FXコラム

現金は王様(Cash is king)?

【著者】

投資家が苦しんでいる。米国からみて、今年の前半の平均投資リターンは、米国株が+1.80%、外国株が+5.33%、国内債券が+0.59%、外国債券が-3.37%、不動産が-5.60%、商品市場が-2.32%だった。

それが9月29日までの第3四半期には、米国株が-6.85%、外国株が-11.92%、国内債券が+0.26%、外国債券が+0.15%、不動産が-0.36%、商品市場が-15.76%となった。

参照:Cash is king. It’s better than stocks or bonds in 2015
http://money.cnn.com/2015/09/29/investing/cash-is-king-over-stocks-bonds/index.html?iid=hp-stack-dom
参照:After the market meltdown, this is the only asset that looks to be a survivor
http://www.marketwatch.com/story/sell-in-may-decision-to-dump-stocks-was-spot-on-2015-09-29

一応、米国の国内債券だけがプラスのリターンだが、例え値上がりが見込めても、短期間でしかない超高値圏なので、値下がりリスクに見合うリターンだとは言い難い。そこで、2015年は株式ファンドや債券ファンドへよりも、米MMFファンドへ最も資金が流入した。MMFファンドは、短期金利で運用するファンドで、値下がりリスクが極めて少なく、流動性が高いことから、投資の世界ではキャッシュと見なされている。つまり、現金は王様(Cash is king)となったのだ。

前回にMMFファンドへの資金流入が、株式ファンドや債券ファンドへよりも上回ったのは、1990年のことだ。調べてみると、1990年7月時点の米FF金利は8.0%もある。MMFファンドからは同等以上のリターンが期待できただろうから、リスク回避だけでなく、リターンとの見合いでも、現金は王様(Cash is king)だったのだ。

一方、モーニングスターによれば、米MMFファンドの2015年の平均リターンは0.01%でしかない。FF金利が過去9年もの間、ほぼゼロとなっているので、リターンもほぼゼロとなっている。リターンがほぼゼロならば、そこへの投資での見合うリスクはほぼ無限大と言えるかもしれない。資金を預けるということは、値下がりリスク以外のリスクも存在するからだ。

日本の銀行預金もほぼゼロ金利が長く続いているが、決済機能もあるので、投資運用商品とは見なされていない。リスクもリターンも、考えないことになっている。

その点、MMFファンドは投資運用商品だ。もっとも、現状のように他の投資物件が総崩れとなっているような時には、一時的な避難場所を提供する。投資家は1990年以降で最も投資を恐がっている。避難先のMMFファンドのリスクとリターンとを鑑みれば、空前とも言える恐怖感を示している。パニックだ。

私は、これも過剰流動性によるレバレッジの増加、ボラティリティの上昇だと見ている。米連銀は9月に利上げをするべきだった。せっかく米景気を立ち直らせた米連銀が、つまらないところで信認を低下させたように思える。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。