外国人に免税、日本人には増税

【著者】

2014年10月1日から、外国人旅行者らが日本国内で購入した商品の消費税を免除する制度が拡充された。これまで対象外だった飲料品や化粧品なども免税されることになった。円安の恩恵も受ける海外からの大量の訪日客が見込まれ、旅行収支の改善に寄与しそうだ。

私はこれを日本経済にとって良いニュースだと思うが、これがどうして良いニュースなのだろか?

消費税を免除すれば、それこそ減税以上に税収が減る。2割、3割の円安の恩恵を得ている外国人観光客から、税収増を期待するどころか、免税という更なる恩恵を二重に与えることになる。

それでも、私はこれを日本経済にとって良いニュースだと評価している。なぜなら、免税に刺激されて旅行者が日本で落としてくれるカネが、内需産業を大きく刺激すると思われるからだ。小売り店などの売り上げが伸び、収益が上がれば税収増となる。雇用も拡大し、社会保障負担が減り、職を得た人たちからの税収も年金支払いも期待できるようになる。得するのは外国人観光客ばかりでなく、日本経済なのだ。

おそらく、そういうことが分かっていて、免税枠を拡大したものと思う。外国人におもねる政策ではないだろう。ところが、その同じ政府が、日本人に対しては、消費税率の再引き上げに前向きだ。

外国人観光客が円安の恩恵を受けているとすれば、日本人は物価高の弊害を受けている。そこに消費税率が引き上げられて、更に可処分所得が減少している。円安のおかげで、雇用の拡大や、名目所得増が見込まれるようになっているのに、増税のせいで実質所得が減少している。おかげで、小売りや内需関連も盛り上がらず、かえって税収増も期待できなくなってきている。

消費税をめぐって、外国人には減税、日本人には増税と、全く方向性の違う政策が採られている。政府が外国人への減税に効果があると見るのなら、日本人への減税は、はるかに大きな効果が期待できると賛同できるはずだ。

外国人は旅行先を選べるので、免税で魅力的にする必要があるが、日本人には選択肢という逃げ場がないので、いくらでも増税できると考えているのなら、経済効果的には間違いだ。

外国人観光客が日本を訪れるのは、「意欲」だ。意欲には必然性がない。一方、日本人が日本で生活するのは「事情」だ。可処分所得が減れば、消費が減る。可処分所得が増えれば、消費が増え、景気拡大、税収増に結び付く。事情を変えれば、経済も相場も変わるのだ。

経済効果を無視した消費税をめぐる政策の二面性は、単に、弱い者いじめの政治だと言われても仕方がないかと思う。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。