中国の株式市場は政争の主戦場の1つ?

【著者】

中国当局は7月27日、株式市場の安定化に向け、株式の購入を継続する方針を示した。国内株式市場がこの日、8%超急落したことを受け、機能不全が市場全体に波及するリスクを回避する用意があるとした。また、「悪質な空売り」に関与した者には厳しく対処するとも警告した。28日の上海総合指数は一時5%以上下落したが、その後下げ幅を縮めている。

一方、海外の投資家は香港市場上場の上海企業の株式を、7月6日以降の上昇局面で、約76億ドル相当売り払っていたことが分かった。海外投資家たちは「中国の株式市場は、株式を自由に売り買いする市場ではなく、中国政府の政策ツールでしかない」と語っている。

参照:After Quick 8.5% Crash, Confusion Reigns in Chinese Stocks
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-27/after-quick-8-5-crash-confusion-reigns-in-china-s-stock-market

また、国家が経済を主導する中国では、株価の下落は経済政策への不信に繋がり、そのまま政府への不信に繋がりかねない。

2015年1月~6月に、中国上場企業の経営陣や主要株主といったインサイダーが、13年、14年の8倍にもなる月間平均800億元の自社株を売ったが、それらは官民の癒着、汚職撲滅を推し進める政府への「ノー」の意思表示だという指摘がある。汚職で処罰される政府高官の背後には、彼らと癒着していた企業インサイダーが多くいるはずだ。彼らのなかには摘発を恐れ、株式を現金化して国外逃亡を図ることと、政府への不信感の高まりを誘導することの一石二鳥を狙っている者がいるというのだ。仮にそれで政府が転覆すれば、逃亡を図る必要性もなくなってしまう。

政府の株価防衛策の1つに、そういったインサイダーたちに「自社株を買い戻せ」というものがあるが、その意味では、中国の株式市場は政争の主戦場の1つとなっているのかもしれない。

まともな資金運用の場として、中国市場には魅力がない。取引停止の株式が半数以上となるなど、投資した資金が回収できない可能性が高いからだ。急落は嫌気を誘うが、規制と買い支えで上昇させることも、健全な市場とは見なされない。ましてや、他国の政争に巻き込まれることを望む投資家は少ない。

CNBCは、中国への投資は「単純に、避けたほうが良い」と取り上げた。

参照:Investing in China ‘simply unsuitable’: Analyst
http://www.cnbc.com/2015/07/27/investing-in-china-simply-unsuitable-analyst.html

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。