Q&A:「有事の際の相場の見方」とは?

【著者】

:「有事の際の相場の見方」として、(金・原油をみる。地球1周するまで様子見るなど色々あるかと思いますが)、矢口様の判断材料や取引の方法などをお聞かせいただければと存じます。

相場には大別すると、マーケット(=価格変動)リスク、信用リスク、イベントリスクの3つリスクがあります。他のリスクは、これら3つのリスクに含まれるとご理解下さい。もちろん、全部が価格変動の要因ではあるので、究極的には価格変動リスクと言えなくもないのですが、ヘッジの仕方が異なるので、このような分類になります。マーケットリスクは反対方向の先物やオプションで、信用リスクは相当量のキャッシュ保有で、イベントリスクは保険に入ることで、概ねヘッジすることができます。

有事とは、通貨や資産の売買の前に、予め想定しておくことができないイベントリスクに当たります。その意味では、日常化した地政学的リスクはもはや有事とは見なされず、市場の反応も限定的です。

有事の例とすれば、現地11月24日に起きたトルコによるロシア戦闘機の撃墜は、予想されていないものでしたので、欧米の株式市場は一部を除き下落しました。米メディアの報道では、世界の市場でロシア株が最大に下落というものと、トルコ株が最大に下落というものとがあり、調べたところ、ロシアが3%半ほどの下落、トルコが4%半ほどの下落だった記憶があります。これは、両国のいざこざは双方の経済にとってマイナスで、悪影響はトルコの方が大きいという見方と、奇しくも一致しました。

一部を除き下落というのは、原油価格が上げたので、そのことを好感して僅かながら上げた市場があったためです。ちなみに、金価格も上昇しました。

これらのことでお分かりのように、「有事」だからといって、すべてが同じように反応する訳ではありません。発生した場所や、関連する当事者たちが被る被害や、他者への影響などが異なるので、「有事の際の相場の見方」と特定できるものはないと言っていいでしょう。

個人投資家におけるイベントリスクへの備えとしては、できるだけ短期トレードに徹することです。プロは世界中の主要市場に人員を確保しています。チームのグローバル会議で集まるような時にも、東京、ロンドン、ニューヨークの3拠点には、必ず留守番を置いて、24時間市場を監視しています。

例えば、ソロスなどが英ポンドを売り崩したとされる時には、我々ソロモンの為替チームはフロリダ州オランドでのグローバル会議を終えて、午後の親睦ゴルフのラウンド中でした。そこにロンドンからの緊急電話が入り中断、急遽解散してそれぞれの拠点に帰国となりました。ソロモンは投資顧問勘定を含めてポンド・ロングでしたので、いち早くショートに転じることができました。

フロリダの午後は、日本の真夜中です。個人がポンド・ロングのまま寝ていて、誰も電話で起こしてくれなかったなら、寝起きが悪いことになります。また、損切りオーダーを入れていても、レバレッジ次第ですが、口座資金がほぼなくなる程の損失となったと思います。

では、ポジションを抱えたまま寝ていたが、幸いまだ強制損切とはなっていなかった。あるいは、大きな利益になっていた場合にはどうするか? 
私は損切でも利食いでもポジションを閉じることをお勧めします。トレードはビジネスのように行うものです。アンラッキーやラッキーに左右されるものではありません。

同じことは、日中にポジションを抱えていての急落、急騰でも言えます。原則的には、次に売買できる価格でポジションを閉じ、損失でも利益でも受け入れて、次の展開に備えるのです。

長期保有の方が短期トレードよりもリスクは大きいのです。株式の長期保有はむしろ発行会社にとってメリットがありますので、個人のささやかな微力でも、巨大企業を応援したいと思う方々は、そのつもりで長期保有をなさって下さい。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。