リスクを取らねば事実上、破綻する日本の年金制度

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FXコラム|2014/06/05

厚生労働省は3日、公的年金の財政検証結果を公表した。年金の財政検証とは2004年以降5年に1回行い、将来の100年間にわたる年金財政の収支バランスをチェックするものだ。

政府が2004年に実施した年金制度改革は、現役世代の手取り収入と比べた年金支給額の割合(所得代替率)を将来にわたって50%以上を維持するのが根幹。2014年度の標準的な世帯の代替率は62.7%だった。試算では8つのケースを示している。
参照:国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(平成26年財政検証結果)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf

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試算は前提の積み重ねなので、細かく触れても意味がないが、将来の所得代替率は最高が54.4%、最低が35.0%と、どのような前提をおいても、2014年度の標準的な世帯の代替率62.7%を大きく下回るということだ。どうころんでも、経済的に明るい老後は望めない。

それに対し、厚労省は所得代替率の上昇に寄与するために、
1、保険料の納付期間を65歳まで延長する。
2、厚生年金に加入するパート労働者を拡大する。
3、マクロ経済スライドをデフレ下でも実施する。

という、3つの改革に取り組んだときの特別試算もそれぞれ行ったという。いずれも国民の負担増となるものなので、これを「改革」呼ぶことはおこがましいと言える。やはり、どうころんでも、経済的に明るい老後は望めないようだ。

一方、試算の前提となる8つのケースでは、対物価での運用利回りを1.7%から3.4%に想定している。物価は0.6%から2.0%の想定なので、運用利回りは2.3%から5.4%だ。現状の10年国債の利回りが0.61%であることを鑑みると、いずれの場合でも、国債中心での運用はもはや想定外になっているに等しい。

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GPIFの運用委員長に就いた米沢康博早大教授は2日、129兆円の資産運用の見直しについて「政府から要請があれば、8月に発表する可能性もある」と述べた。現在12%としている日本株の基本比率は、「20%というのも高すぎるハードルではないかもしれない」とし、大幅な引き上げを検討する意向を示した。GPIFの運用資産は同年末で129兆円。単純計算で株式の比率を1%上げれば1兆円超の資金が市場に流れ込むことになる。

経済成長は誰かがリスクを取ることによって叶う。8つのケースの前提は-0.4%から+1.4%だが、官民がリスクをうまくとれば、それ以上の経済成長率も可能だ。

それ以上に可能なのは、うまくリスクを取れば、運用利回りを格段に向上させることができるのだ。リスクを取らねば、日本の年金制度は破綻するが、うまく取れば、安定する。日本の政府、官庁もいい加減に目覚めて欲しいものだ。それにしても、GPIFのこれまでの運用委員長は東大教授、現在は早大教授と、投資運用のリスクテイクとは無縁の人ばかりというのは、お先真っ暗ということか。

みんなの株式に掲載されている矢口氏のコラムご覧ください
http://money.minkabu.jp/author/auth_yaguchi
最新記事:2014/6/3 「なぜ、株価下落予想は外れるか?」
http://money.minkabu.jp/45270

GPIF運用実績
http://www.gpif.go.jp/operation/highlight.html#tab_01
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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。