パウエル議長発言の真意はどこに?

【相場材料】米国の金融政策
【ポイント1政策金利が「中立水準の幅広な推計レンジ」をわずかに下回るのは事実
【ポイント2】批判を強めるトランプ大統領へのけん制か
【ポイント3】様子見モード入りを意識した可能性も否定できず
【結論】次回12月のFOMCで明らかに!?

28日、NYでの講演でパウエル米FRB議長は、政策金利が中立水準をわずかに下回っていると述べました。市場では、この発言が利上げ打ち止めの接近を示唆したと受け止められ、米ドルが大きく下がりました。

パウエル議長の真意はどこにあるのでしょうか。

まず、上記の発言は、「金融の安定を監視する枠組み」と題する講演の冒頭で、議長が金融政策の見通しに軽く触れるなかで飛び出しました。

正確には、議長は「金利は歴史的にみれば依然として低く、経済にとって中立とされる水準の幅広な推計レンジをわずかに下回り続けている。中立とは、経済成長を速めたり、遅らせたりしない水準のことだ」と述べました。

パウエル議長は、10月3日の講演では「我々は中立を超えていくかもしれない。しかし、現時点では中立までもまだ遠い。恐らくは」と語っていたので、この2カ月弱の間に議長が利上げに慎重になったと市場が受け止めたのも当然かもしれません。

FOMCの資料(9月26日時点)によれば、中立水準は3.0%と判断できます。FOMC参加者が予想する政策金利の「長期的な水準」がこれに該当します。ただし、これは参加者の予想の中央値です。参加者全員の予想は、2.5-3.5%のレンジでした。つまり、上述の「中立とされる水準の幅広な推計レンジ」は2.5-3.5%であり、現在の政策金利2.0-2.25%はこのレンジを「わずかに下回る」ことは事実であり、パウエル議長あるいはFOMCが判断を変えたことにはなりません。

パウエル議長は28日の講演で、金融政策が予め決められたものではなく、今後の経済や金融のデータを注意深く観察するとも語っています。

トランプ大統領は利上げに対する批判を強めています。パウエル議長は、そうした批判をかわすためにも、利上げを決め打ちしているわけではなく、最新の状況を基に結果的に利上げを判断するのはやむを得ないと言いたいのかもしれません。

もっとも、パウエル議長は、このタイミングでの発言を市場が打ち止め示唆と受け止めることはある程度分かっていたはずです。比較的早い段階で様子見のモードに入る可能性を意識し始めたのかもしれません。

パウエル議長の真意がどちらにあるのか、次回12月18-19日のFOMCの結果や議長の記者会見などによって、ある程度明らかになりそうです。

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西田 明弘 マネースクエア 市場調査部 チーフエコノミスト

西田明弘

1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストを歴任。 2012年9月、マネースクエア入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「スポットコメント」、「今月の特集」など多数のレポートを配信。