対ロシア制裁の足並みに乱れ?

【著者】

FXコラム|2014/08/13

対ロ制裁強化で欧州連合と協調したことで、フィンランドはユーロ圏他国と比べ自国経済に割に合わないダメージを受けたとして、協調制裁からの離脱を考えていることが分かった。

参照:Russia Isolation Fuels Finnish Dismay as Fallout Seen Unfair
http://www.bloomberg.com/news/2014-08-10/punishing-russia-provokes-finnish-dismay-as-fallout-seen-unfair.html (英字サイトです)

11日に米連銀のフィッシャー副総裁は、世界景気が思いのほか減速気味だと述べた。とはいえ、現時点で最も景気や株価の足を引っ張っているのはウクライナやイラクといった地域の地政学的リスクだ。そして、そのほとんどで米国が事態を悪化させている。フィッシャー副総裁の発言は暗にオバマ政権を批判しているのかもしれない。

米国はウクライナ情勢でロシアを責めるが、私はプーチン大統領にできることはほとんどないと見ている。ロシアがウクライナ東部を併合することは、メリットよりデメリットの方がはるかに大きい。また、分離派を援助して地域が不安定になることは避けたい反面、困窮している多くのロシア系住民を見捨てるわけにもいかないからだ。

当地のロシア系住民は、ロシアを捨てて他国に移住した人々ではなく、ソ連という同じ国の他県に引っ越すような形でウクライナに住んだ人々だ。なかにはソ連邦の重商政策に基づいて、国策として移住させられた人々もいるかと思う。彼らは、ソ連邦崩壊により、図らずも他国籍を得ることになった人々だ。

経済的に困窮し、政治的にも不安定なウクライナを離れ、母国ロシアに帰属したい、あるいはロシア人中心の国家へと独立したいという気持ちは、欧州の歴史に触れた人間ならば誰にでも分かる。12日、ロシアの緊急対策省は、ウクライナ南東部に向けて、飲料水、食糧、医薬品などの人道支援物資を積んだ280台のトラックがモスクワを発ったと述べたが、ウクライナ政府は国境を超えさせないとした。ウクライナ東部のロシア人たちは、またしても歴史の悲劇を味わっているのだ。

関連記事:ウクライナ情勢で知っておくべきこと ―1―
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/need-to-know-situation-in-ukraine/
関連記事:ウクライナ情勢で知っておくべきこと ―2―
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/need-to-know-situation-in-ukraine-2/

プーチン大統領を追い詰めても、何も出て来ないのは、欧州の首脳だけでなく、おそらく米国自身も分かっているかと思う。他国にロシア制裁への協調を強要する一方で、米国の電力会社はロシア産の石炭輸入を急増させ、エクソンモービルは先週、ロシア社と共同で北極海油田の採掘を開始した。

オバマ政権が行っていることは、ウクライナ国民とは関係がない政治的な駆け引きなのだ。だからこそ、ドイツやフランス、あるいはフィンランドはロシア制裁にしぶしぶ参加した。また、米国のエスタブリッシュメントと深いつながりを持つ米エネルギー産業が、公然とロシアと取引しているところをみると、もしかすると、追い詰められているのはプーチン大統領ではなく、オバマ大統領だという見方も可能だ。

一方、安倍政権には、エネルギー政策や規制緩和の遅れ、弱者いじめの政治など、問題は多い。とはいえ、安倍首相には高く評価できるところがある。外遊、首脳会談の多さだ。直接にアジア、アフリカ、中南米、欧州各国、もちろん米国の首脳と話すことで、各国が置かれた状況をより正確に把握、理解できると思うからだ。残念ながら、マスコミの情報はあまりにも上っ面すぎて、投資判断の助けにすら役立たない。

プーチン大統領の来日予定をキャンセルするかどうかは、日本政府の判断に委ねられている。北方領土や北極海開発、エネルギーなど、ロシアとの友好関係は今後の日本の最重要課題の1つだ。「ウクライナ情勢を直接非難するため」と米国に言い訳してでも、直接、プーチン大統領の言い分を聞くべきかと思う。

みんなの株式に掲載されている矢口氏のコラムご覧ください
http://money.minkabu.jp/author/auth_yaguchi
最新記事:2014/8/11 「JPX日経インデックス400、31銘柄を入れ替え」
http:/money.minkabu.jp/46247

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デモトレ大会6回戦

矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。