注目PickUp

ギリシャ、7月5日に国民投票「金融支援の条件について」

【著者】

ギリシャ議会で28日、金融支援の条件について国民の意見を問う国民投票を7月5日に実施する案が、承認に必要な票数を大きく上回る賛成票を獲得した。チプラス首相は、国際債権団の「侮辱的な」支援条件を国民投票で拒否するよう国民に呼びかけた。緊縮策への反発は根強いものの、最新世論調査によると、ユーロ圏残留を望む国民は約7割。

一方、ユーロ圏財務相会合が30日に切れる現行金融支援の期限を延長しないと決めたことで、ギリシャがデフォルトや財政破綻に陥る可能性が急浮上した。国民投票発表から12時間で銀行預金が4億ユーロ引き出されたとの情報もある。

報道によれば、「国民投票は提案拒否を首相が正当化するのが狙い」、「首相は提案諾否の決断を民意に求めることで自らの責任を回避し、政治的生き残りを優先したとの見方が有力」とある。

とはいえ、国民の運命を決める決断を民意に託する点では、これ以上の民主的な方法が望めない国民投票を、このように矮小化する意図の方が問題ではないだろうか。同じ様に、最も民意を反映する住民投票が矮小化されたのはクリミアのロシア帰属に関する投票だった。このように民意が軽視されるのは、欧州の体制、NATO体制などにとって、不都合な真実だからだ。同じように民意で選ばれた沖縄県知事の言動が、一部の報道で矮小化されていることに似ているかもしれない。

ギリシャの離脱は、各国固有の経済政策が持てないというユーロ圏の問題を浮き彫りにし、次のギリシャを誘発しかねない。少なくとも見かけ上は着実に前進してきた「欧州統合」の長いプロセスの最初の躓き、逆行となる。また、離脱し見捨てられたギリシャが、仮にロシアと手を組むとすれば、欧州の大きな不安定要素となる。

一方、ギリシャにとっても、疲弊尽した挙句にユーロを離れることは1円も持たずに家出するようなもので、危険でもあり、前途は多難だ。しかし、居残ることは隷属的な地位と境遇を強いられることを意味する。出るも地獄、残るも地獄なのだ。もっとも、「支援を巡る話し合いで何が起きようと、1つ確実なことは、ギリシャはユーロ圏に留まろうが、離脱しようが、生き残るということだ。世界で最も美しい国の1つであり、恐ろしく戦略的な地の利があるので、ギリシャは世界有数の観光国として、また、どの国も同盟を組みたい国として留まり続けるだろう。」という、もっともな見方もある。

参照:Greece will survive, but will the euro or the EU?
http://www.marketwatch.com/story/greece-will-survive-but-will-the-euro-or-the-eu-2015-06-26
(英字サイトです)

7月5日の国民投票はギリシャ国民の民意であることを、国際社会が結果の如何を問わず尊重し、ギリシャの再建復興を協力的に見守ることを望んでいる。さもないと、地政学的リスクや、金融市場におけるリスクが拡大する可能性が高い。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点
矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。