FXコラム

米株は既に調整済み

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マーケット情報|2014/09/18

2014年9月17日、ニューヨーク・ダウは終値での史上最高値を更新した。米株が長期上昇を続けている間を通じて、多くの専門家は警戒感を表明し続けた。実際、「ヘッジファンド業界は現在の株高局面では非常に保守的な投資姿勢だった。今はヘッジファンドが次の株高に乗り遅れてさらに指数との成績差が開かないように、少しでも押し目があれば株式を買っているので、市場全体の値下がりを小幅に抑える役割を果たしている」という。

弱気だったのは、上昇初期は景気が良くなかったため。上昇中は景気の不透明感に対して。景気回復が見られてからは目立った調整がないことが嫌気された。S&P500株指数は2011年10月以降、10%以上の下落を経験していない。

ところが、調整は既にあったというコメントを目にした。
(以下、要点を抜粋引用)

「S&P総合500種の全10業種のうち7業種や、ナスダック総合指数、ラッセル2000指数はいずれも11年10月以来、10%強下がる場面があった。もっとも多くのケースは、複数回に分かれてのことだ。」

「株高を維持してきた要因の1つは、これまで調整が代わる代わる起きたことにある。今の株式市場は値上がりが激しくショックに見舞われるのが必至という状態ではなく、自律的な調整が働き続けている。」

過去52週だけをみても、S&P総合500種の10業種のうち8業種は4%強の下げが少なくともそれぞれ3回はあり、ハイテクを除く9業種は最低6.9%の値下がりも経験した。同じ期間にS&P総合500種が4%強下げたのは2回だけ。過去半年では、最も大きな2回の下落率はいずれも4%に届かない。

「投資家は利益確定に動く機会はたっぷりあり、実際にそうした。だがこれらの銘柄は成長を続けているというのが現実だ。」

トムソン・ロイターのデータによると、S&P総合500種の1株利益は今年118ドル超と過去最高に達し、来年は133ドル超まで増加する見通し。一方で向こう12カ月の予想利益に基づくPERは15.8倍と、過去平均の14.9倍を少しばかり上回っているにすぎない。

過去1年間は、主要セクターが交代で株式市場をけん引。6─7月で10業種のうち4業種が最高値をつけ、残る6業種は今月に入ってS&P総合500種が連日最高値を更新した局面で株価がピークに達した。

「債券の方が割高感が強いように見受けられ、以前ならば債券に資金をシフトしたであろう投資家も、今はその代わりに株式市場のセクター間で資金を動かしている。」

S&P総合500種の益回りは9月15日時点で約6.30%と、米10年国債利回りの2.59%より3.71%も高く、両者の差は長期平均の約1.5%を大きく上回っている。

「株式のほかに投資できる先が非常に限られている。そのため株式市場から資金が逃げ出して他の場所に移動していない。」

投資家の種類別でみると、S&P総合500種に対してアンダーパフォームが目立っているのがヘッジファンド。調査会社ヘッジファンド・リサーチによると、1─8月のS&P総合500種の上昇率9.9%に比べてヘッジファンドのリターンは4.1%だった。
(引用ここまで)焦点:米国株に大幅調整が起きない理由
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPKBN0HC08X20140917

ヘッジファンドを含む、多くの専門家が米株高を見逃したのは、カネ余りの金融相場への理解が足りなかったためだと言える。

私は常々カネ余り相場の特徴を、「それぞれの金融商品が調整しても、いつの間にか、ほとんどすべての投資物件が値上がりしている」と述べてきた。債券、株式、商品間でそれが起こり、主要国の債券市場間、株式市場間でも、株式の個々のセクター、銘柄、商品市場の商品間でもそれが起きてきた。

カネ余りは、インチ(約2.54センチ)の物差しで測っていた投資物件の価格を、センチの物差しで測るような効果を持つので、カネという物差しで測った同じものが、大きく値上がり(この場合は2.54倍)して見えるのだ。実際には、通貨と貯蓄商品の価値が目減りしたに過ぎないともいえる。つまりカネ余りによるカネの価値の下落によって、「それぞれの金融商品が調整しても、いつの間にか、ほとんどすべての投資物件が値上がりしている」ことになったのだ。

17日のFOMCで、量的緩和が10月で終了することが明らかとなった。しかし、これはカネ余りの終了を意味するわけではない。FRBは金融緩和政策からの出口戦略も明言、保有証券の償還資金再投資については、経済状況に応じて、利上げ開始からしばらくしてから終了、また段階的に縮小すると見込んでいるとした。つまり、カネ余りは利上げ開始をもって終了する。

FRBによる、2015年末時点の金利見通しは中央値で1.375%と前回の1.125%から上昇。2016年末は2.875%と、2.50%から上昇した。今回初めて見通しに含まれた2017年末は3.75%だった。

利上げ時期が近付くと、債券市場から株式市場への資金の流れが本格化する。その時点ではまだカネ余りなので、株価はそこからでも急騰する可能性が高い。

また、米国の利上げが始まっても、日欧中が資金供給を続ける可能性が高く、世界的なカネ余りは継続することになる。これは大変なリスクだ。ここでの最も大きなリスクは、資産インフレのリスク。株式を持たない人には苦しい時代となるかもしれない。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。