インフレ政策としての、金融緩和のジレンマ

【著者】

IMFは日本経済における量的緩和の効果が乏しいとして、日銀に追加緩和の必要性を提言した。

日銀による量的緩和の目的は、生鮮食品を除く消費者物価指数総合(コア・インフレ指数)を、年2%ぐらいの上昇率で安定させたいとするものだ。ここで、過去半年ほどの消費者物価指数総合と、コア指数の推移をみてみよう。総合を先に挙げるのは、国際比較がしやすいからだ。

まずは、OECD諸国の消費者物価指数の過去半年間の推移を挙げる。

OECD5月の消費者物価指数は前年比+0.6%だった。4月の+0.4%から加速した。

表

以下が日本のものだ。

12月の消費者物価指数総合は103.3と、前年比+2.4%だった。11月の+2.4%と同水準だった。生鮮食品を除く総合は103.2と、前年比+2.5%だった。上昇は19カ月連続。11月の+2.7%から鈍化した。

2014年のCPIは生鮮食品を除く総合で102.7と前年比+2.6%だった。前年を上回るのは2年連続。

1月の全国消費者物価指数は前年比+2.4%の103.1だった。12月と同水準だった。コア指数は前年比+2.2%の102.6と20カ月連続で上昇した。+2.5%から減速した。

2月の全国の消費者物価指数総合は前年比+2.2%の102.9だった。1月の+2.4%から減速した。生鮮食品を除くコア指数は前年比+2.0%の102.5だった。上昇は21カ月連続。1月の+2.2%から減速した。

3月の全国消費者物価指数総合は前年比+2.3%だった。2月の+2.2%から加速した。コア消費者物価指数は前年比+2.2%の103.0だった。プラスは22カ月連続。2月の+2.0%から加速した。消費増税の影響を除くと3月のコアCPIは実質0.2%伸びた。

エネルギーと食品を除いた「コアコア」のCPIは前年比+2.1%の100.7だった。2月の+2.0%から加速した。増税の影響を除くと0.4%伸びた。

2014年度のコア消費者物価指数は前年度比+2.8%の103.2だった。前年度を上回るのは2年連続。14年4月からの消費税率引き上げに加え、円安による輸入物価の上昇などが押し上げ要因となった。13年度は+0.8%だった。

4月の消費者物価指数は前年比+0.6%だった。3月の+2.3%から減速した。コア指数は前年比+0.3%だった。3月の+2.2%から減速した。除く食料とエネルギー価格では前年比+0.4%だった。3月の+2.1%から減速した。

5月の全国消費者物価指数は前年比+0.5%だった。4月の+0.6%から減速した。生鮮食品を除く総合は前年比+0.1%。上昇するのは24カ月連続。4月の+0.3%から減速した。食料・エネルギーを除く「コアコア指数」は+0.4%と、4月と同水準だった。

消費者物価指数については、以下のページに詳しい。
参照:消費者物価指数の概要について
http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm

日本のインフレ率が3月までは前年比+2%を超えていたのは、前年4月に3%引き上げた消費増税の影響が続いていたためだ。4月以降は目標の2%に遠く届かない位置にいる。

気になるのは、量的緩和を終了して以降、米国のインフレ率の伸びが止まっていることだ。IMFが日銀に追加緩和を提言するなら、米FRBにも量的緩和再開を提言しないまでも、政策金利の利上げ時期を来年以降にずらすように提言してもおかしくはない。

とはいえ、金融緩和を行えば、本当に消費者物価指数は上昇するのだろうか?

本来、価格は需要と供給とで決まる。中央銀行による資金供給が購買力の上昇に繋がれば、モノやサービスに対する需要が高まって、価格上昇が期待できるといえる。

しかし、中央銀行による資金供給が生産力増強につながり、購買力の上昇以上にモノの供給増に繋がれば、それでも価格は上がるのだろうか?

IMFは日銀に追加緩和の必要性を提言しながらも、同時に、規制緩和や構造改革が進まなければ、過度な円安になるだけだと付け加えた。

規制緩和や構造改革は、中央銀行の担当分野ではない。量的緩和がデフレ圧力に繋がりかねないという、不思議な現象を避けるためにも、政府はいびつな規制や構造を変えるように働きかけた方がいいといえる。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。