Numbers game -ナンバーズゲーム-

困難な状況から抜け出せずにいるユーロ圏を尻目に、米ドルが新たな上昇局面を迎える可能性があります。
ただし、実際にドル高が進行するかはアメリカの経済指標と景気回復が定着するかにかかっています。
2006年以来となるFRBの利上げが9月になることが示唆されれば、ドル高基調が復活する可能性があります。
ドル相場の動向は6月から9月にかけて発表されるアメリカの経済指標の内容次第です。

 外国為替市場では、2015年第2四半期に入ると、米ドル(USD)高は一服して、ほぼ調整局面が続きました。第3四半期には、アメリカの経済指標が良く、2006年以来となる米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが9月になることを示唆されれば、ドル高基調が復活する可能性があります。

 2015年に入ってからの米ドルの動きを簡単に振り返ってみましょう。第1四半期は、米ドルが期待以上に値上がりした反面、想像以上に下落したのがユーロ(EUR)でした。米ドル高ユーロ安のコンビネーションを受け、ユーロは急落を続けて、3月中旬には1ユーロ=1.05ドルを割り込みました。これは、欧州中央銀行ECB)による大規模な量的緩和(QE)策の正式発表(3月5日)、QEに基づく国債買い入れの開始(3月16日)を前にユーロが売られたためでした。

先見性の皮肉な結果

 しかし、ECBによる国債買い入れが始まると、ユーロ相場はすぐに反転しました。理由は、EURUSD相場にECBの金融政策が十分に織り込まれていたことと、アメリカの経済指標が第1四半期の景気後退を示唆する内容だったためです。

 第2四半期に入ると、ヨーロッパの債券市場の混乱を受けて、ユーロは一時再び急落しました。これは、債券トレーダーがECBによる国債買い入れ前に過剰に買い込んだヨーロッパの債券を大量に売ったことが原因でした。

 つまり、ECBによるQEの本格化は、ドイツからポルトガルに至るまでのユーロ圏国債トレーダーに、4月後半から6月にかけて巨額の損失をもたらすという皮肉な結果を生じてしまいました。

ECBの明確な対応が不可欠

 第3四半期を迎えますが、ユーロ売り圧力を止めるには、ECBがユーロ圏国債市場の制御不能な状態に歯止めをかけられることを明確に示すことが不可欠です(そうでなければ、ある時点で周縁国の国債利回り上昇はユーロ圏はもとよりヨーロッパ全体にとって大きなストレス要因になってしまいます)。

 ドルの側から見た場合、ユーロおよび他の通貨に対するドル相場の動向は6月から9月にかけて発表されるアメリカの経済指標の内容次第です。特に、指標に十分な改善が見られ、FRBの利上げの可能性がより高くなるかどうかが注目されます。とりわけ、失業率のさらなる低下と、実質賃金の上昇が2009年水準(対年上昇率は最高が2.3%)を2カ月連続して上回れば、利上げの可能性が一気に高まる見通しです。

 第3四半期にアメリカにとって2006年以来となる利上げが9月のFOMC会合で決まる公算が高まっています。その場合は、6月に発表される経済指標、なかでも非農業部門雇用者数と賃金上昇率のデータが特に好調な伸び率を示せば、それを受けて7月開催のFOMC会合で9月利上げを強く示唆する流れになることが予想されます。

 現時点で、FRBは、2つの理由からどのような口実を使ってでも金融政策を正常に戻したいと考えています。まず、過去5年の金融緩和策が成功だったということを自ら認めるための政治的な動機。次に、回復基調に入ってから時間が経つのに本格的に上向く勢いを見せていないアメリカ景気が、利上げ後に傾く気配を見せた場合に必要な政策手段を探る意味もあります。

 もし金利の上昇が2016年後半までに1%のみと予想されている場合は、上方修正される可能性が大いにあります。

トレードシナリオ1: EURUSDはショート、USDJPYロング

 第2四半期は調整局面が続きました。その傾向はEURUSDで顕著でした。サクソバンク予測チームは第3四半期にユーロ(EUR)安基調が復活すると予想しています。ただし、予想通りにユーロ安が復活するのは、米国債利回りと比べたユーロ圏国債の利回り上昇率が減速する場合です。

トレードシナリオ2: AUDCAD、NZDCADはショート

 「脇筋」のトレードが頭角を現せば、無視するのはいかにももったいない話です。豪ドル(AUD)とニュージーランドドル(NZD)はいずれも値下がりが見込まれており、対カナダドル(CAD)でショートにするトレードが有効だと考えています。

トレードシナリオ3: CHFはオプションを使ってショート

 スイスフラン(CHF)相場は、ギリシャ債務問題が解決すれば一気に安定に向かう可能性があります。CHFの下落相場を狙うのであれば、EURCHFとUSDCHFのコール・オプションのロング、またはどちらか一方のコール・オプションのロングが考えられます。

G10通貨の第3四半期見通し

通貨 第3四半期見通し
米ドル(USD) FRBの利上げ期待が高まり、米ドル高基調が持続。
ユーロ(EUR) ECBはQEを2016年後半まで継続。第3四半期にユーロ安が、特に対米ドルで再開。
日本円(JPY) 米FRBの利上げが近づき、米国債利回りの上昇が続けば、米ドル高が進む可能性がある。しかし円安の行き過ぎには日銀が懸念を示すことが予想される。クロス円はは上値の重い展開または円高の見通し。
英ポンド(GBP) 明確な方向性が見当たらない。GBPUSDの売りとEURGBPの売りがGPBUSDのいずれも基本的にポンド安の予想。構造的な不均衡がポンドにとっての長期的な不安材料。
スイスフラン(CHF) ギリシャ債務問題の合意と平均回帰が現実になれば、CHFの大幅安の可能性が大きく高まる。
豪ドル(AUD) AUDNZDは上昇が続く可能性はあるものの、AUDUSDは新安値に向かうと予想。
カナダドル(CAD) アメリカの景気拡大を受けて、対米ドルでは値下がり、他通貨に対しては値上りする見通し。
NZドル(NZD) ニュージーランド準備銀行のハト派政策と長く続いたNZドル高の過大評価(最近になって一部修正)を反映して、NZドル安はさらに進む予想。
スウェーデンクローナ(SEK) リクスバンク(中銀)は非常にハト派的。しかしインフレ懸念が後退すれば、SEKの行き過ぎた安値に対してある程度平均回帰が起こる可能性がある。
ノルウェークローネ(NOK) 原油価格の回復がなければ、ノルゲスバンク(中銀)はハト派政策を継続するため、NOKが「森から抜け出す」の期待薄。

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サクソバンク証券株式会社

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