FXコラム

米連銀の利上げは円高に繋がる?

【著者】

量的緩和は大量の通貨供給による通貨安誘導を意味する。対株価で通貨安となることが株高、対不動産で通貨安となることが不動産価格の上昇、対外国通貨で通貨安となることが、自国通貨安、外貨高となる。日本円の場合では、例えば、円安ドル高だ。

リーマンショック後の主要国で、量的緩和の先陣を切ったのが米連銀で、型通りに株高、住宅価格上昇、ドル安となった。2013年以降は日銀も本格的な量的緩和を行い、株高、住宅価格上昇、円安の更なる進展を後押しした。欧州中銀も量的緩和を行い、株高、住宅価格上昇、ユーロ安などに繋がっている。

ここで、株価や資産価格の上昇はそれぞれの国のインフレにつながると言えるが、為替レートは少しばかり複雑だ。というのは、対ドルでの円安は、ドル高となり、両方が同時に安くなることは不可能だからだ。通常、通貨安はコスト競争力上昇に繋がるので、両国に通貨レートをめぐっての軋轢が生じることになる。

量的緩和の先陣を切った米国は昨年末に量的緩和を終えた。量的緩和の時期のズレで、米ドルは既に独歩高となっている。今年中には政策金利の引き上げが予定されているので、米ドルは更に上昇すると見込まれている。

そこで、SNBCなどは為替相場が、この夏、荒れそうだと取り上げた。「通貨安競争はこの夏、新たな混迷の局面を迎えそうだ。アナリストたちは、米連銀が他の主要通貨に比べてはるかに強い米ドルにどう取り組むかを注視している。」

参照:Here’s the next stage in global currency wars (英字サイト)
http://www.cnbc.com/id/102729685

5日朝のテレビ東京「モーニング・サテライト」では、ゲスト解説者が、「米連銀の利上げは円高に繋がる可能性がある」と述べていた。斬新な意見だ。

日銀のほぼゼロ金利政策継続時に、米連銀の利上げがあると、日米金利差は拡大する。金利差拡大とドル円レートには強い相関性があり、それを裏付けるだけの本邦機関投資家による外貨建て投資の予定も目白押しだ。
「米連銀の利上げは円安に繋がる可能性が高い」のだ。そういったことを見越して、投機筋も円売りポジションの拡大に動いている。

日米金利差

ゲスト解説者はそのことを否定しているのではなく、だからこそ、当局は前もって円高誘導に動く可能性があると指摘しているのだ。「強い米ドルにどう取り組むかを注視」しているのだ。

麻生財務相が円安進展を牽制したように、米当局の意向を組む発言や、事実上の円高誘導圧力が今後出てくる可能性がある。もっとも、実需や金利差といったファンダメンタルズに反して、為替レートのトレンドが決まる可能性は低いが、だからこそ、「荒れる」ことになる。

米利上げまで、利上げ直後までの、為替のボラティリティは更に高まる可能性が高くなってきた。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。