米FOMCは7月利下げに準備OK!? 「軟着陸」に成功するか

【相場材料】米金融政策
【評価】FOMCは市場の期待に満額回答
【ポイント1】4つの注目点すべてで利下げを示唆
【ポイント2】「軟着陸」に成功すれば、株高・米ドル高も

20日の米FOMCは、7月以降の利下げに向けて十分な「地ならし」を行い、利下げを期待する市場に対してほぼ満額回答を提示しました。

今後の注目点は、(1)年内あるいは来年にかけて複数回の利下げが必要になるような、景気悪化やインフレ圧力の低下がみられるか。そして、(2)1995年の利下げ局面のように景気の「ソフトランディング(軟着陸)」に成功するでしょうか、でしょう。

95年の利下げ局面は、リセッション(景気後退)を回避して「ソフトランディング」に成功したレアケースであり、結果として米ドルや米株の上昇をもたらしました。今後のFRBとパウエル議長の手腕が注目されます。

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6月18日のファンダメ・ポイントでは、FOMCの4つの注目点を挙げましたが、そのいずれでも近々の利下げが示唆されました。

(1)声明文
前回のキーフレーズである「将来にどのような調節が適切かを判断するため忍耐強く待てる」が、「(増加した不確実性やインフレ圧力の不在に鑑みて)今後の状況を注意深く監視し、適切に行動する」へと置き換えられました。いつでも政策変更(≒利下げ)を行う用意があると解釈できます。

(2)パウエル議長の記者会見
FOMC後の会見で、パウエル議長は「幾分かの緩和的な政策の論拠が強まった」と述べました。6月4日の講演で議長は「適切に行動する」と述べましたが、「緩和的」と方向を明示したことでさらに一歩踏み込んだ印象です。

(3)FOMCメンバーによる票決
FOMC参加者のうち、議長を含む理事5人と、地区連銀総裁12人のうちの5人、計10人が投票メンバーとなります。今回の政策方針(据え置き)は9対1で可決されました。セントルイス連銀のブラード総裁が即時利下げを主張して反対票を投じました。2018年2月にパウエル議長が就任してから12回のFOMCで反対者が出るのは初めてです。

(4)ドット・プロット
FOMC参加者17人それぞれの政策金利見通し、いわゆる「ドット・プロット」の中央値に基づけば、FOMC参加者の平均的な見方は、「19年据え置き、20年利下げ1回、21年利上げ1回」です。
ただし、19年に関してほぼ半数の8人が利下げを想定、このうち7人が2回の利下げを想定していました。
FFレート(政策金利)先物に基づけば、19年中に3回の利下げの確率が市場で70%近く織り込まれています。FOMC参加者と市場の見通しにはまだ差はありますが、以前より接近しています。

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1990年代以降のFRBの利下げ局面をみると、ほとんどのケースで積極的な利下げを続けるも、リセッション(景気後退)を回避できませんでした。唯一の例外と言えるのが、1995年の利下げ局面です。このケースでは「予防的」な利下げによって、景気の「ソフトランディング(軟着陸)」に成功しました。株価は上昇基調を維持しました。

また、95年2月にかけて米ドルが暴落して、その後にG7によってドル安是正が進められたこともあって、利下げ局面にもかかわらず、米ドルも上昇を続けました(下図、水色矢印と赤色矢印)。

果たして、FRBとパウエル議長が「ソフトランディング」に成功するのか、大いに注目されます。

西田 明弘|マネースクエア チーフエコノミスト

西田 明弘

1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストを歴任。2012年9月、マネースクエア入社。チーフエコノミストに就任。現在、マネースクエアのWEBサイトで「ウィークリー・アウトルック」、「ファンダメ・ポイント」など多数のレポートを配信。動画コンテンツM2TV「マーケットViewチャンネル」に出演中。