FXコラム

ドル円と日本株のトレンドは変わったのか? その1

【著者】

ドル円と日本株の動きがおかしい。大変動の主要因は、世界各国の中央銀行による、10年間で4倍近くに膨れ上がった資金供給に対して、ゼロ金利、マイナス金利政策で資金の置き場がなくなっていることだ。

長らく続いた緩和政策により、設備投資が過剰となり、過剰生産がデフレを招いている。過剰設備による成長鈍化で株や商品は買い辛く、債券は買い過ぎて利回りが取れない。預金はマイナス金利。MMFは消滅した。そこに新たな資金が供給され続けているので、どうしてもボラティリティが大きくなる。

とはいえ、そういったボラティリティの大きさの陰で、トレンドには変化はないのだろうか? 世界はともかく、ドル円と日本株のトレンドくらいは、どうなっているかを知っておきたい。でしょう?

ここで、トレンドとボラティリティについて、簡単に解説しておく。タペストリー・プライスアクション(TPA)理論を学んだ人には復習となるので、再確認して頂きたい。

市場には大別すると、2種類の参加者がいる。投資家(実需)と投機家(仮需)だ。あなたも私も、市場で取引することでどちらかに属することになる。

トレンドとボラティリティー

もし、あなたが10年前にどこかの会社の株主となり、まだ株主で居続けるならば、あなたは投資家だ。10年前に最少単位株で買った株式でも、評価損益に関わらず持ち続けていたなら投資家だ。

しかし、そのあなたでも、2月半ばに買った株式を、3月初めに利食っていれば、その株式においては投機をしたことになる。

つまり、長期保有することが投資で、短期的な売買が投機だ。ポジションの保有期間に関することなので、市場で行われた売買については、必ずどちらかに属することになる。

専ら投資を行う人の代表格が、年金や保険だ。自社株の持株会なども投資だ。一方、投機の専門家がディーラーやデイトレーダーだ。個人のFXトレードも基本的には投機だと言える。つまり、短期的なキャピタルゲイン狙いの売買が投機なのだ。

では、長期と短期の線引きをどこに置くか? 厳密な区別はないが、TPA理論の言い出しっぺとして要求されるなら、1年としておく。つまり、1年毎との終値の変化に現れるのが長期保有の効果で、それがトレンドだ。そして、その間の上げ下げはボラティリティとなる。

ここで、投資(実需)としたのは、実需は売り切り買い切りで、決して買い戻し売り戻しを行わないからだ。売り切りを保有期間で表すならば、永遠の保有期間になる。つまり、毎年のトレンドを超えて、市場価格に影響を与え続けているのが実需だとなる。その影響を打ち消すのは反対方向の実需だけだ。

トレンドとボラティリティ

為替の実需は輸出入だ。輸出総額と輸入総額の差、いわば力関係を表したものが貿易収支だ。黒字では円買いが勝り、赤字では外貨買いが勝る。

株式の場合では、発行企業による資金調達が実需の売りで、実需の買いは創業時の株主だ。その他の株主は長期投資家であっても実需に準じる株主で、赤字が続くといつまでも長期保有の株主ではいてくれない。(続く

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。