FXコラム

ピンチとチャンスは背中合わせ

【著者】

FXコラム|2014/08/18

私は拙著で、「ピンチとチャンスは背中合わせ」だと述べた。
(以下、「生き残りのディーリング・実践版」から引用)

私がかって機関投資家相手に為替や株や債券や、デリバティブといった金融商品をセールスしていたころ、顧客との何らかのトラブルは、逆に顧客と親密になれるチャンスでもありました。金融取引に小さなトラブルはつきものです。言った言わないから始まって、オーダー処理の不手際、商品の説明不足、受け渡しの遅れ、利配金が入らない、約束の商品を渡せないなど、運悪く、同一の顧客相手にいくつものトラブルが重なることすらあります。これはセールスとしてピンチなのですが、トラブルをうまく処理すると、ぐっと自分の株が上がるのです。当の顧客や上司から、信用して貰えるようになるのです。

トラブルには不可抗力的なものも多くあります。にもかかわらず、当たり散らす顧客もいます。腹も立ちますが、ぐっとこらえ、冷静、迅速に処理します。大仰に謝りもしなければ、言い訳もしません。ただ顧客が何を求めているかを聞き出して、できる限りのことをするのです。できないことは丁寧に説明して納得して貰います。トラブルから逃げないこと。この姿勢だけで、トラブルの大半はすでに解決しているといえるでしょう。

ピンチとは、それをどのように処理するかを試されるチャンスともとれます。また、チャンスを与えられたのに、活かすことができないと評価が下がり、一転してピンチを向かえます。つまり、ピンチとチャンスの違いは当事者が考えるほどには大きくないのです。ピンチとチャンスは背中合わせ、そして、そのもの自体が節目と言えるのです。節目では、そこでどう動くかで次の節目までの流れが決まるものです。

相場とは面白いもので、価格はただ上下しているだけなのに、持った自分のポジションの状態によってピンチにもチャンスにもなります。価格の上昇はショートの人にはピンチであり、ロングの人にはチャンスなのです。目の前にある価格を売るか買うかで、次の瞬間にはピンチにもなりチャンスにもなるのです。

すなわち、何事も自分次第で、ピンチにもなればチャンスにもなります。とはいえ、ピンチの時は何かがすれ違っています。自分が流れに乗れていないことが多いのです。こんな時にじり貧より一発逆転と大勝負するのは望み過ぎと言えるでしょう。チャンスがくるのを信じて待つ、忍耐が必要です。

世の中はとんでもないドラマであふれています。世界に紛争の種は、数え上げれば切りがないほどです。自然災害も頻発しています。世の中にはどうにもならない運命と戦っている人たちが大勢います。私たちが相場の上げ下げに一喜一憂するようなレベルではないのです。私たちがピンチだと思っていること、そんなものは取るに足りないことだといえます。損が出て慌てふためく、うまくいかなくて荒れる。損を取り返すために博打を打つ。損を隠す奴もいる。あまりにも世間が狭い。相場に不可欠な想像力の欠如としか思えません。

ピンチは私たちを試す試金石です。前向きに対処さえしていれば、すべてをチャンスに変えることができるのです。


(引用ここまで)

この本の出版は2007年の4月だが、その後の世界経済にも、私自身にも、多くのピンチが訪れた。実のところは、それらは本当にチャンスでもあったのだ。

世界経済にとって未曾有のピンチだったリーマンショック直後に、アメリカ株は大底をつけ、以来、高値を更新し続けている。また、大被害をもたらした東日本大震災は、貿易赤字による円安の流れをつくり、日本経済復活の一大要因となった。

日本経済にまだ震災の余波が残り、景気回復の芽が見えてなかった野田前政権の時に、消費税率の引き上げが決められ、安倍現政権が実行した。円安がなければと思うと、ゾッとする思いだ。景気の現況に対する見方は分かれるが、雇用市場が劇的に改善したことは評価されていいだろう。

何事も自分次第で、ピンチにもなればチャンスにもなる。政府のインフレ政策もまた、ピンチにもなればチャンスにもできるのだ。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。