FXコラム

ECBの利下げは為替政策

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FXコラム|2014/09/09

先週、欧州中銀は政策金利を0.15%から0.05%に引き下げた。中銀預金金利をマイナス0.1%からマイナス0.2%に、限界貸付金利を0.4%から0.3%に、それぞれ0.1%ずつ引き下げた。また、資産担保証券とカバード債の買い入れを通して量的緩和を行うと発表、少なくとも7000億ユーロ相当をユーロ圏経済に供給し、ECBのバランスシートの規模を2兆7000億ユーロへと拡大する方針を示した。一方で国債購入は避け、ドイツとの対立を先送りした。

参照:Draghi Sees Almost $1 Trillion Stimulus With No QE Fight
http://www.bloomberg.com/news/2014-09-04/draghi-sees-almost-1-trillion-stimulus-with-no-qe-fight.html (英字サイトです)

ECBが、日米英などの中銀のように、国債購入を躊躇っているのは、ECBが1国の中央銀行ではないからだ。参加国の経済規模、国債市場の規模が極端に違う上に、信用リスクも大幅に違うので、同じ比率で一律にというオペレーションすら困難だ。特に市場規模が大きく、信用リスクが低い上に、インフレリスクに敏感なドイツは国債購入という形の量的緩和を受け入れないでいる。一方、国債購入でないと、量的な限界が当初から明らかなため、その効果を疑問視する向きも多い。

ECB理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は、ECB利下げ決定の理由の一部は、ユーロ相場を低下させることだったと述べた。「外国為替相場に影響を与えることが大きな目的だった。実際、影響はすぐに表れた。これは長続きするとみている」と述べ、欧州の輸出部門は非常に明白な安心感が得られるとの考えを示した。ユーロは1年2カ月ぶりに1.30ドルを割り込んだ。

低金利通貨調達、高利回り運用を行うキャリートレードの定番は、長らく円キャリーとスイスフラン・キャリーだった。リーマンショック以降の低金利政策で、米ドル・キャリー、ユーロ・キャリーも増えてきた。米ドルは今後の巻き戻しでドル高方向だが、ユーロ・キャリーはしばらく続きそうだ。ユーロ・ドルは1.20の方向かと思う。

ドル円は日米の緩和時期のズレ、貿易赤字による円売り需要などで、中長期トレンドはドル高円安だ。短期的にはポンド安もあり、保合を上抜け、ドル高に勢いがつき始めた。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。