ユーロはどこまで行くか?

ユーロドルが大きく反発している。先週、先々週と12年来の安値となる1.05を割り込んでいたが、火曜日には1.10台にまで買い戻された。1.00のパリティを見越して売り込んでいた投機筋ショートカバーを強いられている。ユーロ圏の景気指標の上向きを好感した動きだといえる。

一方、ゴールドマンサックスは6月には1ユーロ1.02ドル、9月にパリティ、2016年3月に0.95ドル、2017年は0.8ドルという見通しを出しているようだ。

ここでFXを取引する人が、常に心掛けていなければならないのは、中長期の見通しと、短期、あるいは短中期の見方とは、全く別物だということだ。同じユーロドル、同じファンダメンタルズなのに、全く別物というのは、どういうことだろうか? 横と縦の違いだと理解していて貰いたい。

これは私が提唱しているタペストリー・プライスアクション理論に詳しいのだが、こう書くだけで、難しいのは嫌だと敬遠しないで頂きたい。簡単に要点だけを解説する。

相場には大別すると2種類の参加者がいる。1つ目は実需や投資勘定の参加者で、買ったものはもう売り戻さないか、長い期間売り戻さない。例えば、天然ガスを買うには、まず米ドルを買うのだが、そのドルは天然ガスの購入に充てられてしまい、売り戻そうにも既に持っていない。または、年金による米5年国債への投資は、基本的に5年間売り戻さない。一方で、実需や投資勘定は扱う金額が決まっており、買い上げたり、売り下げたりはできない。チャートは横軸が時間で、縦軸が価格なので、こういった時間に強く量が限られた売買は、横の動きで中長期トレンドに関与する。

2つ目はいわゆる投機筋だ。バンクディーラー、ヘッジファンド、FXトレーダーなどだ。彼らはレバレッジ次第で大きな金額を扱えるが、買ったものは売り戻し、売ったものは買い戻す。こういった量に強く時間が限られた売買は縦の動きとなる。価格波動やボラティリティに関与する動きなのだ。

つまり、ゴールドマンサックスの見通しは中長期トレンドの見通し、先週来のユーロドルの買戻しは投機筋による短中期的な動きだ。ここで、中期が重なっているところに、スウィングトレードの難しさと醍醐味とがある。

目先、どこまで戻るかは、チャートが手掛かりとなる。2月の戻り高値からの短期的な見方では、半値戻しで、ここで止まるとは断定できない。12月の戻り高値からの短中期的な見方では、下降トレンドラインに当たったところで止まっている。どちらも、クリティカルなところまで戻しているので、1.10台をきちんと抜ければ1.16位までの反発。そこも抜ければ、何しろ1.39台から下げ続けてきているので、かなりの戻しが予想できる。反対に1.10台をきちんと抜けなければ、再び1.05割れを試すことが予想される動きだ。

ユーロドル

中長期トレンドでは、米欧の金融当局の政策の違いがしばらくは大きな影響を与えそうだ。ゴールドマンサックスの見方に、殊更、異を唱える理由はない。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。