FXコラム

債券ファンドのマネージャーが「白旗」

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FXコラム|2014/08/04

世界最大債券ファンドのマネージャー、ピムコのビル・グロス氏は、米国債や投資適格債の価格は適正だとしながらも、もはや割安ではなく、これ以上の債券価格上昇は見込めないと述べた。また、「投資家は債券投資を続けながらも、株式保有もまた必要だ」と、相場環境の変化を示唆し始めた。

参照:Gross Says Time to Say ‘Good Evening’ to Asset Gains (英字サイトです)
http://www.bloomberg.com/news/2014-07-30/gross-says-investors-should-say-good-evening-to-asset-gains.html?cmpid=yhoo

米個人投資家たちは、2012年10月から資金を債券ファンドから引き出し、株式ファンドに移してきた(日本株の急騰にも関与した)。その結果、2013年半ばには、それまで世界最大のファンドであったピムコの債券トータルリターンファンドを、バンガードの株式ファンドが追い抜き、資産量世界一のファンドが債券から株式に入れ替わった。

米国債価格は明らかに頭打ちとなっており、金利だけでは投資家に十分なリターンが渡せない。毎月のように資金の流出が続くなかで、グロス氏はモーゲージ債やジャンク債など、より高利回り債券への投資を始めていた。しかし、米国債とジャンク債の利回り較差が歴史的な小ささになるなかで、2014年に入ってジャンク債の値崩れが起き始めていた。

縮小したとはいえ、米連銀による債券購入プログラムは継続中で、超低金利政策も続けている。その結果、米国債やモーゲージ債の利回りもまだ歴史的な低水準だ。ユーロ周辺国の国債が連日で史上最低水準を更新するなど、世界的にも高利回り商品は限られている。こういった現状では、ジャンク債が売られて利回りが高くなると、まだ買い手が期待できる。それでなんとか、値を保っている状態だ。

ところが、今後量的緩和が終了し、政策金利のFFレートが上がり始めると、銀行の短期調達金利が上がり始める。低利の中長期国債を保有するメリットがなくなり、米国債の本格的な値崩れが始まるようになる。そういった金利上昇期に最も大きな損失を出すのがモーゲージ債とジャンク債なのだ。流動性も落ちるので、買い手がいない状態が出現する。

私は2013年以降に、高利回り債券を買い始めたグロス氏に関して、とうとう同氏にも焼きが回ったかと失望寸前だったが、この記事を目にして安心した。立場が違えど、私と同じような見方をしている大物がいるのは心強い。

モーゲージ債やジャンク債の売却は今ならまだ間に合う。昨年以降、トータルリターンファンドのパフォーマンスはぱっとしないが、それ以前の価格上昇益と利回りとを鑑みれば、ネット収益プラスで終えることができるかと思う。グロス氏が金利上昇局面をどう乗り切るか、今後も情報があればお伝えする。

興味深いのは、米国では株式の担当者はしばらく前から概ね高値警戒感を表明している一方で、債券の担当者は債券の上値の重さから、株式の時代を感じていることだ。

日米を問わず、通常、為替のディーラーは一生為替だけ、債券や株式もプロとして扱うのはその商品だけだ。私の場合は、海外転勤を希望したり、転職した関係で、プロとして為替、債券、株式の3商品を売買することになった。おかげで、全体を見渡すには一日の長がある。

私の見方は、グロス氏に近い。長く続いた債券の大相場は終盤を迎えている。そうなると、株式だけの高値警戒感などは吹っ飛んでしまうと見ている。

みんなの株式に掲載されている矢口氏のコラムご覧ください
http://money.minkabu.jp/author/auth_yaguchi
最新記事:2014/7/29 「為替市場のレジェンド若林栄治氏」
http:/money.minkabu.jp/45978

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。