ユーロに降りかかるテロ対策の難題

【著者】

欧州各国がユーロを導入した目的は、欧州内に今も存在する国境の壁を低くするために、まずは通貨・金融政策の統一を図ろうとしたものだった。

国際金融のトリレンマというものがあり、他国との自由な資金移動と、固定通貨と、独自の金融政策の3つは、同時には存在できないとされている。

例えば、日本を含む多くの国々は、自由な資金移動と各国独自の金融政策を確保するために、通貨の固定相場制を放棄した。

ユーロも同様で、ユーロ圏と域外とは、自由な資金移動と欧州中銀独自の金融政策を確保するために、固定相場制を放棄、ユーロ円、ユーロドル、ユーロポンドなどの自由な変動を許容している。

一方で、ユーロ圏内では、ユーロという単一通貨と、自由な資金移動を維持するために、各国独自の金融政策を放棄した。

このことで、スペインやアイルランドは、米サブプライムショックが引き起こした住宅バブル崩壊に苦しんでいた時にも、独自の金融政策を放棄していたために利下げが出来ず(ドイツのインフレ懸念を優先した欧州中銀は逆に利上げした)、傷口を大きく広げる結果となった。

それでも、ユーロ導入によって国境の壁が低くなったことで、資金移動だけでなく、人やモノの移動の自由度が高まった。東欧、中東やアフリカなどからの移民も増えていた。マイナス面だけでなく、プラス面もあったのだ。しかし、近年は増え続ける難民対策の一環として、一部締結国に国境審査を再導入する動きが出てきていた。

そこに、パリでのテロが起きた。

欧州委員会のユンケル委員長は欧州議会で25日、「シェンゲン協定は欧州の構造の土台の1つである」とし、「同協定が崩壊すれば単一通貨ユーロは意味を持たなくなる」と警告した。「シェンゲン協定」とは、欧州26カ国が締結する国境検査なしで自由に往来できるという協定で、ユーロ圏19カ国、EU加盟国のうち22カ国が締結。残りの4カ国はEU非加盟国となっている。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。