FXコラム

自分の首を絞めた米ヘッジファンド

【著者】

トレンドは実需や長期投資による保有効果によりつくられ、ボラティリティは投機資金による時間制限のある売買によってつくられる。ここに金融緩和による低金利とカネ余りが出現すれば、どうなるか?

もともと量的な制限がある実需や長期投資には、それほどの影響は与えられない。これだけの金融緩和にも関らず、世界の貿易は縮小傾向ですらあるのだ。

一方で、レバレッジで勝負する投機資金には、低金利とカネ余りは追い風だ。このことは、金融緩和による過剰流動性は、ボラティリティの拡大につながることを意味している。詳しくは以下を参照して頂きたい。

参照:過剰流動性 → ボラティリティ拡大
http://aratayaguchi.web.fc2.com/151007CashnVola.pdf

ところが、このところ一時のボラティリティが見られなくなってきている。その理由としては、米ヘッジファンドの勢いが弱まっていることが挙げられる。彼らは過剰流動性の追い風を活かしきれず、レバレッジの拡大でむしろ自分の首を絞めてしまった感があるのだ。

米ヘッジファンド業界は現在2.87兆ドルを運用、9月末までの平均リターンは-1.5%となっている。第3四半期には運用資産を950億ドル失い、2008年第3四半期以来の大幅減少となった。

著名なファンドマネージャーたちが運用する、Pershing Square Capital Management の第3四半期の成績は-9.4%、Marcato International は-11.6%、Glenview Capital Management は-13.5%といった塩梅だ。Fortress Investment Group は今年-17%となっている。

また、ヘッジファンドなどにより8月に大量になされた米株の空売り残がまだ900億ドル相当残り、買い戻しを迫られているという観測もある。

参照:JPMorgan: The Stock Market Still Has $90 Billion in Short Sales Left to Cover(英字サイト)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-10-20/jpmorgan-sees-90-billion-of-short-covering-left-in-u-s-stocks

投資のプロがこの様だ。もともと小さな絶対リターンを、顧客リスクのレバレッジで大きくするような運用なので、大儲けもすれば、大損もする。相場の大敵は「欲と恐怖」だ。レバレッジはそのどちらをも高めるので、資金管理には十分注意して頂きたい。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。