FXコラム

外為10時、仲値決済「ドル不足」の声

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FXコラム|2014/05/12

こういう見出しの記事はほぼ毎日、目にすることと思う。
仲値(TTM)決済レートは毎営業日午前9時55分から10時までの間に決められるからだ。このレートを中心値に、その日の顧客の買値であるTTSや、顧客の売値であるTTBが決められ、以前は一日中変更されなかった。それでは、買い手か売り手のいずれかに不公平が生じ、多くの場合は銀行のリスクともなるので、今はその日のうちに為替レートが1円以上変動すれば仲値を決め直すことになった。動かなくても、午後にも変更する銀行があったように思うが、確認できなかった。

今日は、3月の貿易収支が1兆1136億円の赤字と、前年同月の738億円の赤字から大幅に拡大したとのニュースがでたので、「ドル不足」を取り上げた。

「ドル不足」などと聞くと、何の危機かと思う人がいるかもしれないが、不足の反対は余剰で、実際の外為市場では、いつも不足か余剰だ。そうでない場合は均衡とでも呼ぶのだろうか、呼び方が思い出せないほど、顧客の外貨の売り買い注文が均衡していることは珍しい。例えば、ドル買い注文が100万ドルだけ上回っても「ドル不足」なのだ。

不足か余剰なのは常に外貨で、日本の銀行が外為市場で、円を不足や余剰とは言わない。なぜなら、銀行は目的のない外貨保有をしないからだ。意味のないリスクは取らないのだ。だから、例えば100万ドルを顧客に買われて、自分たちのバランスシートが「不足」になると、その不足は市場で買って埋めることになる。顧客のドル買いは、そのまま外為市場に流れることになる。もっとも、どこかでドルを売りたいと考えていたディーラーが、行内で「そのドル売った」と引き取ることはある。あるいは、ドルを買いたいと思っていたディーラーが、顧客のドル買いに弾みをつけて多く買うこともある。これらには説明可能な営利目的がある。

今日の外為10時、仲値決済「ドル不足」の声は、貿易収支の数値とは関係がない。数値は3月のものだからだ。
もっとも、ディーリングルームで誰かが「不足」と大声で叫ぶと、反射的にドル買いを始めるディーラーも多い。今日などは、そのような日だ。そして、思ったほどの不足ではなく、ドル円の頭が重いと、損をした先輩から「声がでかい」としかられるようなこともあるのだ。

参照:今日の値動き
Middle rate

矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。