安倍首相の夢は、消費減税でしか叶わない!

自民党総裁再任が正式決定し、安倍首相は「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」に重点を置く、「新3本の矢」を打ち出した。

2012年12月の第2次安倍内閣発足で発表した「3本の矢」は、「大胆な金融政策」、「機動的な財政出動」、「規制・税改革を柱にした民間投資の喚起」により、経済を再生させるというものだった。

しかし、2013年10-12月期の実質GDPは前期比0.2%減、2014年4-6月期~7-9月期はそれぞれ2.0%減、0.3%減と2四半期連続のマイナス成長で、公式にリセッション入りとなった。2015年4-6月期も0.3%減と、異次元緩和や史上最大規模の財政予算を使っているわりには、どんなに贔屓目に見ても効果が出ているとは言い難い。また、「規制・税改革を柱にした民間投資の喚起」という3本目の矢は、どこか的を外れて飛んで行ったようだ。

企業収益の増加や、インバウンド消費などは、もっぱら円安効果だ。その円安も量的緩和以上に、天然ガス輸入の急増による円売り要因が大きい。

そこで、「新3本の矢」を打ち出したが、ここでも「子育て支援」、「社会保障」と、史上最大規模の財政予算を更に拡大する公算が大きい。

「強い経済」については、2020年までに名目GDPを、現状の2割増となる600兆円に拡大することで「戦後最大の国民生活の豊かさを実現させる」という。

2014年度の名目国内総生産は491兆円。うち民間最終消費支出が293兆円と59.7%を占め、うち家計最終消費支出が286兆円と58.2%を占める。

安倍首相はこの名目GDPを600兆円に拡大し、うち個人消費の比率を7割にまで高めたいとしている。つまり、現状の286兆円を490兆円へと7割増させたいとしている。

名目GDPと家計最終収支

1996年度の民間最終消費支出は287兆円だった。この年までの消費税率は3%だったので、マクロベースでの企業の売上は278兆円だったと考えられる。1997年度の民間最終消費支出は288兆円となったが、4月に消費税率が5%に引き上げられていたので、マクロベースでの企業の売上は274兆円に減少した。2014年度の民間最終消費支出は293兆円あるが、消費税率が8%なので、マクロベースでの企業の売上は270兆円でしかない。これが給与、原材料費などのコスト、所得税、企業年金などの原資となる。

原資が減れば、所得も税収も減る。3%の消費税が導入されたのは1989年4月だ。私は米ソ冷戦構造の終結が、日本の停滞期の始まりだと見ているが、消費税も同じ時期に導入された。これで日本の経済が回らなくなったのだ。

消費増税と税収

私は、「戦後最大の国民生活の豊かさを実現させる」というのは安倍首相の夢物語だと思う。夢を叶えるには、消費減税を行い、経済活性化の原資を増やす以外に方法はないと見ている。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。