注目PickUp

Doller Bulls waiting ー ドル再燃高はお預け ー

【著者】

世界の金融政策は米連邦準備制度理事会(FRB)が決める。9月に開催されたFOMC会合で、世界はその事実を再認識しました。

 9月のFOMC会合は極めてハト派色の強い決定をしました。その席で、イエレンFRB議長は、FRBの政策決定にあたっては、単にアメリカだけではなく、世界、とりわけ新興国市場を意識する必要があることを事実上認めました。

 8月後半には、中国の人民元切り下げをきっかけに世界市場は混乱に陥り、株価やコモディティ価格が乱高下しました。そして、FRBは非常に好調なアメリカ国内の景気や雇用情勢の改善よりも、海外情勢を配慮することで金利据え置きを決定しました。これは12月中旬のFOMC会合で利上げが決定される可能性が極めて高いことを意味します。その時点になれば、FRBが①金融政策の正常化を遅らせるしかない状況に追い込まれている、あるいは②追加緩和、つまり量的緩和第4弾(QE4)の可能性が浮上しているかがはっきりします。現状では、前者の可能性が高いと考えています。

 2014年10月末にFRBが量的金融緩和の終了を決定して以来、新興国通貨は下げ圧力にさらされてきました。2015年第3四半期では、コモディティ価格の下落が続く中で、人民元の切り下げが発表され、世界市場は混乱に陥りました。新興国通貨の中でも、とりわけファンダメンタルズが弱く、大きく値下がりしてきたブラジル、ロシア、トルコ、南アフリカなどは、FRBが利上げを見送ったことで第4四半期にはかなり値を戻すかもしれません。

 しかし、今回のエッセンシャルトレードでは、新興国通貨を単に高ベータ・高リスクの投資対象として扱うのではなく、安定的なアプローチを模索したいと思います。それは、この夏の世界的な市場の混乱で過剰な下げ圧力を受けたものの、それぞれのファンダメンタルズは他の新興国通貨よりずっと健全に見える通貨への投資です。その通貨とは、メキシコ・ペソとポーランド・ズロチです。

 ただし、円高やユーロ高が行き過ぎれば、各通貨の上昇を抑制するために日本銀行と欧州中央銀行(ECB)が追加緩和を行うことが当然考えられます。そうなれば、結局ドル高への流れを助長することになりますし、おそらく新興国市場にさらなる安堵をもたらすでしょう。

 中国の外国為替政策からは第4四半期も目が離せません。中国は8月に人民元を切り下げましたが、それが海外への資金流失を引き起こしたため、巨額の外貨準備を使ってあわててドル売り・元買い介入に出ました。中国は管理フロート制を採用しており、今のところ、人民元は管理」されていることを強調させて下さい。今後、中国が人民元をどの程度のペースで、どこまで切り下げるかが第4四半期のワイルドカードになるでしょう。

新興国通貨にスポットライトを

 2014年10月末にFRBが量的金融緩和の終了を決定して以来、新興国通貨は下げ圧力にさらされてきました。2015年第3四半期では、コモディティ価格の下落が続く中で、人民元の切り下げが発表され、世界市場は混乱に陥りました。新興国通貨の中でも、とりわけファンダメンタルズが弱く、大きく値下がりしてきたブラジル、ロシア、トルコ、南アフリカなどは、FRBが利上げを見送ったことで第4四半期にはかなり値を戻すかもしれません。

 しかし、今回のエッセンシャルトレードでは、新興国通貨を単に高ベータ・高リスクの投資対象として扱うのではなく、安定的なアプローチを模索したいと思います。それは、この夏の世界的な市場の混乱で過剰な下げ圧力を受けたものの、それぞれのファンダメンタルズは他の新興国通貨よりずっと健全に見える通貨への投資です。その通貨とは、メキシコ・ペソとポーランド・ズロチです。

メキシコ・ペソ(MXN)

 「たらいの水と一緒に赤子を流すな」という諺がありますが、メキシコ・ペソ(以下、ペソ)は、その他の新興国通貨(たらい)と一緒に流された赤子です。新興国通貨の中では最も流動性の高い通貨の1つであることから、流動性の低い新興国通貨の代理として、いわゆるプロキシートレードによく使われます。そのため、新興国通貨の中でも過剰な売り圧力に曝されることが多いわけです。

 そのことは、第4四半期に新興国通貨が値上りに転じれば、ペソが強いリバウンドを見せる可能性が高いことを意味します。ペソの基礎的条件を見ると、メキシコの経常収支は原油価格の下落にもかかわらず若干の赤字にとどまり、悪化の兆しは見られません。メキシコの強みは、輸出の67%が景気上昇中のアメリカ向けだということです。名目金利から物価上昇率を差し引いた実質金利は、最近のペソ安にもかかわらずインフレ率が下がってきたために、プラスに転じようとしています。メキシコ銀行(中央銀行)がFRBと足並みを揃えて利上げを行なえば、ペソのさらなる下支えとなるのは間違いありません。

ポーランド・ズロチ(PLN)

 中東欧通貨の動きと新興国通貨全般の動きの相関性は、かつてと比べるとこの数年間で非常に薄れてきました。これは、中東欧の「ビッグスリー」通貨といわれるポーランド・ズロチ(以下、ズロチ)、チェコ・コルナ(CZK)、ハンガリー・フォリント(HUF)が、程度の差はあれ、ユーロ(EUR)とのコンバージェンストレードに用いられるようになったためです。

