試す展開にトランプ政権は、財政規律をすべて解除し、支出を大幅に拡大させます。アメリカの約20兆ドルの国債規模をさらに拡大させ、財政赤字は現在の約6,000億ドルから1.2~1.8兆ドルへと3倍の増加となる可能性があります(現在のアメリカ経済規模は18.6兆ドルであり、その約6~10%)。

これによりアメリカの成長率とインフレ率は急上昇します。FRBは利上げの加速を余儀なくされ、結果として米ドルは大幅上昇します。

この影響は主に新興国市場と中国に波及します。これにより、世界中の人が中央銀行や政府と結びついていない代替的な通貨と決済システムを求めるようになります。中央銀行はこれ以上の金融政策を進めることができず、その悪友である政府は完全な財政緊縮モードとなっており、取引システムの変革も完全に時機を逸しています。
不換紙幣の興隆と破綻、そして過剰債務により、仮想通貨が普及します。代表的な仮想通貨であるビットコインはこうした混乱から恩恵を受けます。

新興国市場の政府は、アメリカの金融政策と金融システムの影響を逃れ、決済システムとして「ブロックチェーン」を採用することを真剣に考えています。こうした政府は、ゼロ金利とシステマティックリスクの低減に対応する中で、仮想通貨の支持者となっていきます。

金融システム、およびロシアや中国などの政府において、米ドルと伝統的な金融・決済システムを一部代替する形でビットコインの採用が進められれば、来年のビットコインの価値が3倍となり、現在の700ドルから2,100ドルを超える水準まで容易に上昇する可能性があります。ブロックチェーンは分散システムであり、ビットコインの供給は有限であり、取引コストは少ないまたはゼロであるため、世界中の支持と採用が進むことになります。

アメリカの医療改革が業界に混乱をもたらす

ピーター・ガンリュー/エクイティストラテジー責任者

市場はバブルを乗り越えますが、アメリカの政治システムは医療制度において再びバブルを生み出します。

インシュリンの価格は、1996年以降で7倍となっており、今も上昇が続いています。同じインシュリンがアメリカではフランスの約7倍の価格となっています。
これは当然ながら総額での価格であり、民間の医療保険は高額な薬品価格を相殺しています。この金額は、アメリカの医療制度の基礎となる多くの請求書を通じて政府予算から引き出されます。
医師は平均的な患者の約5倍の収入を得ており、西洋諸国の約3倍となっています。こうした事情もあって、アメリカでは病院経営の管理コストが高くなっています。
アメリカでは医療費がGDPの約17%を占めており(世界の平均は10%)、医療費を払えない人が増えています。
医療関連銘柄は、トランプ氏の勝利で一旦上昇しますが、2017年には急速に下落します。新政権が医療制度を優先せず、生産性が低く高額なアメリカの医療制度に対して抜本的な改革を開始することを投資家が認識するためです。
ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンドETFは50%下落して35ドルとなり、金融危機以降で最も堅調だったアメリカの株式相場の上昇が終わりを迎えます。

トランプ氏の勝利にもかかわらずメキシコペソが急騰(特に対カナダドル)

ジョン・ハーディ/FXストラテジー責任者

「メキシコペソ(MXN)はトランプ政権の被害者となることが見込まれていますが、現実が一旦落ち着けば、カナダドル(CAD)などが下落する中で反発するでしょう。」

市場は、ドナルド・トランプ氏の真の意図を大きく誤解しており、メキシコとの貿易において制裁を加える能力を過大評価していました。トランプ氏の刺激策は、アメリカの需要に大きく依存するメキシコ経済にとって追い風となり、大幅に下落したペソは反騰します。

一方、アメリカの北側の隣国は、世界で最も民間セクターの借入が多いため、金利上昇により信収縮が始まります。カナダの銀行は圧力に負け、カナダ銀行は量的緩和と金融システムへの資本注入れるを余儀なくされます。カナダ銀行は、これにより危機を回避し、経済への健全な信用供給の体裁を維持します。

