原油価格の下落は続くか?

【著者】

米国のエネルギー消費が、2000年以降横這いを続けるなか、原油や天然ガスといったエネルギー生産が急増、エネルギー消費に占める自国生産の割合が過去30年平均の約60%前後から、70%超に伸びてきた。一方で、輸入への依存はピーク時2005年、2006年の30%超から、10%程度にまで低下した。米国の原油生産はすでにサウジアラビアを抜き、世界一となったとも言われている。米原油増産を主要因とした世界的な原油のだぶつきで、原油価格は長期的な下落傾向となっている。

oil-price

随分前、私が30代の頃の話になるが、某政府系金融機関の本部中堅幹部候補の集まりに呼ばれたことがある。先方は20人ほど、都心の高級住宅街にある同行の迎賓館のようなところに、私と債券アナリストとが招待され、酒食の席で為替や金利の見通しを聞かれた。

その時、商社を担当しているという先方の方から面白い話を聞いた。金の採掘コストはXXドルと、あたかも1つしかないように言われているが、実はタダ同然に近い野天掘りから、地中深くの極めて高コストのものまでバラつきがある。そこで産金業者は、常に市場価格を少し下回り、それなりの利益を確保できるところを集中的に掘っていると言うのだ。高いところはコスト割れで掘れないし、安いところで大きな利益を一時的に出しても、枯渇すれば事業の安定性が損なわれるからだ。

同じ事が、米国のシェール原油でも行われているようだ。米国では、原油価格が50ドル、あるいはそれ以下に下落しなければ、シェール原油生産の伸びが完全に止まることはないだろうと言われている。1バレル40ドルから60ドルの間では、生産拡大がゼロ近くにまで落ちるかもしれない。生産者がより生産性の低い油田を閉じるからだ。そして、シェール原油の採算レートは原油価格の下落と共に下がっていく。生産者がより生産性の高い地域での採掘に集中投資するからだ。

参照:This is the price that would kill U.S. oil production growth
http://www.cnbc.com/id/102094881?trknav=homestack:topnews:1

先のOPEC総会では、サウジの他、イラクなども若干ながら増産していたことが分かった。サウジはスウィング・プロデューサーと呼ばれ、原油価格維持のための生産調整を一手に引き受けてきた。最大量を生産しながら、なお拡大の余力を残しているためだ。しかし、米国が世界一となり、更に増産し続ける中で、サウジが減産しても、価格の下落は止まらない。サウジは減産と単価下落の二重の痛手を被るだけだ。

原油価格の下落で困っているのは、ロシアや、世界一の確認埋蔵量を有するベネズエラも同様だ。両者とも、経済に占める原油の割合が非常に高く、大きな痛手を被っている。両者ともに反米なので、米が減産する理由はない。また、テロリスト集団「イスラム国」の資金源も、年間8億ドルと試算される原油収入に拠っている。これらを考えると、原油価格の下落がしばらく続く可能性が高い。日本やユーロ圏にはプラスだろう。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点
矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。