中国人の爆買いは鎮静化する?

近年、中国からの海外旅行者が年間1億人を上回り、他のどの国の旅行者よりも多くの香水やブランド衣料といった高級品を買っている。

アナリストによれば、世界全体の高級品向け支出に占める中国人の割合は、10年前には実質ゼロだったが、今や45%にまで高まっている。中国国内の購入価格が、購入する国によっては2倍から5倍にもなってしまうことがあるからだ。

付加価値税払い戻しを手掛けるグローバル・ブルーは4月に公表したリポートで、中国人旅行者の今年の高級品に対する支出額は過去最高に達したことを明らかにした。欧州に向かった中国人旅行者にとってはユーロ安が追い風になった。

2009年8月を100とすると、中国元は主な貿易相手国のどこに対しても値上がりしている。ドルリンクを離れ、基準値と許容変動幅を導入した米ドル相手に1割近く、円やユーロ、インドルピーに対しては3割近く、ブラジルレアルに対しては2倍以上にもなった。台湾ドルに対してだけが、わずかな値上がりにとどまっていた。それが、この3日間だけで5%ほど値下がりした。

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そうした元安誘導に対し、米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は12日、「中国経済が想定されているよりも弱含んでいるのであれば、適切かもしれない」との見解を示した。FRB当局者が示した初めてのコメントとなる。中国の経済規模が日独英を合わせた規模となり、世界の5大銀行中4つを中国の銀行が占めるようになってしまっては、「too big to fail(大き過ぎて潰せない)」ものとなり、景気へのテコ入れは「適切なもの」と見なさざるを得ないからだ。

中国経済に失速の兆しがあるのなら、輸出力を高め、海外に流れていた購買力を自国に引き戻すだけの、「適切なレベル」までの元安誘導は、国際社会で容認される可能性が出てきた。もしかすると、中国元は変動相場制への一歩を踏み出したのかもしれない。

元安の進展は、貿易相手国にとって中国からの輸入商品の値下がりや、爆買いの鎮静化を意味する。世界経済にまた1つ、新たな変動要因が加わった。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。