☆欧州連合の未来はどうなる? -1-

【著者】

英国バッシング

ブレグジットをめぐり、世界のメディアの英国バッシングがものすごい。今後数年間でGDPを最大4.5%押し下げる。「グレート・ブリテン」の落日。長期没落の始まりなどという論評もある。
また、残留派には怒りや無力感が、離脱投票した人たちのなかには、「ブレグジット・ブルー(うつ)」が広がっているという話もある。

もっとも、英国批判のほとんどがデータに基づくものではない。概ねは漠然と衆愚政治の弊害などと言っているのだが、英国民のどこが悪くて、衆愚(愚かな民衆)と呼べるのかが明確ではない。何事にも、メリットとデメリットがあるので、デメリットだけを取り上げれば、確かに大きなダメージとなる。

移民を受け入れるべきだというのが論点ならば、英国に限らず受け入れに難色を示す国々が増えている。この点に関しては、少なくとも日本のメディアは英国を批判できない。他国を批判する前に、自国で働きかけることがいくらでもあるからだ。

民主的な国民投票を衆愚政治と呼ぶのなら、衆愚政治の反対語とは何か? 君主独裁政治? 官僚政治? 政治エリートによる政治? 世界には似たような政府があるにはあるが、メディアはそんなものを望んでいるのだろうか?

また、アンチEU政府の比率は、英国でよりも、むしろフランスやギリシャで高いとされ、フランスなどによる離脱ドミノを恐れているとも言われる。だとすれば、英国バッシングは、沈みかけの泥船からいち早く逃げた英国に対する、裏切られた思いや、羨望からきていることになる。とすれば、英国は目先の困難を承知で離脱できたわけで、これを衆愚政治とは呼べないだろう。

EUはもともと、第2次大戦の勝者と敗者でありながら共に疲弊し、戦後の米ソ対立の中で埋没することを恐れたフランスとドイツが、将来の統合国家を目指したところから始まった。当時は世界国家という考え方があり、国境をなくして1つの国になれば、少なくとも平和になれると思われていた。「平和と自由を欧州全体に広めるべきだ」、「欧州統合でしか世の中は良くならない」との理念だ。

「Imagine there’s no countries. It isn’t hard to do, nothing to kill or die for.(国家さえなければ、殺し合うことも、そのために死ぬこともない)。Someday you’ll join us, and the world will be as one.(いつか君とも一緒になれて、そして世界は1つになる)」

ところが、2016年6月23日の国民投票では、英国人の51.9%がEUからの離脱を望んだ。このことは一方で、48.1%の人がEU残留を望んでいたことになる。報道によれば、その多くは欧州統合を望んでいた。

では、離脱を決めた人々は、欧州統合を望んでいなかったのだろうか? そうとは限らない。欧州統合を望んでいても、統合がもはや現実的ではないとすれば、夢から醒める必要がある。また、どんなに素晴らしくても、実現性のない夢を追いかけることが大きな犠牲を伴うのなら、諦める必要があるのだ。

欧州連合の未来はどうなる? -2-

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。