FXコラム

再び、ギリシャ

【著者】

まずは事実関係から:

14日のギリシャと欧州連合との交渉が不調に終わり、ギリシャ政府がデフォルトに陥るとの警戒感が一段と高まった。15日の欧州債券市場では、ギリシャ3年国債利回りが一時29%台後半と4月下旬以来の高い水準となった。

ギリシャは6月30日に迫ったIMFへの債務返済するため、約16億ユーロを用意する必要があり、72億ユーロの支援再開が不可欠となっている。また、7月中旬にECBが保有する35億ユーロの国債償還を控え、資金繰りは一段と厳しくなる。

欧州中銀ドラギ総裁は15日の欧州議会で、「ギリシャの銀行に支払い、担保能力がある限り資金供給を続ける」と述べたが、実際のところは、支払い、担保能力が枯渇している状態だ。15日の預金流出額は約4億ユーロに達した。1日当たりの流出額は最近数週間、2億―2億5000万ユーロ前後だった。

ドイツ出身のエッティンガー欧州委員は、「ギリシャが非常事態に陥る恐れがあるため、緊急対策を準備しておく必要がある」と発言。南ドイツ新聞は、週内にギリシャ支援協議が合意に達しない場合に備え、ユーロ圏がギリシャの銀行に対する資本規制導入を含む緊急対応策で合意したと報じた。ギリシャ政府はこの報道を否定。ドイツ政府報道官は、報道内容を確認も否定もできないとコメントしている。

欧州連合は、「ボールは明らかにギリシャ側にあり、必要な措置を講じるべき」とした。チプラス首相は、ギリシャの尊厳を守る責任があるとし、再建団側が要求している「一段の年金削減などを拒否する」姿勢を鮮明にした。

チプラス首相は18─20日にロシアを訪問し、同国で開催される経済フォーラムに出席するほか、プーチン大統領と会談する。

18日には、ユーロ圏財務相会合を開催。欧州連合当局者は、ギリシャがこの日までに改革事項をめぐる新たな提案を提出しなければ、ユーロ圏はギリシャに対し欧州側の要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか、最後通告を行う可能性があるとした。

ギリシャ政府が求めている短期証券(Tビル)発行枠の上限引き上げについては、検討するにも「現行の支援プログラムが成功裏に決着し、実施されるとの信頼できる見込みが必要」とけん制した。

ロイターが短期金融市場関係者を対象に実施した調査では、ギリシャが年内にユーロ圏を離脱する確率は約30%と、前月の調査から上昇している。

また、ギリシャ国民の約3分の2が、チプラス政権が債権団との交渉で譲歩する必要があると考えていることが15日の世論調査で明らかになったと報道された。

(以下は矢口の見方)
米CNBCはアライグマがワニの背に立っている写真を乗せ、このただ乗りの意味をどう考えるかと、3択問題を出した。その1つに、ギリシャがドイツや他のユーロ圏諸国の背にただ乗りしているというものがあった。

参照:What does the raccoon riding an alligator represent?
http://www.marketwatch.com/story/what-does-the-raccoon-riding-an-alligator-represent-2015-06-15(英字サイト)

ギリシャ問題は、日本に例えると、通貨・金融政策を握る中央政府が、地方でシャッター街が増え、税収減となっているのは、地方住民が怠惰で、能力にも劣るとし、地方政府に緊縮財政、公務員削減、給与削減、公共投資削減、年金減額などを突きつけているようなものなのだ。これでは、地方経済が更に悪化することが予想されるが、実際のところ、ギリシャ経済は悪化の一途を辿っている。

私はチプラス首相が、「ギリシャの尊厳を守る責任がある」と述べることに共感を覚えるが、報道されているように「ギリシャ国民の約3分の2が、チプラス政権が債権団との交渉で譲歩する必要があると考えている」のだとすれば、間もなく欧州連合との合意がなされ、緊縮財政、公務員削減、給与削減、公共投資削減、年金減額されることと思う。

しかし、これではギリシャ経済はますます落ち込むことになるので、支援が再開されても、次の支払い時には更なる譲歩を強いられることになる。ギリシャは国家存亡の危機なのだ。ギリシャがユーロ圏に留まる限り、ギリシャの尊厳は回復されず、ただ乗りの辱めを受け続けることになる。そして、このまま経済政策をドイツなどに委ねていては、衰退のスパイラルは止めようがない。

私は、ここでカギを握ることになるが、ロシアだと見ている。

ユーロ圏は、「ギリシャに対し欧州側の要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか、最後通告を行う」可能性があるとされるが、これではまるで、ギリシャがユーロ圏から恩恵を受けているかのようだ。実のところ、その恩恵とは支援金だけで、そのために緊縮財政を強いられているので、経済成長や税収増には実害となっている。実際、預金は大量に流出し、多くの資産がドイツや中国などの手に渡った。

ここでロシアがからむと、ギリシャは「欧州連合に対しギリシャ側の要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか、最後通告を行う」可能性がでてくるのだ。

ギリシャがロシア側に行くことを、米英は決して許さないと思うからだ。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。