仮想対談:「市場は最悪の事態を早々と織り込んだ?」

【著者】

聞き手:相場が大荒れですね。
Y:米ナスダック市場などは、1200回以上も取引停止があったようですよ。

聞き手:どういうことですか?
Y:売りの嵐で、値幅制限内に買い手が出てこないのでしょう。

図1

聞き手:日本株や、為替市場も大変な動きですよね。
Y:世界中ですね。SNBCなどは、月曜日に12の高値安値の記録更新があったと報じています。

聞き手:どういったものですか?
Y:台湾株指数が4.8%下落の7,410.34で引け、2012年11月以来の安値更新。米先物市場の大豆が1ブッシェル8.71ドルと、2009年10月以来の安値。中国上海総合指数が8.5%下落と、2007年2月以来の下げ率で、年初来安値。

香港ハンセン指数は5.2%下落し、2014年3月以来の安値。金価格は7週ぶりの高値。韓国ウォンは対ドルで1,200.31と4年ぶりの安値。株価指数は1,829.81へと2.5%下げ、2012年6月以来の下げ率。

北海ブレントとWTI原油先物は、それぞれ45ドルと40ドルのサポートを割り込み、6年半ぶりの安値。オーストラリア株価指数は4.1%下落し、5,001.3と2013年7月以来の安値。S&Pの豪州株200指数は8月に12.3%下落し、2008年以来の下げ率。ロンドンの銅先物は3%下落し、1トン4,903ドルと2009年7月以来の安値。

インドネシアのジャカルタ総合指数は5%下落し、2013年12月以来の安値。タイ株価指数は4.7%下落し、2014年2月以来の安値。ドイツDAX指数は5%下落で、1月以来となる10,000ポイントを割り込んだ。

聞き手:世界中で、確かに、12ありますね。
Y:ニューヨーク証券取引所とナスダック店頭市場を合わせた取引高は139億株と、2011年8月10日以来、4年ぶりの大商い。外為市場の取引高は5.3兆ドルで、数年来の大商いと、挙げれば他にもあると思いますよ。

聞き手:いったい、何が原因ですか?
Y:まずは、これまで世界を引っ張って来た中国経済の減速が、世界に波及するという懸念。元安誘導が通貨戦争を引き起こす懸念。中央銀行発資産バブルの崩壊懸念。特に中国株ですね。8月の夏枯れ要因などと言われてますね。

聞き手:米の利上げ懸念はどうですか?
Y:不透明感が嫌気されているでしょうね。0.25%やそこらの利上げで、実体経済や企業業績に大きな影響が出るとは思えないので、9月に利上げして、不透明感を払拭する方が、金融市場にはプラスだと思いますよ。利上げしないことは、それ程事態が深刻だというメッセージになり兼ねず、12月だ、来年だと不透明感だけが続くわけですから。

聞き手:利上げしても大丈夫ですか?
Y:米国経済は何年も前から、ゼロ金利が示唆する緊急事態は脱しています。懸念は米国の利上げが新興国市場国の通貨や株式市場に与える悪影響だったのですが、もう既に売られていて、その意味では、市場は最悪の事態を早々と織り込んだのではないですか?

聞き手:それにしても、下げがきついですね。これほど下げ幅を予想されてましたか?
Y:全くの予想外です。

聞き手:やられました?
Y:強気でしたからね。

聞き手:どうして、ここまでの下げ幅になったと思われますか?
Y:基本的に急騰、急落は投機筋が作ります。中国株で大損していたヘッジファンド筋が商品や日本株といった、連れ下げが連想されるものに売りを仕掛けた。商品ロングで大損していたヘッジファンドが、景気後退懸念を材料に先進国の株に売りを仕掛けた。8月の夏枯れ要因で、下げ幅がきつくなったと言えます。長期投資のヘッジ売りや、個人投資家の損切り売りを引き出せれば、彼らの勝ちですね。

聞き手:しかし、月曜日の取引高は4年ぶりの大商いですよね。それでも夏枯れと言えるのですか?
Y:米国は9月7日のレーバーデイまでは夏休みで、参加者自体は通常より少なめです。つまり、少数の参加者が巨額の資金で仕掛けたと考えられますね。これも、流動性相場の副作用の1つだと言えます。

聞き手:と、言いますと?
Y:米連銀は量的緩和で供給した大量の資金を市場に残したまま。日欧は量的緩和中。中国も大量の資金を供給しています。これは、金融相場で株価上昇につながるのですが、一方で、売り浴びせる場合にも大きなレバレッジをかけることができます。

例えば、リスクオンで円売り、ユーロ売り・高金利通貨買いのキャリートレードをしていたヘッジファンドが、リスクオフの巻き戻しという名で、今度はカウンター・キャリーのリスクオンを行っているとも考えられます。これは、どこかで巻き戻されますから、その場合には、ドル円も急反発することになります。

聞き手:翻弄されますね?
Y:薄商いでは効きます。また、皆が不安心理に傾いている時には、何もしなくても、大声だけで心臓発作にもなりますから、効果的ですよね。してやられましたね。

聞き手:今後、どうなりますか?
Y:何が一番心配ですか?

聞き手:中国や新興国市場ではないですか?
Y:そうですよね。でも、通貨安はそういった調整機能を持ちますので、通貨が売られているのはいいことです。その意味では、元安誘導も前向きに捉えていいかと思います。

聞き手:日本株や米株はどうですか?
Y:一番心配なのが、中国や新興国市場であることを思い出せば、売る理由がないことに気付きます。

先に述べたように、世界は良いも悪いもカネ余りです。運用資金はじゃぶじゃぶです。株を売れば、また資金が溢れます。債券では利回りが取れない。値上がり期待も限界的だ。中国や新興国市場は怖い。商品は市場が小さい。どうします?(「中国はなぜ変動相場制に移行しない?」というご質問があったので、それは明日)

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。