FXコラム

ドル円と日本株のトレンドは変わったのか? その4

【著者】

ドル円と日本株のトレンドは変わったのか?【その3】

直近のデータに見られる円相場の需給関係には、どこにも円売り要因が見られない。日米金利差の拡大は、理論上は可能だが、民間企業の調達金利がマイナスとなることは、実際にはほとんどあり得ない。

仮に民間企業が利払いを受けながら資金調達ができたとすれば、応じた企業は、利益供与に問われる。株主への説明責任が生じる。利益圧縮の脱税操作の疑いをかけられることになる。もはや市場は最も合理的な場所ではなくなっており、民間企業のマイナス金利調達が起きる可能性は否定しないが、これが大きな流れになるとは思えないので、想定しても仕方がない。

つまり日米金利差は、米連銀の利上げでしか広がらない段階に入ってきた。あるいは、利上げがなくても、米国に景気加速やインフレ懸念が出てきた時だ。

そのように見ていくと、今回のドル安円高は、2011年からの円安トレンドの調整ではなく、トレンドの変換を示唆しているものになる。少なくとも、暗示はしている。

ここで、気になるのが、ドル円相場と日本株相場との相関関係だ。ドル円レートと日本株は相関性が高いのだ。ドル円レートがこのまま下げトレンドに入るとすれば、日本株も同様に下向くことが示唆されている。

日経平均とドル円

ちなみに、、安倍首相の登場は2012年12月からで、それ以前からドル円レートは上抜け始め、次いで日本株も上抜け始めている。ここには、そうなった事情がある。

まず、貿易赤字が円安トレンドに繋がり始めたこと。米国で2012年10月期に始まった、債券から株式への資金大移動だ。株式ファンドに資金が流入すると、資産配分で日本株にも割り当てられる。仮に10%だとする。ここで、円が10%安くなると、日本株の比率は9%に下がる。10%に戻すために日本株の購入を増やす。これが大量の資金で行われると、それなりの上昇幅となる。

アベノミクスと異次元緩和は、その上げを加速させたが、投機筋が膨らませた部分はすぐに調整されることになる。ドル円と日本株のレートを並べて見てみると、日本株の方が投機的で、上げ幅も調整幅も大きいことが分かる。

とはいえ、投機家は1年も2年もポジションを保有しない。年間の売買高に現れるような数値は、投資家のものであると考えていい。下に、日本株市場の投資主体別売買動向を掲げる。

投資家動向

右端の外国人の項目に注目して頂きたい。2007年夏のサブプライムショック、2008年秋のリーマンショックの影響を受け、外国人は2008年に日本株を売り越した。その後の4年間は債券ブームで、株式投資は低水準だ。2012年末から突然再開され、2013年は急拡大する。しかし、2014年は低水準。為替の調整分位しか買っていない。その間も株式への資金流入は続いていたが、増税後の日本経済は失速気味で、増やす気が起きなかったのかも知れない。そして、2015年からは売りに転じてきた。

個人は2016年に入るまでは、一貫して売り。昔からの保有株を売り続けたことが見て取れる。

事業法人の買いは、豊富な資金力を背景に、M&Aや自社株買いが広がったためだだろう。

銀行は売り続けている。日銀が、株式投資を促すために、マイナス金利を導入した後の2月は、年率7000億円ペースで売るなど、かえって売りを加速させている。

ここで円高が進むと、海外投資家の日本株比率が上がり、自動的に売り物が出ることになる。それだけではない、原油価格の下落に苦しむ大手の国富ファンドが株式全体では年間30~40兆円規模で売り始めているのだ。仮に日本株が10%だとすれば、ここからだけで3~4兆円の売りが出てくる。

では、矢口は日本株にベア(弱気)なのか? 正直に答えるなら分からない。次のデータがあるからだ。

中銀資産規模

2006年以降、世界の経済は約4割拡大している。その一方で、主要中銀の資金供給量は4倍近くに膨れ上がっている。米連銀こそ中断したが、日中は継続、欧州中銀も再開した。つまり、今後も資金供給は実体経済の10倍近いペースで増え続けるのだ。

どこが膨大なその資金を吸収するか、これまでは何といっても債券だった。しかし、もう債券からは利回りが取れない。マイナス金利導入で、短期金融市場が壊滅状態の国々も増えてきている。過剰設備下の設備投資に大きな期待はできない。これは貸出の伸びにも限界があることを示唆している。

商品が買われるかも知れない。不動産は本物のバブル化一歩手前だ。しかし、市場規模からして、何といっても株式だろう。

私は、ドル円と日本株の相関関係が崩れる可能性もかなりあると見ている。(終わり)

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。