カネ余りの行先は?

BOAメリル9月4日―10日の調査で、プロの投資家のキャッシュ比率が5.5%と、2008年のリーマン・ブラザーズ破たん後につけた水準に並んだことは、既にお伝えした。

その後も、MMFには資金が流入し続け、23日までの週には2015年に入ってからのキャッシュファンドへの資金流入が、株式ファンド、債券ファンドへの流入を上回り、1990年以降で初めてトップとなった。

また先週には、金融機関を除くS&P500株企業の合わせた保有キャッシュが2015年6月末時点で1.43兆ドルと、過去10年間で2番目の多さだったと発表された。

2014年の世界のGDPは合わせて77兆3020億ドルだ。うち、米国17兆4189億ドル、ユーロ圏13兆4369億ドル、中国10兆3804億ドル、日本4兆6163億ドル、英国2兆9452億ドルで、63%以上を占める。これら世界の5大中央銀行が未曽有の資金供給を行っている。米国は1年前に停止したが、放出した資金は市場に残ったまま。残りの4中銀は未だに資金供給を継続中だ。

世界は空前の規模のカネ余りだ。そして、投資家や企業は、そのカネをキャッシュのままで持っている。そのキャッシュは史上最低金利で、ほとんどリターンを生み出さない。また、史上最低利回りの債券からも満足なリターンが得られない。

相場は意欲と事情とで動く。投機資金の思惑や人気投票だけでなく、事情に支配される資金が根っこにある。また、投機資金の思惑や人気投票ですら、それぞれの事情を反映する。投資資金の事情とは中長期的にリターンを上げること。投機資金の事情とは、短期間にリターンを上げることだ。どちらも、キャッシュや債券からは望むようなリターンが得られない。

世界景気への不透明感から、世界のプロの投資家たちはリスクを回避している。その度合は1990年以降で最も高まった。しかし、リスク回避先からのリターンが見込めないことを加味すれば、投資家の恐怖感は空前と言えるほど高い。リターンがないリスクを顧みないほど、株式市場を恐れていることになるのだ。

私は、そういった思惑や人気投票的なものにも関わらず、プロの投資家の事情によって、それほど遠くない将来に株式市場に資金が流れ込んでくると見ている。プロの投資家の事情とは、リスクを取ることを約束して生活していることだ。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。