Q&A:プロップハウスの可能性は?

【著者】

:プロップハウスというものを聞いたことがあります。自己資金によるトレーディング事業のようです。
自己資金によるトレードなので、個人のデイトレードや為替ディーラーとよく似てますね。その割には、認知度は低いように感じます。
プロップハウスのトレーディング技術やビジネスとしての可能性はどうなのでしょうか。

プロップとは、proprietary(=所有者[権・物]の)という意味で、銀行や証券会社の自己勘定の取引を表す、proprietary trading からきています。

銀行や証券会社は、為替や証券取引で、顧客相手に売買値を提示するディーリング業務を行い、収益を上げようとするのが本業の1つですが、そういった商品勘定での実績を認められると、自己勘定で収益のみを追求する proprietary trading を任されるようになります。

プロップ・トレーダーは銀行や証券会社にとって、収益面では重要な位置にいるものの、本業からは脇にそれるところから、微妙な立場になってきます。例えれば、時代劇のやくざの「用心棒の先生」ようなもので、喧嘩のために飼われ、大きな顔をしてはいるものの、組織からは浮いたような存在になります。そして、腕や心意気を買われて、他の組織にも移ります。

それはともかく、プロップハウスの一般的な形は、財をなしたディーラーやファンドマネージャーが、自己資金のプールを使って、個人投資家たちに資金を任せて、実体験でトレード技術を伝授しようとするものです。

もっとも、個人投資家が大きな資金を任せられるようになるには、デモトレードや少額資金のトレードで、それなりの結果を出す必要があります。

元ディーラーやファンドマネージャーは、ファンドを立ち上げることがありますが、ファンドとの違いは、

1、預かり資産の運用と、自己資金運用の違い
2、プロ任せの運用と、個人投資家への運用技術の伝授の違い
3、運用経験がなくてもなれるファンドマネージャーに対して、プロップハウスの主催者は勝ち組の運用者のみ
4、運用報酬と、授業料の違い

こう並べて書くと、いかにファンドという業界が怪しいものかが明確になります。つまり、個人投資家にとっては、運用経験のない「プロ」に運用報酬を払って、自分の資金を運用して貰う可能性があるのがファンドです。そして、損失の場合は個人投資家がかぶります。

プロップハウスは、少なくとも財をなしたプロの運用者がそのノウハウを伝えようとするもので、個人投資家にとってのリスクは授業料だけに限定されます。

個人投資家にとってのメリットは、

1、運用技術を学べる
2、運用仲間ができる
3、結果を伴えば、運用益の一部が得られる

デメリットは、上記のように授業料を払う必要があることです。これをリスク・リターンで判断することになります。

主催者側のメリットは、

1、自己資金を自己で運用することに比べ、社会性が得られる
2、自己運用における緊張感が保てる
3、自己を超える運用者を育てる可能性があり、自分で運用するよりも結果を伴う可能性がある
4、授業料が頂ける

デメリットは、運用ノウハウの公開と、教え方が拙ければ自己資金で損失を出すことです。このことは、自身のノウハウや教え方に自信のない人は、プロップハウスを主催してはいけないことを示しています。

認知度が低いのは、上記のデメリットから主催者の数をそれほど多くは期待できないこと。また、主催者が教えることができる個人投資家の数も限定的なことから、どこまでもニッチなためかと思います。また、自身のノウハウや教え方に自信があっても、プロップハウスを運営できるだけの十分な資金がなければ、主催することはできません。

ビジネスとしての可能性を言えば、プロップハウスのトレーディング技術は、少なくとも財をなした技術だったこと。また個人投資家、主催者双方のリスクが限定的で、メリットは限りなく大きいことから、「高い」とはみたい反面、認知度で触れたように、限られた人による限られた人数に対するビジネスであることから、どこまでもニッチでしかない「限定的」なものと思います。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。