 ポーランドの経済ファンダメンタルズは堅実で、外貨準備も豊富です。政策金利は1.5%ですが、インフレ率が14カ月連続マイナス(8月現在)で推移しているため、実質金利はプラスとなっています。EURPLNは、今後数カ月以内に、ユーロ売り・ズロチ買いのキャリートレードが再び勢いを取り戻す可能性があることから、1ユーロ=4.00ズロチに戻ると予想しています。

 リスクは、ポーランド政治の行方です。10月25日投票の総選挙で最大野党「法と正義」が予想どおりに勝利して、政権につけば、ポーランドの金融機関は未回収分のスイス・フラン建て住宅ローンの損失処理を迫られる可能性があります。ポーランドでは、金利が低水準で安定していたフラン建ての住宅ローンが組まれてきましたが、その後のフラン急騰で返済不能に陥る借り手が続出しました。損失処理は1回限りで、緩やかなものになると見られています。

新興国通貨取引に一工夫

 外国為替取引では、メキシコ・ペソ(MXN)はほとんど対米ドル(USD)、そしてポーランド・ズロチ(PLN)はほとんど対ユーロ(EUR)で取引されています。ペソとズロチの値上がりを期待する場合、USDMXNはショート(ドル売り・ペソ買い)、EURPLNもショート(ユーロ売り・ズロチ買い)というのが一般的な選択です。ここで、これらの取引方法に一工夫加えることをお奨めします。それは、ユーロ(EUR)と人民元(CNH)を含む通貨ペアで取引することです。ペソの場合はEURMXNとCNHMXN、ズロチはCNHPLNとなります。

 キャリートレードについても注目する必要があります。新興国通貨が値上りする環境は、キャリートレードに最適です。市場参加者が第4四半期にリスク選好度を再び高めれば、ユーロが窮地に追い込まれるのは必至です。サクソバンク予測チームは、FRBが金融引き締めの開始には極めて慎重な姿勢を維持することに対して、ECBは金融緩和政策を維持し、ユーロ圏のインフレ率=8月改定値は0.1%上昇=が早々に上向かなければ追加緩和もあり得ることを示唆すると見ています。

 中国については、中国人民銀行(中央銀行)が8月11日に人民元の対ドル相場を切り下げると突然発表したために、市場は大混乱に陥りました。しかし、急激な人民元安が生じたことから、当局は次に人民元を買う大規模な市場介入を余儀なくされました。管理フロート制を採用している中国が人民元切り下げの動きに出たことは、今後数四半期の間に他の新興国通貨に対する人民元相場の「平均回帰」が起こる可能性があることを示唆しています。

 上述のとおり、新興国通貨の上昇トレンドの可能性が高まる中では、値上りが期待できる新興国通貨を買い、ユーロあるいはオフショア人民元(CNH)を売ることが賢明です。特にオフショア人民元との通貨ペアがお奨めだということを再度強調しておきます。

G10通貨の第4四半期見通し

通貨 G10通貨の第4四半期見通し
米ドル(USD) 米ドル上昇の再燃は一時お預け。しかし、好調な経済指標は、FRBの利上げタイミングが後手に回る可能性を示唆。そうした中で、第4四半期半ばにはドル再上昇見通しが強まる可能性がある。
ユーロ(EUR) 市場のリスク選好度が低下すればユーロに有利。ユーロ高傾向が強まればECBは積極的な金融緩和で対応する見通し。
従って、成り行き相場が続く見込み(徐々にユーロ安へ)。
日本円(JPY) 日本銀行が、インフレ目標達成が絶望的になったことを認めるとともに、円安の賃金(消費)への影響はコモディティ価格下落によって緩和されるとして、追加緩和に踏み切るかどうかが注目点。
英ポンド(GBP) 「米ドルの低ベータ版」と揶揄されがちのポンドの対米ドル相場は、第4四半期、上昇より下落の可能性のほうが高い。
スイスフラン(CHF) スイス・フランは第3四半期、もはや安全通貨ではないことを自ら証明。対ユーロ、対米ドルともさらなるフラン安が予想される。
豪ドル(AUD) 対中輸出への依存の高さが引き続き懸念材料。
従って、豪ドル反発でも上昇の余地は限られる。
カナダドル(CAD) 国内の景気悪化を食い止めたいカナダは、アメリカの景気のさらなる上昇を願い続けている。コモディティ通貨(資源産出国通貨)を取り巻く環境の改善を待つのみ。
NZドル(NZD) 政策金利が6月以来3回連続で下がり、NZドルのさらなる下落が予想される。数年間続いた高値圏からは大きく下げてきたが、2009年の底値までにはまだ至っていない。
スウェーデンクローナ(SEK) 6月半ばの安値を抜けた後、8月にダブルトップが出現したスウェーデン・クローナ。9月後半再び上昇傾向にあるが、今以上の高値は、リクスバンクが警戒感を強めるものと見られるため、見込まれない。
ノルウェークローネ(NOK) ノルウェー・クローネは特に他のコモディティ通貨に対して大きく売られて大幅に下落。想定外の地政学上の混乱が発生しない限り原油価格が一気に上昇に転じる可能性はなく、回復も遅いと予想。

Q4-2015

サクソバンク証券株式会社

サクソバンク証券株式会社

サクソバンクは1992年にデンマークのコペンハーゲンで設立された投資銀行です。数々の賞を獲得してきたオンライントレードツール「SAXOTRADER」の開発と、独自のビジネスモデルにより、プロの機関投資家から常に高い評価を受けています。 180カ国以上の顧客にサービスを提供し、トレーダー、投資家の真のグローバルパートナーとして設立された投資銀行です。