カナダの住宅市場は、世界的な金融危機以降の経済成長を牽引してきましたが、大きな懸念となります。また、カナダの製造基盤はグローバル化により長期にわたって空洞化しており、通貨も過度の高止まりが続いています。そのためカナダはアメリカの成長回復から大幅な後れを取り、カナダドルは低迷します。
CADMXNは、2016年の高値から30%もの調整となります。

イタリアの銀行が株式資産において最高のパフォーマンス

スティーン・ヤコブセン/CIO

「欧州中央銀行(ECB)が『大きすぎて潰せない』銀行に対して前例のない救済策を実施することにより、イタリアの銀行は100%を超える上昇となります。」

EUが「大きすぎて潰せない」すべての銀行に対する保証の発行をECBに指示し、イタリアの銀行はEUの銀行セクターとその他すべての株式クラスをアウトパフォームします。

多額の不良債権と国内経済の低迷に悩むイタリアの銀行は、皮肉なことに国内の要因ではなく、傾きつつあるドイツの銀行業界を理由として救済されます。

ドイツの銀行は、マイナス金利の負担とイールドカーブの過度のフラット化により、負のスパイラルに陥りました。2017年の銀行は、市場にアクセスして追加の資本を得ることが突然できなくなります。
なぜなら、世界的に利回りが急上昇しているため、主要銀行が銀行間取引を信用せず、資本コストとカウンターパーティーリスクが増大するからです。EUの枠組みでドイツの銀行を救済すれば、これはEUの銀行を救済するのと同じであり、困難を抱えるイタリアの銀行は最適なタイミングで支援を受けることになります。

新たな保証により、銀行システムの資本強化が可能になります。1990年代初めのスウェーデンの銀行救済策と、1980年代終わりのアメリカの貯蓄・融資救済策に倣って「ヨーロッパ不良債権銀行(EBDB)」が設立されれば、EUの銀行のバランスシートを健全化し、銀行の与信機能を復活させることができます。

イタリアの銀行株は100%を超える上昇となります。

EU債による成長刺激

クリストフ・ダンビ/エコノミスト

緊縮政策をやめてケインズ型の刺激策に移行する場合、1兆ユーロ規模のEU債の発行で資金を調達することになる

ポピュリストの台頭は、2016年のEU離脱をめぐるイギリスの国民投票と、アメリカでのドナルド・トランプ氏の勝利で明らかになりました。こうした動きは、ヨーロッパでも広がっており、マッテオ・レンツィ首相の国民投票では、反主流派層の増加が確認され、オランダの選挙ではヘルト・ウィルダース氏率いる自由党(PVV)が劇的な勝利を収めます。

伝統的な政党は、ヨーロッパの政治環境が一変したことを知ります。彼らは、政策を変更するとともに、経済の復活に向けて十分な取り組みを行ってこなかったことを認め、自らの緊縮政策を撤回します。ユンケル氏の施策は、当初の困難を経て順調に進みますが、6年間で総額6,300億ユーロでは十分な効果が得られません。

1929年の世界恐慌では、イギリスのネヴィル・チェンバレン首相とアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領がケインズ型の刺激策で成功を収めています。これらと同様の大胆な刺激策が経済・政治的危機の適切な答えであると考える国が増えていきます。

こうした刺激策は、十分な経済効果を上げ、成長を大幅に加速します。しかし、刺激策がヨーロッパ全体で連携していない場合、この手段を採用した国の恩恵は、輸入の増加によって薄められてしまうでしょう。

このシナリオを回避するために、EU指導部は大規模なEU債の発行を発表します。最初の起債分は1兆ユーロのインフラプロジェクトに充当され、これにより地域の経済統合とEUへの多額の資本流入が進み、EUの将来に対する信頼感が回復します。

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サクソバンク証券株式会社

サクソバンク証券株式会社

サクソバンクは1992年にデンマークのコペンハーゲンで設立された投資銀行です。数々の賞を獲得してきたオンライントレードツール「SAXOTRADER」の開発と、独自のビジネスモデルにより、プロの機関投資家から常に高い評価を受けています。 180カ国以上の顧客にサービスを提供し、トレーダー、投資家の真のグローバルパートナーとして設立された投資銀行です。