Q&A:ドル円が100円を割れる可能性は?

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:米ルー財務長官は「通貨切り下げ競争は回避する必要がある」と発言しました。また、米財務省は議会に提出する為替報告書のなかで、日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5カ国・地域の経済政策に懸念を示し、大幅な黒字を抱えていることを主な理由に、監視リストに載せました。

一方で、安倍首相や麻生財務相は、急激な為替変動に対し「介入の用意がある」と発言しています。こういった状況で、ドル円が100円を割れる可能性を、どう見ればいいでしょうか?

米国を除くほぼすべての主要国が利下げムード、つまり事実上の通貨切り下げ競争進行中であるなかでの、ルー財務長官の発言は、「市場介入はするな」、あるいは「節度をもってほどほどに」という意味だと捉えていいでしょう。

また、為替の監視リストについては、議会に提出するものですから、TPPなどを控え、政府はそれなりに監視を怠っていないという意思表示の意味合いが強いと思われます。監視リストの背景については、以下のコメントをご参照下さい。

参照:米が日本を為替の監視リストに

このところのドル円相場は、麻生財務相などの「介入用意」の発言を受けて、ドル円の買い戻しが入っています。5月3日までのIMMの残高にみるドル円のポジションは、大幅なドル円ショートのポジションが、2週連続で買い戻されている状態で、介入懸念や米の利上げ観測の高まり次第では、まだまだドル円の上昇余地が残っています。

参照図:
シカゴIMMポジション

とはいえ、現状でのドル高円安要因は、こういった投機筋の買い戻しだけだと見ていいでしょう。米の利上げはあっても年内2回限り、0.50%が最大というのが実際のところです。介入はできても105円割れ以下、あるいは100円割れ以下ででしょう。また、介入効果は投機筋の買い戻しが終われば、そこまでです。

ドル円の長期トレンドは日本の貿易収支に大きな影響を受けます。2011年にドル円が大底を打ち、2012年から反転したのは、その年から貿易赤字に転じたのが最も大きな要因です。その貿易収支が、2016年には再び黒字化しそうです。輸出が伸びないのに黒字化するのは、資源安と個人消費低迷で、輸入の減少幅の方が大きいからです。景気回復も日本よりも海外の方が先になると、貿易黒字が膨らみます。

また、ドル円の中期トレンドに大きく影響する日米金利差は、期待ほどには広がっていません。だからこそ、投機筋は金利を支払ってでも、円買いドル売りポジションが維持できるのです。

そうしてみると、5月26日、27日のG7伊勢志摩サミット、6月15日の米FOMCを終えた年後半は、100円の介入レベルを試しに行く可能性があると見ていいかも知れません。もっとも、100円を割れてどんどん円高が進む可能性は、少なくとも2016年内は少ないと見ています。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。