サムライ債の発行が、1996年以来の高水準

海外の企業や政府が、日本で円建てで発行する債券、いわゆるサムライ債の2014年の発行額が、12月12日時点で2兆5104億円と前年実績を5割強上回り、1996年以来の高水準となった。

クレディ・スイスは1606億円を発行、モルガン・スタンレーは1500億円を発行した。約4年ぶりに発行したドイツ銀行の場合、満期5年物の金利は年0.47%。前回の金利のほぼ半分で済んだ。また円安が進めば自国通貨などでみた返済負担は軽くなる。

例えば、0.47%で1000億円を調達すれば、年間の金利支払いは4億7000万円だ。この1000億円で米国の5年国債を買えば、12日終了の時点の利回りで1.51%が得られる。15億1000万円の収入だ。つまり、円調達米ドル運用で、年間10億4000万円が得られる投資となる。いわゆるキャリートレードだ。証券投資は融資になどに比べて格段にコスト・パフォーマンスが良いといえる。

この時、120円でドルに換えれば8億3333万ドル。5年後にも120円だった場合は、8億3333万ドルを円に変換して1000億円を返却し、5年分の差引利息に相当する52億円ほどがトータルの収益となる。110円になっていれば、8億3333万ドルが916億6667万円になるので、利息で相殺して31億円余りの損失となる。反対に130円になっていれば1083億3333円となり、為替差益83億円余りに、利息52億円が加わり、135億円余りの収益となるのだ。

私は、円の長期トレンドに最も大きな影響を与えるのが日本の貿易収支、中期トレンドに最大の影響を与えるのが日米金利差だと考えている(タペストリー・プライスアクション理論)。日本の貿易赤字は長期の円安トレンドにつながるのだ。一方、日米金利差があり、それが更に拡大すると見込まれる時には、中期の円安トレンドにつながる可能性が高い。上記の例のように、10円幅に振れると見て、損失が31億、利益が135億という有利なトレードは、多くの人を引き付けるのだ。この有利さは、金利差に正比例する。信用力や成長性も米国の方が上なので、このキャリートレードを戸惑う理由は少ない。

また、調達は5年物でも、運用は5年に固定する必要はなく、状況に応じてヘッジするなど、より有利に行うことができるのは言うまでもない。

もっとも、債券発行の主目的は証券投資でない場合の方が多い。日本に工場をつくるなどの設備投資や、日本企業を買収するような場合にでも、サムライ債を発行することがある。この場合でも円の低金利は資金調達の大きな動機となっている。こちらは収益を海外の本社に送金する場合にだけ、為替が発生する。

金曜日終了の時点の日本の5年国債の利回りは0.07%だった。低利で運用難の日本の投資家にとって、高格付けのドイツ銀行0.47%の利回りはそれなりに魅力的だ。発行企業、投資家、双方にとって、合理的な資金調達、運用となっている。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。