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米の利上げ観測が遠退く

【著者】

6月3日発表の米5月の雇用統計、非農業部門雇用者数は季節調整済み前月比で3万8000人増だった。4月の修正値12万3000人増から大幅に減速、増加幅はマイナスだった2010年9月の5万2000人減以来、5年8カ月ぶりと低水準となった。市場予想の16万4000人増も大幅に下回った。

一方で失業率は4.7%と、4月の5.0%から改善、2007年11月以来の低水準となった。とはいえ、5月は労働人口が45万8000人減少、労働参加率も62.6%と、前月の62.8から低下した。より広義の失業を示すU─6失業率は9.7%と、前月から横ばいだった。

米連銀の金融政策の2本柱は、雇用とインフレで、5月の雇用統計の数値を見る限り、6月利上げの観測は遠退いた。一方のインフレ率を示唆する平均時給は、前月比+0.2%、前年比+2.5%と、早期利上げを示唆した4月のペースとほぼ同じだった。

米連銀は利上げの条件として、自国経済と世界の情勢を上げている。
次回のFOMCは、6月14、15日。その次は、7月26、27日となる。
つまり、次回のFOMCまではもう雇用統計はなく、6月23日はEU離脱をめぐっての英国での国民投票が行われるので、6月利上げの可能性はほぼなくなったとみていいだろう。

米雇用統計の数値受けて、ドル円レートは急落した。直近は米利上げ観測が高まっていたので、ドル円のショートポジションが急速に買い戻されていた。金曜日は、おそらく再びドル売り円買いポジションを膨らませたものと思われる。

参照図:IMM(米ドル建て)円先物建玉推移
シカゴIMM

これで前回の安値、105円台の半ばを試す展開になってきた。105円近辺は日本の当局の介入レベルを探ることにもなる。一方で、週末には米ルー財務長官が5日の北京での講演で、外国為替市場での介入について「各国はそうした権利を持っているが、発動条件を緩くすることを避けるべきだ。為替介入を世界経済を安定させる便利な道具とみなすべきではない」と述べたようだ。雇用統計後に発言されたところから、日本当局が円売り市場介入することをけん制したものとみられている。

参照図:ドル円レート
ドル円レート

私は、米連銀は2、3年前に利上げのタイミングを逃したと見ている。6年以上も前の未曾有の危機の時と、基本的には同じ金融政策の水準を続けているからだ。先のことが分からないと言い出したなら、人間である以上、永遠に分からない。しかし、誰にでも分かることは、リーマンショック時と今とは、雇用市場やインフレ率、他の数値を見ても、ファンダメンタルズが大きく違うということだ。

米連銀は7月に上げるだろうか? 仮に英国がEU離脱を決めたとしても、上げられるだろうか? 9月はどうか? 12月はどうか? 米経済は永遠に成長し続け、世界情勢に不安のない時が訪れるだろうか?

米連銀の利上げ、日米金利差拡大によるドル円レートの上昇は、読みにくいゲームだ。それよりも、介入レベルを探ってドル円を売り込み、ダブルボトムを試すことの方が、分かりやすいゲームのように思える。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。