経常赤字の何が悪い? その6・結論

【著者】

外国為替市場コラム|2014/04/01

経常赤字の何が悪い? その6
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/what-of-the-current-account-deficit-bad-part-5/

「経常赤字の何が悪い?」は月を跨ぐ連載になってしまったが、経常収支と為替レートとの関係がご理解頂けただろうか? ここにクロスボーダーの資金取引と経常収支の要点を繰り返しておこう。

1、 クロスボーダーの資金取引で、為替市場の需給が分かる。
2、 クロスボーダーの資金取引は、経常収支、資本移転収支、金融収支からなる。
3、 資本移転等収支は小さいので無視していい。
4、 経常収支は貿易・サービス収支と所得収支とからなる。
5、 第2次所得収支は小さいので無視していい。
6、貿易黒字は輸出超の意味で、必ずしも利益には結び付かない。
7、サービス収支の黒字は利益となる。
8、所得収支の黒字も利益となる。
9、金融収支は投資収支と外貨準備増減とからなる。
10、投資収支と為替レートの関連性は金利較差に表れる。
11、外貨準備による外貨保有は外貨レートの押し上げ効果を持つ。
12、収支フローは短中期の、累積額は長期の為替トレンドに影響を与える。
13、現状の円高要因は所得収支だけである。

参照図:
経常赤字

これらのことで分かるのは、経常赤字だけを取り上げて、日本が駄目になるとは言えないということだ。

貿易赤字になったのは、輸入超になったことを示している。このことは、外貨需要が増し、円安要因となったことを意味する。

ここで、円安は輸出企業のコストを引き下げ、利益水準の引き上げに貢献する。利益を人件費や研究開発費に回せるようになり、潜在的な競争力の引き上げに貢献する。また、円安は国際的にみたサービス価格に引き下げにつながり、サービス収支の改善に貢献する。共に、日本の利益につながるのだ。

通貨危機に至るようなボロボロになった経済でも、通貨危機による通貨安で一気に競争力を回復する。だからこそ、世界の通貨当局は恣意的な通貨安政策には神経質だ。サブプライムショックやリーマンショックなど、未曾有の危機時にだけ許される政策だともいえる。一方、通貨安の最大リスクはハイパーインフレだ。

このところの円安は、輸入増によるものなので、恩恵を受ける諸国も多く、文句のつけようがない。量的緩和も、世界経済の現状からみて許される政策だ。

所得収支は黒字、サービス赤字が縮小に転じ、貿易赤字拡大による経常赤字。それによる円安。そんな経常赤字の何が悪い?

矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。