イエレンFRB議長の講演から見えたもの_8/25

【著者】

早期利上げの可能性は低いのでは?

注目されていたジャクソン・ホールにおけるイエレンFRB議長の講演は、結果から言えば思ったほどハト派でなかったことから、ドル買いが継続した、という事になりました。

実際の講演の内容はどうだったのでしょうか?主な発言内容を見てみましょう。

「現在の失業率水準は、労働市場に残るたるみの度合いを過小評価している」
「労働力の活用はなお極端に低い状態にある」
「パートタイム就業者がリセッション時から急増し、その後も減少ペースが鈍いことは、景気循環的な要因が大きいことを示唆している」
「総じて弱い総需要が、景気後退とその後の回復期における離職、雇用水準の低迷に大きく寄与している」
「たるみ評価は幅広い指標に基づく必要があり、労働市場の循環的、構造的影響について困難な判断を要する」
「労働市場の改善が「予想よりも速いペースで続いた」場合は利上げが現在の想定よりも早く実施され、追加利上げのペースも速まる可能性がある」
「逆に、完全雇用および物価安定の達成という当局の目標に向けた進展が期待外れな動きとなった場合は、政策は一層緩和的なものになる」

総じて新規の内容は見られませんでしたが、利上げ時期の前倒しと利上げペースの加速の可能性に言及したことで、予想よりもややタカ派的、との見方になったようです。しかし上でご紹介しましたように、反対のケースにも言及しているので、それほどタカ派的ということではなかったと考えています。

労働市場に関しては、相変わらず「たるみ」の大きさに注目していて、今後失業率以外の様々な経済指標を通じて「たるみ」がどの程度縮小するかを判断し、その結果によって利上げ時期や利上げペースを決定する、という事です。

私個人が注目したのは「労働参加率の循環的な低下は和らいだ可能性」「総じて弱い総需要」「景気循環的な要因が大きいことを示唆」などの文言です。

今早期利上げを主張しているFOMCメンバーは、労働市場の問題は構造的な問題(≒供給サイドの問題)であって、循環的な問題(≒需要の問題)ではない事から、異例の低金利を維持することにはメリットもあるがそれ以上にデメリットが多く、早期の利上げが必要、という主張が多くなっています。

しかし11日のフィッシャーFRB副議長の講演や、今回のイエレンFRB議長の講演を見る限りFOMCトップの2人は、現在の労働市場のたるみの問題は、構造的な問題もあるが、多分に循環的な問題(≒需要の問題)であることから、金融政策(需要サイドに働きかけるもの)にできる事は依然として多い、つまり利上げを急ぐ事はない、という考えではないでしょうか。

もちろんFOMCは多数決で、議長や副議長といえども、多数決に逆らうことはできません。しかしイエレン議長、フィッシャー副議長、ダドリーNY連銀総裁というトップ3がハト派的な見方をする中、年内で投票権を失うフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁やダラス地区連銀のフィッシャー総裁といったタカ派メンバーが主導権を握る可能性は小さいのではないでしょうか。

そう考えれば、米長期金利は当面低位安定となることが予想され、ドル円も今の上昇が続くのではなく、ややレンジを切り上げたとしても依然としてはっきりとしたトレンドのない相場が続くのではないでしょうか。

<本記事ご協力>

チーフストラテジスト 高野やすのり様
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高野やすのり|FXプライムbyGMO

プライスはすべてを織込む!チャートで世界を見通せ 高野 やすのり

慶應義塾大学商学部卒 チェース・マンハッタン、スイス・ユニオン、ファースト・シカゴなどでインターバンクディーラー業務に従事。 株式会社FXプライムbyGMO チーフストラテジストとして、長年培ってきた経験を生かし、インターネット上のコンテンツや、ラジオ、セミナーを通じて正しいFXの知識や、FXの魅力を広める為の活動を行う。 NPO法人日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト