FXコラム

原油価格下落で苦しむ国、喜ぶ国

【著者】

「なぜ、原油価格はこんなにも早く、こんなに下げるか?」との記事を目にした。理由は誰でも知っているいたってシンプルなものだ。米国が増産する一方で、欧州、中国などの需要が低下しているためだ。また、騒乱にも関わらず、中東諸国の減産がないことだ。

参考記事:原油価格の下落は続くか?
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/decline-in-crude-oil-prices-or-subsequent/

実際、OPEC12カ国の10月の産油量は、9月から日量5万3000バレル増え、日量3097万4000バレルと、過去14カ月で最大となったことが分かった。イラク、サウジアラビア、リビアが増産した。

原油輸出国の、それらの国の財政に成り立つ原油価格の損益分岐点をチャート化したものがある。例えば、イランの財政は原油価格が135ドルで成り立っているという(採掘コストではない)。ベネズエラは120ドル、ロシアは100ドルだ。このことは、それ以下に原油価格が下落すると、財政赤字が発生することを意味している。赤字の穴埋めに増産することは可能だが、それは更に原油価格の下押し要因となる。権力の維持を原油収入によるイスラム国を含め、米国の「敵国」は共通の大きな弱点を持っているようだ。

参照:These countries are getting killed by cheap oil (英字サイトです)
http://money.cnn.com/2014/10/30/investing/cheap-oil-prices-hurt-iran-venezuela-saudi-arabia/index.html?iid=HP_LN

原油価格

一方で、IEAの試算では、米国のシェール原油は80ドルを損益分岐点とする油井は4%程度、60ドルでも4分の3以上の油井が利益を出せると言う。また、米国はエネルギーの輸入依存度が10%程度に低下したとはいえ、まだ輸入国で、上記チャートにあるような原油収入に依存した国ではない。大消費国なのだ。ガソリン価格の下落は、消費減税に相当すると言われるほど、原油価格下落の恩恵は大きい。

日本やユーロ圏諸国、中国、インドなど、多くの国々は原油価格下落の恩恵を受けている。ファンダメンタルズ的、地政学リスク的には、原油の上値は重いと言える。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。