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現在の金融市場の最大の懸念は、地政学的リスク?!

【著者】

FXコラム|2014/07/22

現在の金融市場の最大の懸念が、地政学的リスクとなってきた。ウクライナ情勢は、本来が東部の独立を求めるロシア系住民と政府軍との内戦なのだが、政府軍を公式にサポートする米欧と、独立派を陰にサポートしているとみられるロシアとの軋轢が拡大してきている。先週にはマレーシア航空の民間機がウクライナ東部上空で撃墜された。犠牲者298人中、オランダ人乗客が193人を占めたこともあり、怒りの矛先をロシアのプーチン大統領に向ける動きもみられる。

参照:犠牲者の国籍 (英字サイトです)
http://www.malaysiaairlines.com/my/en/site/mh17.html

撃墜を受けて、米連邦航空局は、米国の航空会社にかねてから上空での運行を禁じている国々(エチオピア、イラク、リビア、北朝鮮、ソマリア)の中に、先週ウクライナを加え、6カ国とした。また、小火器やロケット弾による攻撃のおそれがあるアフガニスタン、1998年に40人乗りのボーイングが反乱軍により撃墜されたコンゴなど、他の非友好的地域の上空を避けるように勧告している。加えて、エジプトやシナイ半島、イラン、ケニア、マリ、シリア、イエメンなどの国々の上空も、自国の航空会社に警告を発している。

fx-columm
参照:6 countries that U.S. airlines are prohibited from flying over

http://blogs.marketwatch.com/themargin/2014/07/21/6-countries-that-u-s-airlines-are-prohibited-from-flying-over/
(英字サイトです)

米オバマ大統領は、マレーシア航空機撃墜はロシア系住民の独立派によるものだとして、陰にサポートしているとみられるロシアのプーチン大統領を強く非難し、米欧による制裁を強化した。

一方、ブルームバーグは、プーチン大統領の政策がロシアの孤立を招いているとして、ロシアの事業家たちが懸念と恐怖を覚えていると報道した。
参照:Russian Billionaires in ‘Horror’ as Putin Risks Isolation
http://www.bloomberg.com/news/2014-07-20/russian-billionaires-in-horror-as-putin-risks-isolation.html (英字サイトです)

とはいえ、どの国でもそうだが、国家の指導者が国民全体の支持を得ているとは限らない。ロシア国内でも、プーチン大統領が影響力を発揮できる地域や分野ばかりだとは限らない。ましてや、ウクライナという他国に、ロシア系住民というだけで、内戦を終わらせるというような大きな影響力を発揮できるとは思えない。オバマ大統領がプーチン大統領に望んでいるのは、他国への強大な内政干渉なのだ。

プーチン大統領はウクライナのロシア系住民の独立を支持することも出来ず、かといって実質欧米勢力と戦っているロシア系住民を見捨てることも出来ないというジレンマを抱えている。そこに、オバマ大統領によるプーチン大統領いじめは、ロシア国内の反プーチン陣営を勢いづかせていることと思う。おそらく、オバマ大統領の真の狙いはそこにある。

一方で、ロシアのメディアは、マレーシア航空機撃墜はCIAによるものだと、報道したようだ。
参照:Russian media on downed airliner: The CIA did it
http://www.cnbc.com/id/101852656 (英字サイトです)

ウクライナ情勢よりも、あるいはもっと危険な地政学的リスクがパレスチナだ。先週のイスラエル軍侵攻後のガザの死者が540人超と、マレーシア航空機撃墜の犠牲者を大きく上回った。病院も爆撃され、医療関係者や患者に多くの死者がでた。米大統領は、即時停戦を求めているが、イスラエルを公式にサポートしているのは米国だ。米国に対するイスラム諸国の反発は根深い。

ロシアは米欧陣営から孤立させられてきているが、BRICSが共同の新開発銀行の設立を決めたように、必ずしも世界的には孤立していない。米国内でも、電力会社によるロシア産石炭の輸入が(おそらく訴訟覚悟で)急増している。

私はオバマ大統領が反プーチン大統領姿勢を強めているのは、米のスパイ活動を暴露したスノーデン氏を、ロシアが匿っているためだと見ている。ドイツがCIAの駐在官を国外追放したように、同盟国に加えられた亀裂に対する報復と、同盟関係の再確認のために、ウクライナ情勢が利用されているように思う。

ウクライナ情勢以前、あるいはスノーデン氏亡命以前と比べると、米ロの対立が深まっているだけでなく、両国共に孤立の度合いが高まっている。このような軍事面での両大国の対立は、どうしても地政学的リスクを高めてしまう。

現状の金融市場の最大懸念は地政学的リスクかと思う。一方で、世界的なカネ余りはまだ続きそうだ。何かの事件勃発で売られても、結局は株式、米ドル、いわゆるリスクオンの買い場となってしまうというのが、現状での私の見方だ。

みんなの株式に掲載されている矢口氏のコラムご覧ください
http://money.minkabu.jp/author/auth_yaguchi
最新記事:2014/7/14 「NISAとETF」
http:/money.minkabu.jp/45617

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。