ユーロ高に怯える欧州

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外為コラム|2014/04/15

欧州中央銀行のドラギ総裁は、「為替相場は政策目標ではないと常に伝えてきたが、物価の安定と成長率にとって重要な側面だ」と指摘、過去1年のユーロの上昇が、ユーロ圏のインフレ率が現在の水準に低下した重要な要因だとし、ユーロがさらに上昇した場合、追加の金融緩和が必要になるとの見解を示した。

ユーロの対ドルレートは、2008年7月の1.60台から、10月には1.23台まで急落した。その後1年かけて1.50台まで戻したが、2010年7月には1.18台まで下落。以降は、高値を切り下げ、安値を切り上げる中長期の三角保合の動きで、直近は1.38台、レンジのほぼ真ん中だ。ユーロ円は円の動きもあり、2008年7月の170円台から、2012年7月の94円近辺にまで下げ、以降は140円台にまで戻している。

欧米諸国はドル円が1985年の260円台から、2012年の75円台に下落する間も、日本に対する容赦はなかった。1995年に日本当局の大量の円売り介入により、80円割れから150円近くにまで反発したことがあったが、それは強いドル政策に沿ったものでもあった。私などは日本の長引くデフレや、企業の競争力の低下の主要因を円高に見ていたが、日本の識者の主な論調は自虐的に自分を責めることが多く、そのためか更に自信喪失で競争力を失った。

euro

欧米諸国と、欧米が主導権を握る国際機関は、通貨が持つ威力の大きさを過小評価したことはない。為替レートは常に多国間の利害がからむので、国際政治・経済競争の最前線だ。実際の圧力だけでなく、情報戦も凄まじい。円安の弊害を唱える論調は、欧米の利害と一致した論調なのだ。

たかだか、レンジ内でのユーロ高で、デフレ気味となり、競争力が低下しても、欧州中銀は更なるユーロ高に怯えている。私などは、この程度の通貨高で怯えるのかと思ってしまうのだが、それが国際政治・経済競争の最前線でのあるべき姿なのかもしれない。日本の当局には、ドラギ総裁の姿勢を教訓に、負けずに頑張って貰いたい。

矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。