Q&A:「東芝」の不適切会計処理について

【著者】

このことについて、私自信は株式所有をしていなかったことで一安心ですが。日本の一流企業である東芝で、このような事実があることにびっくりするばかりです。個人株主は、株式購入際の大きな判断基準が、会社の業績を一番大切にするはずです。

マスコミの報道についても、「不適切会計」という報道ですが、私は、経済犯罪だと考えます。経営トップ等の指導によってなされていたとの報道で、投資家は何を信じてよいのかわかりません。

東芝内部の取締役会・監査委員会は、長年全く機能していないわけです。不正を行った幹部は辞任するとのこと、このような確信犯については。刑事罰などはなされないのでしょうか。一部報道によればれ東京証券市場においても、上場廃止はないようです。このような、不正を行う会社が市場から退出することなく、投資家の一部が買い上げて株価が上昇するような異常なことがあるわけで、海外の投資家や一般の個人投資家はあきれるばかりでしょう。

アメリカでは、株主訴訟を起こされ多大な損害を請求されるであろうと思いますので、多少溜飲がさがるような気がしますが。先生は、このような事例に行政等や個人投資家はどのように対処すればよいと、お考えでしょうか。

:アメリカでも不正会計はしばしば発覚しています。不正が見つかると、経営陣は損害賠償を請求されるだけでなく、長期間、刑務所にも入ります。不正会計は、中国では死刑にもなる重罪です。

一方、東芝の田中社長は「私としては不適切な会計処理を指示したという認識はない」と弁明しました。これは、刑事罰や民事訴訟を恐れての、弁護士と相談の上の発言かと思いますが、責任を取らない(=誰かに責任を押し付ける)最高経営責任者の下で働く従業員たちにとっては、遣り切れない思いでしょう。

数日で100億円や300億円という利益を出させながら、どうやって利益を出したかをチェックもしないようなことはあり得ません。前任者たちが始めた不正会計ならば、自分自身が直接に担当でもしていない限り、次期社長になれる確率は低いと思います。もし、クリーンな人が次期社長になり、不正会計を見つければ、前任者を追い込む可能性が高いからです。つまり長年の間、東芝のトップ経営陣は「ぐるみ」で、不正に手を染めていたと考えていいでしょう。

操業140年、日本を代表する名門企業の1つである東芝での、こういった不正会計に驚かれるかもしれませんが、バブル崩壊後の日本の企業には「見慣れた光景」の1つでもありました。

当時は、いわゆる財テクに失敗した企業が輩出し、何とか損失を隠したいと、「飛ばし」という不正会計が横行していました。企業の「飛ばし」に協力したのは証券会社で、困った企業の足元を見た極めて高収益なビジネスとなっていました。その頃の花形は、そういった事業法人相手の営業マンで、リスクなしでの高収益ですから、リスクを取らねば儲けられないディーラーを下に見る連中さえいたのです。東芝がその頃にはクリーンだったという保証はありません。

報道では、「利益至上主義」となっていますが、利益の上乗せのために不正を働くことは少なく、ハイテクバブル崩壊などでの、大きな損失の穴埋めに「飛ばし」を行った可能性が高いと見ています。儲けが小さくても社長ではいられるが、大損失では辞任が避けられないからです。つまり、東芝のトップ経営陣は「ぐるみ」で、操業140年にならんとする企業を私物化していたのです。

べき論を言えば、経営陣はもとより、東芝も何らかの処罰の対象とすべきでしょう。しかし、べき論を言い出せば切りがなく、国家、国民に大損失を与えた東電に比べればというような、不毛な問答になってしまいます。

個人投資家はどのように対処すれば良いかと問われれば、「清濁併せ呑むのが投資」だと答えます。東芝や一企業に限らず、国家や国際機関、スポーツ関連、芸術関連など、どこを見てもクリーンだと断定できる組織はほとんどなく、また、個人とて、私を含め、どこまでクリーンだと言えるのでしょう。

法律も、合法か違法かを問うだけで、善悪を問うものではありません。そうしてみると、人生も投資も一種のゲームのようなもので、ルール違反で処罰されることもあれば、うまく逃れることもあるというようなものかと思います。

「私自信は株式所有をしていなかったことで一安心」というようなことが、案外、一番大事なことなのかもしれません。「運」用という意味で。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。