FXコラム

一石三鳥の40年債増額

【著者】

日本国債の価格が8月2日までに4日間続落、10年国債の利回りは、2日に一時-0.025%にまで上昇した。ニューヨークは-0.08%にまで下げて引けた。

先週、日銀が金融政策で、ETFの購入額は増やしたものの、国債購入額と当座預金のマイナス金利幅を、これまで通りに据え置いたことに失望、国債を手放す動きが加速した。

株式は買えば上がる。米株のように史上最高値を更新し続けていても、カネ余りや、他市場との比較や、業績などの、株価を支える条件が揃っていれば、必ずしも買われ過ぎとは言えない。

債券も買えば上がるが、満期時には必ず100%の価格で償還される。例えば価格105の債券は、2年債なら2年後に、5年債なら5年後に、10年債なら10年後には、100に値下がりする。100になるものを、105の価格で買うために、マイナス利回りとなるのだ。マイナス利回りとは、明らかな買われ過ぎ、国債バブルだ。

それでも買い続けてきたのは、日銀が買い続けているので、つまり例え105で買っても、106でも、107ででも買ってくれるので、キャピタルゲインが得られるからだ。

売られたのは、追加緩和を見越した買い持ちポジションが大き過ぎたためだ。また、日銀がこのペースで買い続けると市場で流通する国債が枯渇するので、緩和限界論が出るのではないかと、今回の据え置きで不安心理が高まった。

もともとが、キャピタルゲイン狙いの短期トレードだ。買い手の力が弱まると、価格は一気に下落する。-0.025%にまで売られると、過去5カ月間に買った人たちは全員損失を出す。終値チャートで見る限り、-0.3%近辺は、利回りのダブルボトム、価格のダブルトップで、天井感が出る水準となった。

参照:日本10年国債利回り推移
日本10年国債利回り推移(出所財務省:チャートは8月1日の終値まで)

一方で、麻生財務相と黒田日銀総裁は2日午後に会合を持ち、麻生財務相は足元の低金利環境を活かすため満期が40年の超長期国債の発行増額を表明、黒田総裁は金融緩和を縮小することにはならないとの見解を示した。

40年債を増額することで、

1;日銀が買い続けることによる国債枯渇懸念を払拭し、
2;まだプラスの利回りであることでより長期の投資家を呼び込み、
3;低利での長期負債を増やすことで借金返済までの猶予期間を確保する

という、一石三鳥が狙いだ。

参照:日本国債利回り曲線(出所財務省:8月1日終値)
日本国債利回り曲線

まだまだ緩和政策は続く、利食いはしても、損切りしてまで、国債を売りたくはない。今後の10年国債は0.03%~0.30%の間で推移する可能性が高まった。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。