FXコラム

所得税と消費税 -4-

【著者】

前回記事:所得税と消費税 -3-

法人税収は消費税が導入された平成元年度(1989年度)に19兆円のピークをつけた。そのことについて、前回は、売上から消費税分3%が天引きされたことにより、企業が人件費や利息、設備投資や研究開発費に回す分が減少し、縮小均衡が起きて法人税収や所得税収の減少につながったのではないかとの仮説を述べた。私は、その仮説が的を射ていると思っているが、法人税収の減少には、他の要因、この仮説よりももしかすると、もっと影響力のある要因があったことも分かっている。財務省のホームページの同じ場所に載っているので、見逃していた訳ではない。極めて興味深いグラフだ。

参照図:企業収益と法人税率と法人税収
企業収益

法人税率は消費税が導入された平成元年度(1989年度)の40%から段階的に引き下げられ、現在は25.5%にまで低下している。その結果、企業収益が落ち込んだ時に税収源となるだけでなく、企業収益が急回復してもそれほど税収が増えない構造となった。特徴的なのは平成13年度から18年度にかけてで、企業収益が42兆円ほど増えたのに、税収は8兆円足らずしか増えなかったことだ。

法人税率の引き下げは、企業の競争力を高めるためだというのが建前だ。確かに、この期間の日本企業は少子高齢化や労働人口の高齢化、そして円高による競争力低下という逆風下にあった。それだけではない。米国は、米ソ冷戦時には、極東の最重要パートナーとしてそれなりに優遇してきた日本を、1991年のソビエト連邦崩壊後は、経済的な目下のライバルとして見始め、多くの難題をつきつけてきた。その後の日本経済、日本企業が米国の最大のライバルから陥落した事実を鑑みれば、消費税の導入と法人税率の引き下げも、米国の日本経済潰しのための入れ知恵かと勘繰りたくなるくらいだ。

加えて、台湾、韓国、香港、シンガポール、ASEAN、そして中国の台頭により、日本企業は世界経済におけるその地位を下げていった。とはいえ、これらの国の台頭は、大きなビジネスチャンスの到来でもあったので、必ずしも逆風とみなすことはできない。順位を下げても、日本自体の経済成長が止まることの理由にはならない。

いずれにせよ、大幅な税制改革から20数年を経て判明した事実は、法人税率の引き下げで法人税収は減ったが、企業の競争力もまた低下し続けたということだ。少なくとも、消費税導入による悪影響を補うことはできず、経済規模は縮小し、税収は激減した。

法人税収の減少には、もう1つの大きな要因がある。欠損法人、つまり、税金を納めていない企業の増加だ。

参照図:欠損法人
欠損法人

欠損法人は全法人約260万社の7割以上、資本金1億円超の法人の約半分を占めている。そして、それは平成元年の税制改革直後から基本的には増え続けている。

このところの世界経済の低迷を、市場資本主義の敗北だと解説する人たちがいる。一方で、世界の主要国はほぼゼロ金利やマイナス金利政策という市場資本主義ではあり得ない政策を長く続けている。未曽有の量的緩和も、市場に任せる経済から、政府が主導する経済になったことを象徴している。つまり、市場資本主義は自ら崩壊したというより、大きな政府を望む各国の指導者たちに潰されかけている。

欠損法人が7割を超えることは、市場資本主義ではあり得ないことだ。それが長年生き続けていることは、ゾンビ企業を存続させる国の政策が行われていることを意味する。これがデフレの大きな要因であり、競争力低下、財政赤字拡大の1つの要因だ。そして、それを負担しているのが消費税であり、ほぼゼロの貯蓄金利であり、年金、保険の超低利回りだ。どれもが、個人が負担する部分だ。つまり、日本国民の負担はかってないほどに高まっている。

上記、欠損法人のグラフが今更ながらに教えてくれるのは、ゾンビ企業が増えるにつれて、日本が、日本人が貧しくなってきたということだ。このままでは、国も個人も破綻する。
(次回:所得税と消費税 -5-に続く)

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。