FXコラム

経常赤字の何が悪い? その4

【著者】

外国為替市場コラム|2014/03/28

「経常赤字の何が悪い? その3」
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/3-current-account-deficit-bad/

2013年通年の経常収支は3兆3061億円の黒字だった。貿易収支は12兆2349億円の赤字だが、所得収支が15兆5410億円の黒字で、差し引きでは経常黒字となった。

ここでの貿易収支とは、貿易・サービス収支の意味で、内訳はモノの輸出入である貿易収支が8兆7456億円の赤字、サービス収支が3兆4893億円の赤字となっている。日本の貿易収支は長年大幅な黒字で、輸出超による円買い需要が根っこの円高要因となってきた。2011年から日本の貿易収支は赤字に転換した。つまり輸入超になったので、円売り需要が勝り、円安要因に転じたのだ。

参照図:
Current account

一方、サービス収支は長年にわたってずっと赤字だ。特に、旅行と運賃のネット赤字が大きい。これは海外から日本を訪れる外国人の数が、海外に行く日本人よりもはるかに少ないからだ。これは、発展途上国に多く見られる傾向だが、日本の魅力がまだ海外に認知されていないというより、円高による割高感が敬遠されていたからだと考えられる。2011年の原発事故や、近隣諸国との領土問題でいったん落ち込んだ海外からの訪問客も、2012年終盤からの円安効果で増加傾向となり、2013年は初めて1000万人を突破、サービス収支の赤字幅も前年比で減少した。

ここで、貿易収支は輸出総額と輸入総額との差し引きで、必ずしも利益を伴う訳ではないが、海外からの訪問客は、国内の消費、サービス産業の利益となる。サービス収支の赤字幅が縮小し、黒字化することには実益があるのだ。これまでは、日本人の海外での消費がはるかに上回っており、1985年から2013年までの累積サービス赤字は133兆円にのぼる。これは、引き続き大きな円安要因となっている。

参照図:
Current account-2

こうして見ると、1966年からの貿易黒字の累積額248兆円の円高要因に対し、サービス赤字の円安要因は1985年からでも133兆円あるので、貿易・サービス収支ネットの円高要因は115兆以下でしかないことになる。

一方、円安要因である外貨準備高は、2014年2月末時点で1兆2882億ドルとなっている。つまり、長期的な円高、円安要因としての貿易・サービス収支と外貨準備高は概ね均衡がとれていると見ていいだろう。

矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。