中国2015年の原油輸入が過去最高を更新

【著者】

原油価格急落の主因は、米国が仕掛けたロシア、サウジアラビアに対するエネルギー戦争だと言えるかも知れない。

12日のニューヨーク市場で、WTI先物が一時、12年ぶりに1バレル30ドルを割り込んだ。13日のロンドン市場では、北海ブレントが一時、1バレル30ドルを割り込んだ。ロイターはコメントで、OPECが減産しなければ、20ドルにも低下すると予想した。

「原油価格が1バレル=20ドルになるというのは、掛け値なしの予想だ。石油輸出国機構(OPEC)の加盟各国がさまざまな意見対立をいったん脇に置いて大幅な減産に合意しなければ、世界的な供給過剰の継続と中国経済の先行き不透明感の強まりを背景に、20ドルの局面が現実化してもおかしくない。」

参照:現実味増す原油20ドル、OPEC大幅減産の条件
http://jp.reuters.com/article/opec-nigeria-breakingviews-idJPKCN0UR0C020160113

原油価格が下落している理由は、上記のコメントにあるように、OPECなどが増産し続ける一方で、世界最大の原油輸入国、中国経済の減速により、原油需要が減退しているためだというのが、一般の理解だ。

資料を調べてみると、データは2013年までだが、世界の原油需要は堅調のようだ。

参照:堅調な石油需要

http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/part01/chapter02/section01.html#anc01
参照:世界の最終エネルギー消費量の推移
http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/data/pdf/3.pdf

もっとも、中国の景気後退はそれ以降で、原油価格が急落を始める2014年の後半からは、中国の原油需要も低迷しているはずだった。

ところが13日には、中国の2015年の原油輸入量が前年比8.8%増の3億3400万トン(日量約670万バレル)と、過去最高を更新したと報道された。原油価格下落が備蓄を促し、石油精製各社の需要を膨らませたという。12月には前月比21.4%増、前年比9.3%増の3319万トン(日量728万バレル)を輸入した。

中国は鉄鋼石輸入量でも2015年に過去最高を更新。銅の輸入量では過去2番目の高水準だった。価格が下がっているので、輸入金額は減っているが、量は過去最高水準なのだ。つまり、需要減を原油価格急落の主要因と見るのは、少し無理がある。

一方で、世界の原油生産は2003年から2013年までに11.8%増の917万バレル増加した。うち、オペックは610万バレル、19.1%増となっている。

参照:順調に伸びた石油供給
http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/part01/chapter02/section02.html

原油埋蔵量

参照:世界の原油確認埋蔵量、生産量、可採年数
http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/data/pdf/6.pdf

上記の表から、10年間で日量50万バレル以上増産した国々を抜粋した(単位1000バレル:*印はOPEC加盟国)。

2003年 2013年 増加量 増加率
米国        7,362 10,003 2641 35.8%
カナダ       3,003 3,948 945 31.5%
ブラジル      1,548 2,114 566 36.6%
アゼルバイジャン  308 931 626 203.2%
カザフスタン    1,111 1,785 674 60.7%
ロシア       8,602 10,788 2186 25.4%
イラク*      1,344 3,141 1797 133.7%
クウェート*    2,370 3,126 756 31.9%
カタール*     949 1,995 1046 110.2%
サウジアラビア*  10,141 11,525 1384 13.6%
アラブ首長国連邦* 2,722 3,646 924 33.9%
アンゴラ*     870 1,801 931 107.0%
中国        3,406 4,180 774 22.7%
世界計       77,640 86,806 9166 11.8%
OPEC        31,957 38,059 6102 19.1%

増加率のトップ3は、アゼルバイジャン203.2%増、イラク*133.7%増、カタール*110.2%増だが、増加量のトップ3は、米国264万バレル増、ロシア218万バレル増、イラク*180万バレル増となる。米国は増加率でもサウジアラビアの3倍近い、35.8%増となっている。

データによって数値が若干違うが、2014年、15年には米国がサウジ、ロシアを抜いて、世界最大の産油国になったという報道もあった。

ここでも、原油価格急落の主因をOPECの増産、特にサウジアラビアを名指しで非難する根拠は薄い。OPECでも、イラクなどは米国の事実上の支配下にあるからだ。

こうして見ると、原油価格の急落の主因は、米国が仕掛けたロシア、サウジアラビアに対するエネルギー戦争の様相を帯びてくると言えるかも知れない。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。