消費減税による景気拡大が必要か?

第2四半期の成長率がマイナスとなった。菅官房長官は19日午前の記者会見で、「国内の経済状況は企業収益が過去最高水準であることや雇用所得環境の改善など、前向きな状況が続いていることに変わりはない」との認識を語った。物価上昇に賃上げが追いついていないとの指摘が出ていることについては、7~9月には夏のボーナス支給があることを指摘したうえで、「経済全体については前向きな状況がみられるため、景気は緩やかに回復していく」との見方を示した。

景気の足を引っ張った主要な要因は、個人消費の低迷と、輸出の減少だ。輸出の減少は国内要因とばかりは言えないので、今回は触れない。問題は消費性向が低下していることだ。原因に節約志向を挙げる人が多いが、志向とは何だろう?

志向とは、デジタル大辞泉の解説:
意識が一定の対象に向かうこと。考えや気持ちがある方向を目指すこと。指向。

大辞林 第三版の解説:
1)意識をある目的へ向けること。実現しようとして心がそのほうへ向かうこと。意向。指向。
2)(哲)意識がいつもある対象に向かっていること。

などと出ている。

相場を通して世界の政治経済をみていると、数え切れないほどの理不尽なことが、今現在の世の中で起きていることを痛感する。他国の政治や経済運営に憤りを感じてもどうすることもできないが、日本の政治や経済運営にも、納得できないことは多い。

一例を挙げると、インフレ政策と、消費増税を同時に行ったことだ。良いインフレとは、所得増がモノやサービスの価格を押し上げるインフレで、悪いインフレは所得増を伴わないインフレだ。これでは生活の質が低下する。それでも、インフレ政策が景気拡大につながり、所得増に結び付けば結果オーライなのだが、そこに消費増税を行ったために、すべてが台無しとなった。日本の経済政策は悪いインフレにつながるものだ。

ケインズは「株式投資は美人投票のようなものだ」と言ったようだ。これは相場のプロから見れば、間違った理解だ。株式市場は企業が資金調達を行う「事情」から発明されたものだ。資金の提供者である運用者たちも、それぞれに様々な事情を抱えている。そして、調達者も運用者も、実体経済と密接につながりを持ち、市場は基本的に万人に開かれている。閉ざされた空間で、嗜好で美人を評価するようなものとは根本的に違うのだ。

同じように節約志向を、意向や指向といった、気持ちの問題だと理解していると、いつまでも経済も相場も分からない。景気やインフレマインドが「気」の問題だと考えることも同様だ。無い袖は振れない。所得増なしのインフレと増税では、消費性向が低下し、景気後退に至るのは自然な動きだ。「気」だけではどうしようもないのだ。

「企業収益が過去最高水準であることや雇用所得環境の改善など、前向きな状況が続いていることに変わりはない」のは事実だが、以前にも増して海外要因が不透明となっている。ここは、消費減税により消費性向を高めて景気拡大を図り、ひいては税収増に結び付けることも、真面目に検討するに価するかと思う。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。