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週が明けて

【著者】

下記参照の「イギリス国民を『EU離脱』に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得」は、東京時間金曜日の午後4時までに書き終えていたものだ。

参照:イギリス国民を『EU離脱』に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得

その後、英国のEU離脱決定を受けたEU政府、フランス政府、ドイツ政府の関係者たちは、英国にEUからの早期離脱の話し合いを進めるようにとせかせている。それらの政府は、英国に再考を促したり、離脱手続きを遅らせることは、EU内にポピュリズムの台頭を招くと恐れている。
一方で、ドイツのアンジェラ・メルケル首相は、それらの政府に冷静になるように促し、英国への圧力を弱めるようにと求めた。

英国のEU離脱が世界経済の不透明感を強めたのは疑いがないが、英国経済への中長期の見通しについては、相変わらず、正反対の見方が見られている。ポンドや株価の下落に見られるように致命的な大打撃だと言う見方と、英国王権を制限した1215年6月15日の大憲章以来の大英断で、英国は自由と長期繁栄の可能性とを得たという見方だ。私自身は後者の見方に近い。

参照:UK starts to count the cost of Brexit vote
参照:The UK’s Magna Carta 2.0: Good for freedom, good for growth

一方で、スコットランド行政府のスタージョン首相は投票結果について、「スコットランドはEUの一部であり続ける意思を明確に示した」と強調。「スコットランドの人々は自分たちの未来がEUとともにあると考えていることが明確になった」と述べ、英国からの独立運動を蒸し返す可能性を示唆した。スコットランドでの投票結果は残留が62%、離脱が38%だった。

これは、スペインのカタルーニャ地方政府やバスク地方政府が、上級政府は2つもいらないとし、スペイン政府からの独立を志向しているのと同根だ。一方で、イタリアの「五つ星運動」や、ミラノ、ベネチアなどの北部リーグは、同じ理由ながら、EU政府からの離脱を志向している。

スタージョン首相の発言を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は、「3世紀続いた、大英帝国の結合が揺らぎ始めた」とのコラムを掲載した。とはいえ、現状では、ウェールズや北アイルランドが独立する可能性はほぼゼロで、「致命的な大打撃」だと煽る見方に近い。

参照:After ‘Brexit,’ 3 Centuries of Unity in Britain Are in Danger

そういった混乱を受けて、私は上記の先週末に、「問題は、そういったことの不透明感だ。主要国の国債や、円、スイス、金などが更に買われる可能性がある」と述べたのだった。

一方でそういった不透明感を受け、ドルの調達金利が上昇してきている。
このようなケースには、ドルの調達を、「借りることから、買うことに」変更する傾向が過去には見られた。
また、G7諸国の10年国債を、先週末での利回りの高い順番から並べると、米国債、イタリア国債、カナダ国債、英国債、フランス国債の順になる。残る日独はマイナス利回りだ。このうち、ブレグジットの影響が少ないのは、米加だけだ。

また、米株式市場のボリンジャーバンドの変動幅が、大抜けを示唆するところまで収斂(スクイーズ)してきている。世界的なカネ余りに加え、キャッシュポジションの高さを鑑みれば、仮に大相場があっても驚かない。

米株ボリンジャーバンド

こういう状況を鑑みて、ドル円レートを考えるなら、イメージと実需の円買い、実利のドル買いの綱引きとなる。一方で、円の実需には量的制限がある。そうなると、仮に再度100円割れなどがあると、ドル買いが殺到することが予測される。ドルは底堅くなるのではないか? 米株とドル円が上昇すれば日本株も上げやすい。

とはいえ、今後の展開でほぼ間違いなく言えることは、不透明感と混乱だ。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点
矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。