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ギリシャの債務不履行は不可避?

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先週、英フィナンシャル・タイムズ紙は、ギリシャ政府は4月末までに債権団と改革案で合意がなければ、IMFに対する5・6月分の支払い凍結を計画していると報道した。IMFなどの国際機関はギリシャに対し、2010年以降2400億ユーロの支援を実施している。2015年2月には2度目の債務不履行が際どいところで4カ月間延期された一方で、先週の木曜には4億5000万ユーロがIMFに返済された。

ギリシャ首相府は報道内容を否定、「ギリシャ、債権団とも、いかなる形の債務不履行も準備していない。相互に有益な解決策に向け、交渉が迅速に進められている」と声明した。とはいえ、実情は予断を許さない状態だ。

ギリシャでは15日水曜日に発行額8億7500万ユーロの6カ月(178日)Tビル(短期証券)入札が行われる。翌16日にはIMFへの4億6000万ユーロの返済が支払期限を迎える。一方で、年金支払いや、公務員への給与支払い原資が枯渇しており、その分だけで4月中に24億ユーロが必要だとされている。

また、5月1日には2億0300万ユーロ、5月12日には7億7000万ユーロ、6月中には16億ユーロのIMFへ返済が支払期限を迎える。加えて、7月と8月には欧州中銀と、欧州投資銀行への返済期限が控えている。

ユーロのボラティリティを見ると、2週間物の価格が一番高く、市場は今月末に不安定な要素を見ていることになる。4月24日のユーロ財務相会議で、ギリシャが建設的な再建案を提示できるかを注視しているのだ。

上記のように、ギリシャでは毎週のように巨額の借入金が返済期限を迎え、6カ月物など短期の資金調達で支払いを行っている状態だ。借入金の返済には何らかの収入源が必要なはずなのだが、債権団は専ら歳出削減を要求している。つまり、実質的に年金支払いや、公務員への給与支払いを減らしてでも、借金を返せと詰め寄っているのだ。

この状態は今に始まったことではなく、アテネ・オリンピック、リーマンショックで悪化した財政が事実上破たんした2010年以降ずっと続いている。違いは、これ以上の緊縮財政は受け入れられないとしたギリシャ国民が、債権団と戦う政府を選んだことだ。

こうして事実だけを列挙すると、ギリシャの能力不足や怠慢、挙句の果ての居直りといった部分が強調されるが、金融政策を欧州中銀に握られ、財政政策を封じされてきた実情を鑑みれば、実際の経済政策を運営してきた債権団がこの状態を作り出したという見方も可能だ。ギリシャ側からすれば、命令通りに行ってきた結果が、国家存亡の危機に直面したのだ。ギリシャ側に落ち度があるとすれば、ユーロに参加して通貨金融政策を他国に委ねたことだと言えるかもしれない。

ユーロではドイツの一人勝ちと、しばしば指摘されている。特にリーマンショック後に雇用市場が劇的に改善し、株価が史上最高値となり、短期から7年までの国債がマイナス利回りとなっているところを鑑みると、確かに、ドイツが不満を述べる根拠が見当たらない。ギリシャ支援における資金調達も、マイナス利回りならば、調達運用共に収益となっている。また、為替リスクのないギリシャからドイツへの預金流入も巨額なものとなっている。

4月24日のユーロ財務相会議では、この状態で譲れるのは債権団の方だと見ている。つなぎ融資を続け、ギリシャの危機が長引いたところで、失うものはほとんどない。むしろ、ユーロ安、マイナス利回りが続き、ギリシャからの預金流出が続くという、見えない収益源の継続は莫大だ。

仮にギリシャのユーロ離脱があるとすれば、ポイントはロシアだろう。制裁以前のロシアは、西側との協調姿勢を鮮明にしていたが、制裁後に遠慮はいらない。ギリシャがユーロ離脱を望めば、強力な後ろ盾となるかと思う。

私はユーロから離脱した方がギリシャのためには良くなると思うが、なかなかそういった損切りはできないものだ。また、ロシアの後ろ盾は共に孤立する選択肢でもあるので、そこまで踏み切れないかと思う。

私は、ギリシャ、ドイツ、債権団が、つなぎ融資と歳出削減の妥協点を見出して、このままでギリシャの危機状態が続くと見ている。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。